2024年3月13日

ベルギー女性、伝統の醸造技術に感銘

輸入元の清金醤油店を視察

 日本茶や日本酒、醤油などの調味料を輸入してベルギー国内でレストランや小売店に販売しているマース・アナベルさん(38)が11日から1泊2日で長浜市を訪れた。醤油を仕入れている「清金(せいきん)醤油店」(八幡東町)の醤油造りを視察するためで、「思っていた通り、伝統的な手法で質の高いものをつくっていますね」と話していた。

 アナベルさんは仕事で約3年間、日本に住んだ際にその食文化に魅了され、帰国後、日本の食材をベルギー国内のレストランやホテルなどに販売する「Kaori Tea&Spices」を2018年に創業した。

 創業182年の清金醤油店6代目・清水金幸さん(64)の長男・金洋さん(34)とアナベルさんが以前一緒の職場に勤めていたのが縁で、同店の醤油を輸入するように。年3〜4回に分け船便で仕入れているが、人気商品のため在庫がなくなり慌てて空輸することも。「今はポン酢が一番人気です。魚、野菜、肉にも合いますから」と語る。

 アナベルさんは今月1日から16日まで日本に滞在し、東京で開かれた食品見本市「フーデックス」をはじめ8都県を精力的に訪ね、日本食を探索。有機栽培の七味唐辛子、玉露など新しい発見があったという。

 清金醤油店には12日午前に訪れ、木桶で醸造するようすを見学。大きな木桶の中を覗き込んで醸造工程の説明を受けたり醤油を搾る前のもろみを試食して味を確かめたりと伝統的製法に触れ、「歴史的な木桶を使って家族で代々醤油を造り続けるのはユニーク」と感銘を受けたようす。

 金幸さんは「これまではメールでのやり取りだったので、お会いするのは初めて。創業以来続けている昔ながらの木桶での醸造を見てもらえて嬉しい。この伝統をベルギーに伝えてもらえれば」と話していた。

2024年3月12日

自衛隊入隊、女性2人が決意

激励会の参加者。中央の女性2人が饗場さん(左)と松井さん。

長浜市役所で激励会

 長浜市内の自衛隊入隊予定者の激励会が11日、市役所で開かれた。入隊予定者4人のうち2人が家族と一緒に出席し国防を担う決意を新たにしていた。

 激励を受けたのは松井凜さん(22)=朝日大学4年=と、虎姫高校を卒業したばかりの饗場千尋さん(18)の2人。松井さんは大学生時代に予備自衛官の訓練に参加したのを機に国防に奮闘する隊員の姿に感銘を受け自衛隊を志した。饗場さんは東日本大震災での自衛隊の活動を知って興味を持ち自衛隊を進路に選んだ。

 激励会は自衛隊滋賀地方協力本部の主催で、2人のほか家族や浅見宣義市長らが出席した。

 浅見市長は「若さあふれるエネルギーを生かし、国土防衛、大規模災害の救助に頑張ってもらいたい」と激励。自衛隊滋賀地方協力本部の吉田修造本部長は「国家防衛という崇高な任務を選択していただき、感謝と敬意を表したい」と語った上、能登半島地震の被災者支援などでも女性隊員の活躍が求められているとして、2人の入隊を歓迎していた。

 入隊予定者を代表して松井さんが「震災での自衛隊の活躍を見て、自衛隊という大きな組織の一員となれることを光栄に思う。入隊後も自衛官であることの責任を自覚し、たくさんのことを学んだり挑戦して自らを誇れるように努力する」などと決意表明をしていた。

 松井さんは陸上自衛隊大津駐屯地、饗場さんは海上自衛隊舞鶴基地に赴任する。

2024年3月6日

主役は市民 響け「歓喜の歌」

17日浅井文化ホールでコンサート

 「歓喜の歌」で知られるベートーベンの交響曲第9番を公募市民の合唱団が歌い上げる「ながはま第九コンサート2024」が17日午後2時から浅井文化ホールで開かれる。

 ながはま第九コンサートは2018年12月31日に「平成最後の夜にみんなで第九を歌おう」と、市民有志が長浜駅とえきまちテラス長浜を結ぶペデストリアンデッキに集ったのが始まりで、今回で4回目を迎える。

 市と市民芸術文化創造協議会の主催で合唱団のメンバーを公募し、10〜80代の市民52人が昨年10月から週1回、鳥塚貴絵さんの指導で練習を重ねてきた。

 コンサートは数々の交響楽団でタクトを振る中村貴志さんを指揮者に迎え、栗原未和さん(ソプラノ)、上木愛李さん(アルト)、蔦谷明夫さん(テノール)、岡田通利さん(バリトン)らプロが出演。青山洋子さん、井手智佳子さんのピアノ演奏(連弾)に合わせ、合唱団とともにホールに歌声を響かせる。

