2022年10月14日

シルク生地、家庭で気軽に洗濯

浜縮緬工業協同組合が加工技術を開発 洋服や寝具への採用に期待

 浜縮緬工業協同組合(吉田和生理事長)はシルク生地を家庭用洗濯機で洗えるように加工する技術を開発した。今後、地元だけでなく幅広い産地のシルクを加工する事業に乗り出し、和装だけでなく、アパレルや寝具、インテリアなどの分野にもシルク生地を売り込む。

 組合が生産を手掛ける「浜ちりめん」は絹織物の最高級品とされるが、和装需要の落ち込みで減産が続き、半世紀前のピーク時には124社いた組合員も現在は10社へと激減。シルク生地の新たな需要を生み出すには和装以外での活用が不可欠で、一時は供給先として高級子ども服ブランドとの商談が進んだが、「洗濯が難しいようでは、子ども服には不向き」と、採用に至らなかった。

 シルクは濡れた状態では摩擦に弱く、洗濯はドライクリーニングか優しい手洗いに限られる。組合では商談の失敗を受けて、家庭で気軽に洗濯できるようなシルクの加工技術の研究に乗り出し、県東北部工業技術センターの支援を得ながら13年かけて開発を進めてきた。

 「Yasa Silk(ヤサシクル)」と命名した新しい加工技術は、シルク生地を有機化合物で処理して分子レベルで結合を施し、強度をアップさせた。家庭用洗濯機を使ったテストでは60回洗っても、シルク最大の弱点である摩擦によるスレ、縮み、色落ちがほとんどなかった。

 吉田理事長は「シルク本来の吸放湿性の良さや、夏涼しく、冬暖かいといった性能もそのまま」と太鼓判を押す。加工時間はシルク生地20反で5時間程度。浜ちりめん生地だけでなく、あらゆるシルク生地に加工を施すことができるという。現在、特許を出願している。

 10月6、7日に京都市内で開催した「浜ちりめん白生地求評展示会」でもこの技術を紹介。会場には和装産業関係者だけでなく寝装寝具メーカーも来場し、吉田理事長は「説明を求められっぱなしで、反応が非常に良かった」と手応えを感じている。11月には東京で開かれるアパレル展示会にも出展する予定で「和装はもちろん、幅広いアパレル商品、寝装寝具などに活用してもらい、シルクの新たな分野を切り拓きたい」と話している。

 ヤサシルクに関する問い合わせは同組合℡(62)4011へ。

2022年10月12日

海外で熱視線、伝統技術「金継ぎ」

宗永堂の杉中さん、ロンドンで体験講座を指導

 欠けた器を漆で接着して金で装飾する日本の伝統技術「金継(きんつ)ぎ」。壊れたもの直して大切にする技法はそのデザイン性も評価され、海外では「KINTSUGI」として注目を集めている。国友町の仏壇仏具店「宗永堂」の店主・杉中伸安さん(58)のもとにも海外から金継ぎの依頼が舞い込み、今月上旬にはロンドンに招かれて体験講座(ワークショップ)の講師を務めた。

 杉中さんは独自の漆ブランド「NUUL(ヌール)」を立ち上げで独創性のある漆器を送り出している。その手仕事に魅了された栗東市の中小企業診断士・磯野研さんの提案で、昨年9月、海外に金継ぎ作品を紹介、販売するネットサイト「The  Kintsugi  Labo  Japan」を一緒に立ち上げた。サイト内の英文は磯野さんの妻の三知恵さんが担当した。

 サイトでは金継ぎの技法について紹介したうえ、作品を従来の古典的な「アンティーク」、デザイン性を重視した「ユニーク」、漆器にも応用した独創的な「ネオ」の3種に分類して販売。これまでに欧米や中東など世界各国から注文が入り、特に抹茶用の茶碗が人気という。また、金継ぎによる修繕の依頼も入り、イタリアからは細かく欠けた皿が届いている。

