木之本町飯浦 地元の理解と調和で実現
「水上のスノーボード」と呼ばれるウェイクボードの関西・東海地区大会が25日、長浜市で初めて開かれた。開催に際して騒音問題などが危惧されたが、主催者の努力と地元住民らの理解により、成功裏に終わった。
ウェイクボードは1枚板(ボード)に横向きに乗りながら、モーターボートにつながったロープをつかんで水面を滑り、ジャンプやターンなどの出来映えのポイントで得点を競うスポーツ。
今大会は日本ウェイクボード協会公認の全日本選抜選手を選出するための地区大会で、ボートの引き波に乗るウェイクサーフイン競技も行われ、約200人の観衆が見守る中、子どもや女性を含めた選手約60人が豪快に湖面を滑走した。
競技に最適、飯浦
これまで大会は草津市の内湖や近江八幡市の沖島などで開かれたことはあったものの、水深が浅く、ボートのスクリューが地面に当ったり、不法投棄の網などが巻き付くなどし、ベストな状態で競技ができなかった。
そこで白羽の矢が立ったのが木之本町飯浦沖。水深が3・5㍍以上あり、周りの山で風波の影響も受けないため、ジャンプなど思い切った技が繰り出せる。また、風光明媚なこの地は普段、ボートの乗り入れが困難でウェイクボードができず、競技者の間では「聖地」「秘境」とも呼ばれ、憧れの地だった。
しかし、騒音問題や自然保護の観点から難色を示す人たちもおり、企画した滋賀県ウェイクボード協会(勘澤敏彦会長)は8月27日、飯浦、山梨子の住民を対象にした説明会を開き、理解を求めた。
参加者からは当初「水上バイクが来ると、うるさくなる」「車の渋滞や路上駐車が出たら困る」などの意見もあった。
しかし、このあたりは過疎化により空き家が増えており、かつて営業していたドライブインも閉鎖され、ひっそりとしている。協会は将来、大きな大会が開催されれば、賑わいを創出でき、地域おこしにつながる、という思いがあった。
勘澤会長らが▽1人ずつ競技▽ボートは競技者1人につき、1艇しか、使用しない▽コースは集落の反対側、月出方面に設定するなど説明。話を聞くうち、住民たちは「やってみんと、わからんがな」「たまにはいいだろ」「やってみなはれ」と理解を示すように。
自治会の了解を得た協会は過去の実績を示しながら、地元漁協、県市、警察や消防の許認可を取得。大会前日には会場周辺の草刈り、仮設トイレを設置し、住民に迷惑がかからないようにし、開催にこぎつけた。
大きなトラブルもなく、大会後、住民や観客からは「意外と静かやった」「奥琵琶湖の原風景とこの場所のイメージを守りながら、新たなブランドになれば」などの声があった。勘澤会長は「住民がイエスと言ってくれなかったら実現できなかった。理解と調和のおかげといえ、一歩前進できた。いつかは全日本選手権をやりたい」と目を輝かせていた。