 第1部は「日本の春のうたメドレー」、「ロメオとジュリエット」より「私は夢に生きたい」、「フィガロの結婚」より「もし踊りをなさりたければ」など。第2部は交響曲第9番第四楽章(合唱付き)。

 企画・運営を担当するNPO法人はまかるの磯崎真一代表理事は「えきまちテラス長浜から始まった演奏会は今年で4回目。合唱団として、ますますレベルアップしている。地元の皆さんでつくっている合唱団の歌声を、是非ホールで聴いてほしい」と来場を呼びかけている。

 チケットは全席自由で一般1000円、高校生以下500円。当日券は500円増。未就学児の膝上鑑賞は無料。長浜文芸会館、浅井文化ホール、木之本スティックホール、teketで発売中。

2024年3月4日

タップダンスで被災地支援

9日さざなみタウン、久保さん企画

 木之本を拠点に活動する世界的タップダンサー久保群青さん(42)が9日さざなみタウンで、能登半島地震の被災地支援のためのチャリティーライブを行う。被災地の石川県など全国で活動するダンサー13人が長浜に集い、思いを込めたステップを届ける。

 東日本大震災を東京で経験し、東北の被災地でがれき撤去やフリーペーパーの発行などの支援活動を10年にわたって行ってきた久保さん。被災地を盛り上げるダンスイベントにゲスト出演するなど被災者に寄り添った活動に取り組んできた。長浜でもチャリティーダンスイベントを聞いてその収益で軽トラックを購入し、被災地へ送った。

 今回、能登半島地震のニュースに衝撃を受け、「何もしないのか?」「ボランティアのプロではない自分に被災地のために何ができるのか」と自問する中、昨年12月の自身の単独公演を見に来たダンサーが珠洲市で被災し避難所生活を送っていることを知った。「正解、不正解は分からないが、できることをやろう」とチャリティーライブの開催を決めた。

 思いを共有する全国のダンサー仲間が趣旨に賛同し、総勢13人でステップを踏む。「イベントを通じて、来場者が被災地に思いを馳せる機会になれば」と話している。収益金は珠洲市に送る。

 チャリティーライブは午後3時、同5時からの2回公演。各回定員100人。料金は大人2000円、小学生以下1500円。チケット予約はメール(gunjotap@gmail.com)へ。

 当日はキッチンカーも10台以上が集まる。

2024年2月26日

伝統継承へ女性、子供も主役

川道で「オコナイ」改革3年目、400人参加

 五穀豊穣などを祈願する湖北地域の伝統行事「オコナイ」。少子高齢化などによる担い手不足で存続が危ぶまれる中、湖北随一の規模で知られる川道神社のオコナイでは自治会が主体となって改革を実施し、慣習で認めてこなかった女性参加を解禁するなど持続可能な行事へと変貌を遂げている。

 川道のオコナイは7つの「庄司(しょうじ)」(オコナイ組)ごとに1俵のもち米から80㌔以上の大きな鏡餅をつくり、「屋台」と呼ばれる神輿状の台に載せて神社に奉納する。その規模から湖北最大のオコナイと呼ばれてきた。

 庄司は東村、西村、中村、藤之木村、川原村、東庄司村、下村の7つあるが、それぞれの村で「當番」(当番)2軒がオコナイ行事の準備を担当する。かつて當番宅は集会所として使用されることから畳や襖、玄関、風呂を新調したり、料理を振る舞ったりと負担は小さくなかった。その負担から川道町に嫁ぐことを敬遠する女性もいたという。

 近年は少子高齢化の深刻化と若者の転出で担い手が不足し、2021年に各庄司が実施した調査では、當番を担うことができない家が川道町全体の約6割に上った。

 「従来通りのオコナイは、近い将来、不可能になることは避けようのない現実」。危機感を抱いた関係者は同年、自治会内にプロジェクトチームを設けて、持続可能なオコナイのため簡素化を協議するとともに、「SDGs」の視点から「誰1人取り残さない」として女性参画も模索した。

 その結果、オコナイは自治会が主宰する▷鏡餅は7つから1つへと減らす▷従来の當番宿に代わる会場をコミュニティセンターとする▷開催は1日だけとする▷屋台の担ぎ手は男女を問わず希望者を募集する—などとする改革案をまとめた。オコナイの伝統の維持を求めて改革案に反対する声もあったものの、16歳以上の全町民を対象に実施したアンケート調査(回答率82・0%)では95%が改革案に賛同し、町民の圧倒的支持を取り付けて大変革することとなった。