 体験講座の依頼はロンドン市内の複合施設「パンテクニコン」から舞い込んだ。日本と北欧の文化などを紹介する施設で、コンセプトストア、カフェ、レストラン、バーなどが入る。「海外で金継ぎがブームになっていることは知っていたが、まさか自分が行くことになるとは。海外は30年ぶりでしたので、パスポートを慌てて作りました」と杉中さん。

 現地では10月1、2日の2日間で計5回の講座を行い、25人程を指導した。講座時間は1回当たり90分に制限されていたことから、割れた器を漆で接着する金継ぎの体験には短く、代わって金で装飾を施す蒔絵を体験してもらった。参加者は杉中さんの手ほどきで速乾性のある漆を使ってコースターとジュエリーボウルに模様を描き、金粉をまぶしてオリジナルの蒔絵作品を完成させた。三知恵さんが通訳を担当した。杉中さんは「皆さん、興味を持ってやってくれていた。独創性のあるデザインにする女性もいて、芸術の素地の違いを感じた」と振り返る。

 ロンドン滞在中には大英博物館やナショナルギャラリー(国立美術館)も訪れた。「驚いたのはこれだけ立派な施設なのに入場料が無料だったこと。文化に対する意識の違いを感じました」と刺激を受けた。

 仏壇需要の低迷で、漆文化の継承が課題となる中、海外で注目を集める日本の漆工芸。杉中さんは「海外でのワークショップはハードルが高いが、いずれは1カ月ほど滞在して、本物の漆を使ってじっくりと金継ぎを教えたい」と新たな挑戦を思案している。

2022年10月11日

4年ぶり華やか着物園遊会

連休、長浜市街地でイベント多彩に

 長浜市街地で8、9日、秋の恒例行事「長浜きもの大園遊会」や「長浜火縄銃大会」、「豊公まつり」が開かれた。新型コロナウイルス禍で中止となっていた晴れやかな行事が次々と復活し、3連休と相まって多くの見物客が訪れた。

長浜きもの大園遊会

 市街地を着物姿でそぞろ歩くきもの大園遊会は8日開かれた。和装産業の振興と商店街の活性化を目的に1984年に始まった。台風やコロナ禍で4年ぶりの開催となった今年は、参加資格を従来の振り袖の女性から老若男女に広げ、計624人が参加した。

 参加者は商店街でショッピングや食べ歩きを楽しんだり、町家で茶席を体験したりと、優雅な秋の一日を過ごした。写真愛好家も大挙し、女性にポーズをお願いするなどしてレンズを向けていた。また、花魁(おいらん)の練り歩きもあり、モデル役の女性が気さくに記念写真に応じていた。

 母親が成人式に着た振り袖で参加した市内の女性(26)は「着物を着ると新鮮な気持ちになります。祖父母に会いに行ったら、綺麗になったねと喜んでもらえました。きょうは黒壁スクエアの散歩を楽しみたい」と話していた。

曳山交替式

 市街地では8日、曳山博物館に収蔵する曳山の交替式があった。来年の長浜曳山まつりで子ども歌舞伎を奉納する出番山4基が博物館から引き出され、市街地を巡行して各山組の山蔵に収められた。また、新たに4基が曳山博物館に引き入れられ、揃いの法被姿の若衆らが力を合わせていた。

長浜火縄銃大会

 長浜城歴史博物館の前庭では8日、長浜火縄銃大会が行われた。1983年の同博物館の開館を記念して始まり、地元の国友鉄砲研究会や火縄銃文化を受け継ぐ各地の保存会が参加して演武を披露。鉄砲の歴史を今に伝えている。

 今年は国友、彦根、堺、西之表市の4団体が参加し、順番に火縄銃や大筒などを発砲。「ドーン」と体に響く轟音とともに白い煙が舞い上がり、見物客はその迫力に圧倒されていた。

豊公まつり

 羽柴秀吉らの賤ヶ岳合戦の凱旋行列を再現した豊公まつりは9日開かれ、観光客であふれる市街地を武者行列が練り歩いた。合戦は織田信長の後継をめぐる秀吉と柴田勝家の争いで、これに勝利した秀吉は天下人へと大きく歩みを進めた。同まつりは秀吉や合戦で活躍した加藤清正、福島正則ら「賤ヶ岳七本槍」の武者行列を再現し行われている。

 この日は大人と子どもの武者行列が豊国神社と長浜八幡宮を往復。道中、ポーズを決めたり、勝どきの声を上げたりすると、沿道の観光客から拍手が送られていた。

2022年10月4日

歩いて 健康と賞品をゲット

スマホウォーク「ビワテク」挑戦を

 スマートフォンを利用したウォーキングで健康と賞品をゲットできる「ビワテクチャレンジ」が15日から始まる。今年は総勢100人に素敵なプレゼントが当たる。

 参加方法は「ビワテク」アプリをダウンロードし、スタンプラリーの期間限定コース、長浜駅から慶雲館、ヤンマーミュージアムなどを巡る「ながはまの偉人に学ぶ」(3㌔)、高月駅から高月図書館、雨森芳洲庵などを歩く「芳洲先生と大ケヤキを訪ねて」(約6㌔)の対象コースを歩き、コース上のチェック地点でポイントを獲得する。

 対象は19歳以上の市民。1コース完歩ごとに応募でき、1人で最大2口。期間は11月23日まで。賞品は磁気ネックレスやスマホ通信対応の体組成計、竹生島クルーズペア乗船券や地元温泉の入浴券など。好きな賞品を複数選んで応募。抽選で100人に当たる。

 コロナ禍でもできる健康づくりとして始まった企画で、今年で3回目。これまでのビワテクチャレンジ完歩者は2020年が54人、21年が102人。

 市健康企画課は「期間限定キャンペーンをきっかけにビワテクユーザーが増えれば、と思い賞品を充実させた。ぜひ、参加を」と呼びかけている。

 ビワテクは県内各地で行われており、長浜市の場合、3カ月ごとに4コースを設定し、実施している。アプリの市民ユーザーは2060人(9月27日時点)。無料。

2022年9月30日

「ゆいま〜る」できるお店に

孤立の寂しさ、原動力に—真境名さん、えきまちで期間限定の沖縄料理店

 えきまちテラス長浜1階のレンタルスペースで、手軽な沖縄料理を提供する期間限定の「ゆきねぇのティーダ食堂」がオープンした。出店者の眞境名(まじきな)由樹さん(27)=相撲町=は「将来は、みんなの居場所になれるようなお店を出したい」と話している。

 沖縄県与那原町出身の眞境名さんは15歳で長浜市に移住した。現在は3人の子育てをしながら障害者福祉施設で介護士としても働いている。コロナ禍で自宅にこもって子育てしていた3年前、世間から孤立している寂しさを感じ、15歳で知らない土地に来た不安や、仕事を通じて知り合ったハンディキャップを抱える人たちの生きづらさにも共通していることに気付いた。「きっと同じ思いの人が多いはず。だったら、そんなみんなの居場所をつくりたい」と、自身のルーツである沖縄の料理を提供し、誰もが気軽に集える店づくりを思い描くように。

 長浜市パートナーシップ推進協議会が主催する起業セミナーに参加するなどして準備を進め、本格的に店舗を構える前にえきまちテラス長浜のレンタルスペースで出店することになった。

 メニューはタコライス(600円)、タコス(2個入り、650円)、沖縄そば・大(800円)など。また、外国人の友人に教えてもらった世界各国の料理を週替わりでサプライズ提供する予定。

 店のコンセプトは「食を通していろんな人がゆいまーる(※)できて、ちょっと幸せになれる場所」。眞境名さんは「このお店で毎日、違う出会いがあり楽しい。もっとたくさんの人に来てもらい、帰って来たいと思える場所にしたい」と話している。時間は午前11時から午後5時。火・水曜定休。営業は12月まで。