 改革3年目となった今年のオコナイは25日に行われ、住民約400人が参加した。会場のコミュニティセンターから川道神社までの道のりを「カンバン」と呼ばれる法被を着た老若男女が鏡餅を乗せた屋台と一緒に練り歩き、子どもたちは鉦を打ち鳴らして囃した。神社境内では女性も参加して屋台を担ぎ、拝殿に鏡餅を運び入れた。

 オコナイ委員会の一員として子どもを交えた企画を考案した塚田美晴さん(46)や、カンバンを羽織って屋台を担いだ中川祐子さん(43)、香水麻未さん(38)は「歴史の重みを感じた」と語った。「オコナイは男性の行事で、女性は触れてはいけないと思っていたので、女性が参加することを聞かされた時は、えっと思った。中に入ってやってみると楽しい」と話し、「つながりができ、世代を超えた交流ができた」と笑顔を見せた。

 沢田浩臣オコナイ委員長(66)は「今年のテーマ『みんなの川道オコナイ』通りに、子どもや女性の参加が多く、雨にもかかわらず境内はいっぱいで、過去にない広がりを見せた。女性に刺激されて男性も楽しそうでした」と満足気。「同じことをしていては伝承できない。伝統とは革新の連続です」と、オコナイ改革をけん引してきた前田光治さん(68)も女性や子どもが楽しそうに参加する様子に目を細めていた。

2024年2月19日

モンゴル遊牧民の暮らしを体感

北郷里小で「みんぱっく」活用した授業

 国立民族学博物館の貸し出し資料を使ってモンゴルの遊牧民の暮らしを体感する授業が19日、北郷里小学校(椙本幸校長、児童155人)で開かれ、2年生19人が民族衣装を試着したり、羊の骨でできたおもちゃで遊んだりした。

 国語の授業でモンゴルの民族楽器「馬頭琴」にまつわる物語「スーホの白い馬」を習うのに合わせ、同校が同博物館の学習キット「みんぱっく」を取り寄せた。

 この日の授業では北川聡子教頭がモンゴルの遊牧民の暮らしを紹介した絵本「ぼくのうちはゲル」を読み聞かせ。移動式住居「ゲル」を持ち運んで季節ごとに引っ越していること、羊などの骨をおもちゃなどに加工していることなどを児童が学んだ。

 博物館の学習キットは民俗衣装やゲルのミニチュア、仏具、おもちゃなど25点からなり、児童は衣装を試着したり、モンゴル・チェスで遊んだり、シンバル状の仏具を鳴らしたりと、思い思いに遊牧民の生活を体感した。

 丹羽煌雅さんは「民族衣装が金色で格好よかった。羊の骨をおもちゃにしているのに驚いた」、曽我榮里さんは「1年に4回も引っ越しているのにびっくりした。組み立てたゲルがバラバラにならないか心配」と話していた。

2024年2月16日

古建具やガラスに新しい価値

学生がテーブルや皿など制作、黒壁で展示

 近年、古民家の価値が見直され、住宅や宿泊施設へのリノベーションがブームになる中、引き戸などの古民家の建具は廃棄の対象となることが少なくない。その建具を解体・加工してテーブルや皿などを生み出す取り組みが黒壁で行われた。

 市街地の北国街道沿いにある黒壁のエシカル棟(元工房)。今月7日から10日にかけ、武蔵野美術大学などの学生が建具の解体やガラスの加工のワークショップに取り組んだ。引き戸に使われたガラスをカットして熱を加えて皿や一輪挿しに加工したり、欄間と組み合わせて壁飾りに仕上げたりした。解体した引き戸とガラスでローテーブルを作る学生も。

 昭和初期に作られたガラスは固くて粘りがないため割れやすく、加工や加熱には注意が必要だが、学生は黒壁のガラス加工技術を活用しながら、それぞれの感性のままにガラスと古材に新たな生命を吹き込んだ。

 この取り組みは遊休不動産を活用する市の委託事業で黒壁が企画。湖北地域で古民家ゲストハウスを運営する「KOMINKA企画」(大森英昭社長、元浜町)が運営した。大森社長は古民家の再生などを手がける中で建具が廃棄されているのを憂い、別のモノに作り変えることで新たな価値を生み出そうと、黒壁の橋渡しで武蔵野美術大学の講師を務めるガラス工芸作家・五十嵐智一さんに協力を呼びかけ、ワークショップが実現した。