※=沖縄の方言で「人と人とが繋がる」「助け合う」の意味。

2022年9月28日

協会公認、初のウェイクボード大会

木之本町飯浦 地元の理解と調和で実現

 「水上のスノーボード」と呼ばれるウェイクボードの関西・東海地区大会が25日、長浜市で初めて開かれた。開催に際して騒音問題などが危惧されたが、主催者の努力と地元住民らの理解により、成功裏に終わった。

 ウェイクボードは1枚板(ボード)に横向きに乗りながら、モーターボートにつながったロープをつかんで水面を滑り、ジャンプやターンなどの出来映えのポイントで得点を競うスポーツ。

 今大会は日本ウェイクボード協会公認の全日本選抜選手を選出するための地区大会で、ボートの引き波に乗るウェイクサーフイン競技も行われ、約200人の観衆が見守る中、子どもや女性を含めた選手約60人が豪快に湖面を滑走した。

競技に最適、飯浦

 これまで大会は草津市の内湖や近江八幡市の沖島などで開かれたことはあったものの、水深が浅く、ボートのスクリューが地面に当ったり、不法投棄の網などが巻き付くなどし、ベストな状態で競技ができなかった。

 そこで白羽の矢が立ったのが木之本町飯浦沖。水深が3・5㍍以上あり、周りの山で風波の影響も受けないため、ジャンプなど思い切った技が繰り出せる。また、風光明媚なこの地は普段、ボートの乗り入れが困難でウェイクボードができず、競技者の間では「聖地」「秘境」とも呼ばれ、憧れの地だった。

 しかし、騒音問題や自然保護の観点から難色を示す人たちもおり、企画した滋賀県ウェイクボード協会(勘澤敏彦会長)は8月27日、飯浦、山梨子の住民を対象にした説明会を開き、理解を求めた。

 参加者からは当初「水上バイクが来ると、うるさくなる」「車の渋滞や路上駐車が出たら困る」などの意見もあった。

 しかし、このあたりは過疎化により空き家が増えており、かつて営業していたドライブインも閉鎖され、ひっそりとしている。協会は将来、大きな大会が開催されれば、賑わいを創出でき、地域おこしにつながる、という思いがあった。

 勘澤会長らが▽1人ずつ競技▽ボートは競技者1人につき、1艇しか、使用しない▽コースは集落の反対側、月出方面に設定するなど説明。話を聞くうち、住民たちは「やってみんと、わからんがな」「たまにはいいだろ」「やってみなはれ」と理解を示すように。

 自治会の了解を得た協会は過去の実績を示しながら、地元漁協、県市、警察や消防の許認可を取得。大会前日には会場周辺の草刈り、仮設トイレを設置し、住民に迷惑がかからないようにし、開催にこぎつけた。

 大きなトラブルもなく、大会後、住民や観客からは「意外と静かやった」「奥琵琶湖の原風景とこの場所のイメージを守りながら、新たなブランドになれば」などの声があった。勘澤会長は「住民がイエスと言ってくれなかったら実現できなかった。理解と調和のおかげといえ、一歩前進できた。いつかは全日本選手権をやりたい」と目を輝かせていた。

2022年9月26日

農と音楽で小さなスポットを

柴田夫妻「小屋」「トレーラーハウス」で

 湖北町小倉の柴田義範・智香子さん夫妻は大好きな音楽と農業で皆が集える「小さなスポット」を作ろうと計画。現在、クラウドファンディングでタイニーハウス(小屋)と音楽スタジオの改装資金を募っている。

 義範さんは環境にこだわった自然循環型の農業を実践している父の一義さんと約10㌶で米や麦、大豆などを栽培している。また、もうひとつの顔として、千田壮史さん(木之本町)とギターユニット「ブルーステイラー」を組み、演奏活動をしている。

 30歳の時、自然やモノ、人や心の「循環」を大事にする株式会社「シバタ グラウンド ミュージック」を立ち上げ、智香子さんとともに、自宅敷地内の小さな小屋(約10平方㍍)で、有機肥料で育てた米や石臼挽きの小麦全粒粉、手作り味噌などを販売。リピーターや顧客が増えたが、小屋には水回りなどがなく、十分、受け入れすることができなかった。

 また、義範さんは3年前、トレーラーハウス(15平方㍍)を購入し、音楽スタジオなど多目的に活用しているものの、空調がなく、内装なども手つかずのまま。

 2人は「お客様の顔を見ながら、楽しくおもてなしができるスペースにしたい」と小屋を直販所とカフェに、コンテナを音楽活動やモノづくりができるアートボックスにしようと考えた。

 クラファンでは10月末までに改修費150万円を集めることを目標としている。義範さんは「食と音楽をこの小さなスペースに詰め込みたい」と話している。

 問い合わせは柴田さん℡090(6963)3890へ。

2022年9月22日

飲み比べで好み見つけて

 ジャパンコーヒーフェスティバル 湖北初開催、「水」と共生の木之本で

 飲み比べを通してコーヒーの奥深さが体験できる「水のジャパンコーヒーフェスティバル」が10月8、9の両日、木之本町の街中で開かれる。フェスは全国各地で開かれており、湖北地域での開催は初。

 大阪市で喫茶「珈琲焙煎研究所」を経営する川久保彬雅さんは日本のコーヒー文化の発展普及や地域活性化を図ろうと、6年前、仲間たちと社団法人化した実行委員会を立ち上げ、オリジナルのコーヒーが飲み比べできるフェスを企画した。

 コーヒーは水や豆の産地、焙煎や抽出法などにより、味わいが異なり、各店により個性も出る。フェスは飲み比べすることにより、自分好みのコーヒーを見つけてもらい、出店者や試飲する人たち同士のコミュケーションを深めるのが狙い。

 川久保さんは長浜で教室を開くうち、参加者の思いや商店街の熱意に打たれ、木之本での開催することに。木之本では古くから酒蔵や醤油蔵が複数あり、水と共生してきた歴史があるので「水」(地下水)をテーマにしている。会場は北国街道木之本宿周辺。地元、長浜のほか、京都、大阪、奈良など関西の約20店舗が並ぶ。出店するのはオーナー1人や夫婦で切り盛りしている店がほとんど。また、川久保さんらは不登校やひきこもりの若者の自立支援に向けた相談室を開設しており、今回のフェスには「ここカフェ心風流(しんぷる)」(余呉)も参加。自慢のコーヒーを提供する。

 過去、和歌山、鳥取などで32回開催しており、滋賀では多賀町(17年)に次いで2回目。長浜からの出店は次のとおり。

 アタラコーヒー、レイニーデイコーヒー、リンクカフェ、ツカダ珈琲、ネクストトリップ、丘峰喫茶店、ココカフェ 心風流、ルークカフェ、憩い喫茶店。

 開催時間は午前10時から午後4時。受付は文室邸。前売り券は3枚1200円、当日券は同1500円。前売り券は出店店舗、きのもと北国街道商店街の店で販売。問い合わせは実行委員会℡090(1140)5675へ。

2022年9月15日

おもちゃ修理、子の笑顔励み

勝町  福井俊文さん(80)

 ヤンマーで培った品質管理技術を活用して「おもちゃ病院長浜」の一員として修理ボランティアに励む。「おもちゃが直ったときの、子どもの笑顔が一番の励みになります」と話す。

 おもちゃ病院は毎月第4土曜、虎姫時遊館に開院し、市民が持ち込むおもちゃを無料で修理している。メンバーは60〜80代の18人。最年長の福井さんは複雑な電子回路があるおもちゃも持ち前の技術で直してしまう。

 もともと工作が好きだった福井さんは、仕事に一区切りがついた60代から地元の児童文化センター「サンサンランド」で「たのしく作ろう」と題した工作教室の講師を務め、子どもたちに牛乳パックを使った工作などを教えていた。また、身体が不自由な障害者や高齢者の悩みを解消する便利な道具「自助具」を手作りするボランティアグループ「湖北虹工房」の一員としても活動。グループはメンバーの死去などにより解散し、それを受けて、新たに加入したのがおもちゃ病院のグループだった。