 廃棄される運命にあった建具を価値のある製品へと「逆転」させていることから、大森社長はこれらを「リバーソ・クラフト」と命名し、2月末までの期間限定でエシカル棟に約40点を展示。うち約30点は販売も行っている。

 SDGsの理念を若きアーティストの力を借りてポップに表現するこの取り組み。大森社長は「捨てるのを止めて、どうにかして使えないか、一緒に考えませんか」と話している。

 オープンは午前11時から午後4時、今月29日まで。月、火曜定休。

◇   ◇

 17、18、23、24、25日の計5日間、エシカル棟で切り絵作家・早川鉄兵さんデザインのスタンプエコバッグ作りのワークショップがある。午前11時から午後2時まで。参加費は2000円〜3000円。問い合わせはKOMINKA企画℡(57)6973へ。

2024年2月15日

タンスに眠る着物、小粋なシャツに

湖のスコーレで紹介・販売、18日までの期間限定

 タンスに眠る着物を普段使いのシャツに仕立て直す事業をスタートさせた小谷上山田町のデザイン・アパレル会社「仕立屋と職人」は長浜中心市街地の複合施設「湖のスコーレ」で期間限定のポップアップイベントを開催。着物生地で仕立てた小粋なシャツが並び、市民や観光客の目を引いている。

 昨年10月に事業を発表し、全国から着物の譲渡を受け付けたところ長浜市内を中心に約500着が寄せられた。着物は分解して生地に戻し、汚れやシミ、穴あきなどの部分を切り取って、今度は複数の生地を縫い合わせて一枚の反物に。その反物を使ってシャツに仕立て上げる。1枚のシャツで3〜4種類ほどの着物生地を使用し、その柄の組み合わせが新しい。

 「タンスに長い間眠っていた着物。今度はたくさん着てもらってほしい」と、デザインは普段使いのカジュアル。身頃やアームホールを大きめにゆったりと仕立て、性別や季節を問わずに着やすい。

 「シャナリシャツ」と命名し、ストアを訪れた人からは「着物生地とは思えない」「着物のイメージとは違う」といった感想が寄せられ、そのストーリー性とデザイン性から「即買い」する人も。

 「誰かに使ってもらいたい」「引き取ってもらえて嬉しい」「両親が作ってくれたけど結婚後は忙しくて着る機会がなかった」「実は一度も袖を通せていないが、思いがこもった着物なので捨てる訳にはいかなくて」—。

 譲渡の際に着物にまつわる思い出も一緒に受け取った同社共同代表のワタナベユカリさん(36)。「両親や祖父母が着物をあげた時の思いや気持ちを、私たちが橋渡し役となって、シャツを着る方々に伝えられれば」と話している。

 シャツはどれも1点もの。サイズはXS〜Lの展開。価格は2〜3万円台。湖のスコーレでの販売は18日まで。オンラインショップ「仕立屋バザール(https://www.store-shitateya.jp/)」でも販売している。

2024年2月8日

U10サッカー県大会 びわSSS初優勝

堅守から攻撃、粘り強いプレーで接戦制す

 びわサッカースポーツ少年団(びわSSS)が県サッカー協会主催の第7回U10選手権県大会で初優勝した。

 びわSSSは昨年の湖北ブロック予選を1位で通過し、各ブロックの代表32チームが出場したトーナメントを制した。すべての試合で1失点以下に抑え、堅実な守備から攻撃につなげた。

 決勝は1月28日、野洲川歴史公園サッカー場であり、数々の公式戦で優勝している強豪のA・Z・R(アッズーロ、甲賀市)と対戦。前半を0対0で終え、後半でコーナーキックから押し込んで先制点を奪ったが、終了間際に同点ゴールを決められ、延長戦へ。1対1のまま互いに譲らない接戦を展開し、最後はPK戦(2—0)で決着した。

 田辺彰太監督は「粘り強いびわのサッカーを選手たちができたことが優勝という結果につながった」と選手を称えた。

 小学生サッカーは県南部のチームが強く、湖北勢の公式戦での県大会優勝は昨年の湖北キッカーズ(U11)に次いで2回目となる。

 キャプテンの堤春翔さんは「目標にしていた優勝が実現できてすごくうれしい。コーチの指導や保護者の支え、他の学年の練習のサポートのおかげ。来年の県大会も優勝したい」と話している。