 湖北虹工房で作っていた自助具は今でも製作依頼が舞い込むことから、おもちゃ病院に「リハビリ科」を新設して自助具の制作にも励んでいる。

 なぜ、福井さんはこうもボランティア活動に熱心なのか。その原点を紐解くには長崎県で送った大学生活の経験にさかのぼる。長崎造船短大(当時)で3年間学び、いよいよ卒業試験というときに1週間余り風邪をこじらせ寝込んだ。「故郷から遠く離れて不安な中、下宿先のおばさんに付きっきりで看病をしてもらった。その時の恩を長崎県に返したいと、大学卒業後に長崎県の離島にある小学校に図書を送る活動を始めた」と振り返る。毎月2〜3冊の雑誌や児童書を贈り、その活動は寄贈先の学校が廃校になるまで20年以上続けた。児童たちとは手紙などを通して交流も生まれた。

 遠く離れた地で温かい心に触れたのをきっかけに、今も続けている奉仕活動。福井さんは「活動が私の心の支えとなり、子どもたちの笑顔が私を元気づけている。こうした活動ができるのも妻の支えがあるからこそ」と語る。

 「さらに修理技術を高め、できるだけたくさんのおもちゃを修理できるようにしたい」と意欲旺盛な福井さん。「自助具の制作を次の世代にバトンタッチするためにも、リハビリ科を担う後継者もつくりたい。大事な仕事です」と話している。

2022年9月14日

3度のがん克服したリーダー

余呉町池原  藤原哲男さん(74)

 「声帯」「歯ぐき」「胃」のがんを克服し、現在、地元のそば道場やがん患者・家族会の代表を務めるアクティブリーダー。

 企業の管理職としてきびきび働いていた藤原さんは53歳の時、声がかすれて話しづらくなり、病院を受診。精密検査で喉頭がんが見つかった。詩吟を趣味としていた藤原さん。「まさか自分が」。声を失う恐怖に襲われた。自覚症状が出やすい器官だったことが幸いし、がんは進行しておらず、放射線治療と2カ月の入院で回復。3日後、職場に復帰し、定年まで元気に働き続けた。

 ところが2年前、新たに歯肉がんが見つかり、手術で患部を除去。念のため、全身を検査したところ、胃がんも見つかった。最初のがん発症から体に留意するようになり、早期発見できたことで、再発もなく、健康に過ごせている。

 「がんは遺伝性が強いなど誤ったイメージがあり、周りに話せない。元気になった経験者が声を上げるべき」と、思いを共有する仲間10人と医師らにより2015年8月、近畿で初となる「市民のためのがん治療の会滋賀県支部」を結成。17年に「よりよいがん医療をめざす近江の会」として独立した。

 会では月1回、例会を開催。市内の中学校で、がん啓発の出前授業を行うほか、今年7月からは同じ病の患者・家族らに寄り添う「ハートケアサロン」(第3土曜)を開始した。

 藤原さんは「活動を通して、早期発見や命の大切さなどを訴えたい」とし、「知識を学んだ子どもたちが家族の『ウオッチャー』となり、親の体調を気にかけ、検査を勧めるなど、家族の中で支えあう形ができれば」と話している。

 このほか、藤原さんは、がんと闘いながら、地元の仲間たちと「池原そば道場」を運営している。「地産地消」にこだわり、遊休農地でソバ栽培、空き家を改装し、そば打ち体験コーナーを設け、素朴な味が自慢の二八そばを提供するなどし、まちおこしにも一役買っている。

2022年9月13日

和りんご守り続け15年

湖北町伊部 柴垣勇さん(80)

 戦国武将・浅井長政も食したとされる「小谷城和りんご」の栽培に取り組んで15年。地域のまちおこしに貢献している。

 手作り甲冑による武者行列がメインの「小谷城ふるさと祭り」で、地域振興に貢献した小谷城址保勝会は「第二のまちおこしにつながるヒント」を探していた。当時、事務局長だった柴垣さんは西洋リンゴの栽培が趣味で、知人から彦根で和リンゴ栽培が行われていることを知った。

 和リンゴは、実の直径が4、5㌢と西洋リンゴに比べて小さく、酸味、渋味が強いのが特色。平安時代に薬の実や観賞用として中国から伝わり、食用としても広く栽培されていたが、明治以後、西洋リンゴの普及で姿を消していた。

 また、古文書から長政が約470年前、木之本町古橋の三殊院に充てた礼状で、貰い受けたリンゴの礼を述べており、当時、長浜でも栽培されていたこともわかった。

 これらのエピソードを基に2007年、和リンゴの特産品化を計画。彦根りんごの復活に取り組むグループから枝を分けてもらい、台木に接木。「小谷城和りんごを復活させる会」を発足させ、木のオーナーを募り、小谷山の麓の畑に約300本を植えた。

 ところがサルの食害に遭い、3年目からは獣害を避け、高時川河川敷などで栽培することに。また、メンバー10人の高齢化も進むなどし、「やめよう」と思った時もあったが、市から浅井三姉妹博覧会の開催に合わせた特産品化の話も舞い込み、ジャム、酵素ジュースなどを開発したところ、飛ぶように売れた。

 今年も高時川の畑が浸水したものの、被害に遭わず50本から2㌧を収穫できた。また、和リンゴを使ったシードルを作りたい、という頼もしい男性(34)が現れ、前途も明るくなってきた。

 柴垣さんは「小谷城和りんごを全国にアピールできたことが何より。作るだけ、売るだけでは長く続かない。ようやく意欲的な後継者が出てきてくれた」と話し、「リンゴは昔から健康に良い、と言われている。自然とリンゴから元気をもらっているのかも」と目を細めていた。

◇   ◇

 9月の「敬老月間」にちなみ、長浜でまちおこしやボランティアなど、元気に活躍しているお年寄りをシリーズで紹介します。

2022年9月9日

湖北の起業主ら、知事と意見交換

遊び、学び、環境を仕事に

 県民と知事の対話会「こんにちは!三日月です」が8日、木之本町の江北図書館で開かれ、湖北地域で企業や各種団体などを経営、主宰している男女7人が知事と活発に意見を交わした。

 この日の対話会では「県北部地域の課題と可能性」をテーマに草野丈太(奥伊吹観光)、熊洞えりか(macumacu)、高橋康之(高橋金属)、中山郁英(keiーfu)、堀江昌史(能美舎)、宮本麻里(LOCO)、山室弘樹(山室木材)の7氏が若者目線で私見を述べた。

 参加者からは定員割れが続いている伊香高校の魅力化、森林資源の活用、子育て施策、広域観光の推進、病院再編問題などについて提案があった。

 伊香高の魅力化については「地域がともに未来を創る」と題して、「森の探究科」「地域デザイン科」などを設置し、専門的に学べるカリキュラムで、学校の魅力化を図るようにしては、との声。また、子どもたちが自然にふれる機会を増やし、林業や環境に興味を持てるようにしては、などの意見が出ていた。

 また、「長浜にはいろんな楽しみ方、暮らし方がある。地元の人は意外と知らないし、知ろうという気持ちもない。『当たり前の暮らし』の魅力を発信すべき」「ここで産んでよかった。もう1人産みたいと思える『産み育て施策』の充実を」「行政区単位での観光振興は難しい」「米原駅東口の県有地を安く譲渡(賃貸)し、活用化を」などの提案があった。

 知事は「(県北部の)中高に可能性があり、元気にしたい」「遊び、学び、環境が仕事に結びつくイメージができたら」「子どもが残るきっかけが作れたら」「広域観光でいいと思う」などと思いを述べ、最後に「ここにはリアルな『人の暮らし』がある。(モノや人を)動かすと湖北は元気になる。たくさんのヒントをいただいた」と締めくくった。