 出場選手は次の皆さん。

 佃奏汰(伊香具4)、橋本怜音(びわ南4)、島津凛心(北郷里4)、二宮快(伊香具4)、落合志龍(びわ南3)、室幸佑(びわ南4)、北川悠斗(虎姫学園4)、堤春翔(長浜北4)、小谷優士朗(長浜4)、上阪大惺(虎姫学園4)、水谷飛翔(長浜北3)、宮澤悠人(長浜北4)、中原幸瞭(長浜北4)、赤山恒平(米原3)、志智陽空(長浜北4)、布施珀翔(虎姫学園4)。

2024年2月7日

過疎地の買い物支援へ、移動店舗

平和堂とコープしが、7地域で運行、連携協定結ぶ

 食料品の移動販売を通じて過疎地域の高齢者の買い物とコミュニティの活性化を支援しようと、平和堂、生活協同組合コープしが、長浜市、市社会福祉協議会、市内7地域の地域づくり協議会が7日、連携協定を提携した。

 平和堂は2021年から甲賀市で「移動スーパー」を運行しており、そのノウハウを生かして4月以降、びわ、杉野、高時、伊香具の各地域で、準備が整い次第、順次運行する。

 コープしがは余呉、上草野の2地域で昨年から移動店舗「あったか便」を運行している。新たに「2号車」を導入し、今月26日から西黒田、神田、田根の3地域でも運行を始める。

 両社とも軽トラックに300〜400点ほどの生鮮食品や加工食品などを積み込み、各地域の停留所で販売する。

 スーパーが近くにない過疎地域では、車を持たない高齢者は近隣住民の支援などで買い物に出ていたが、人口減少や住民の高齢化でそれも難しくなっているという。昨年から移動店舗が赴いている余呉、上草野の両地域では停留所に地域の高齢者が集まっておしゃべりするコミュニティの場ともなっており、見守りや支え合いの観点からも移動販売の役割は大きい。

 平和堂は長浜市内で8店舗(1店舗建て替え中)、宅配を行うホームサポートセンター4店舗を展開し、移動販売は初参入。協定締結式で平松正嗣社長は「店舗に行くのが難しいお客さまが商品を見ながらお買い物でき、コミュニケーションも生まれる。お客さまの声を聞き、サービスを向上させたい」と話した。

 コープしがは現状の2地域から、5地域へと拡大する。白石一夫理事長は「滋賀県を網羅する平和堂と一緒に地域課題の解決に取り組めるのを嬉しく思う。地域づくり協議会、社会福祉協議会の尽力に感謝します」などと話した上、巡回先の高齢者からの温かい言葉が従業員のやりがい、励みとなっていることを紹介していた。

 協定締結にあたって各地域づくり協議会の会長が寄せたコメントでは「自動車の利用が困難な高齢者は隣近所の互助や結いの仕組みにより支援されてきたが、人口減少や高齢化による食品などの購入アクセス困難者が増え大きな課題となってきた」(びわ・伊藤雅明会長)などと地域が直面している課題を示し、移動販売を「歩いて行ける買い物場所は、井戸端(会議)にも通じる暮らしの場として待ち望むものだった」(神田・小川幸男会長)などと歓迎。

 「各自治会が協力し、単に買い物という枠から地域住民の交流の場につながっていくように取り組みたい」(高時・山内喜久雄会長)、「移動販売による日常的な生活支援、停留所を活用した交流機会の促進、見守り活動の推進などさまざまな効果に期待したい」(西黒田・高森喜兵衛会長)と、地域コミュニティの活性化や見守り効果にも期待を寄せている。

2024年2月2日

丹部さん イタリア料理コンテストで準グランプリ

 大井町出身で名古屋市のイタリア料理店のシェフを務める丹部優(ゆう)さん(34)が1月30日、東京で開かれた「イタリア料理コンテスト」(日本イタリア料理協会、カゴメ主催)で準グランプリを受賞した。初出場での快挙。

 丹部さんは京都調理師専門学校を卒業後、京都で就職したが、突然、小麦粉アレルギーを発症。地元、滋賀に戻って体調を整えながら、和食、中華などオールジャンルで料理を学び、2013年、イタリア料理の道へ。名古屋のレストランで修業を重ね、19年、渡伊。ルッカの1つ星「リストランテ・インブート」で郷土料理などを学び、1年足らずでセクションシェフまで昇り詰めた。

 帰国後は名古屋市の新規店舗の立ち上げなどに関わるほか、湖北地域で料理教室を開催。現在、イタリア料理店「セルジョ」(名古屋市)のシェフを務める。昨年は若手料理人の登竜門「シェフワングランプリ」(吉本興業、朝日放送主催)に初応募。461人の中、イタリア料理部門でベスト5に選出されていた。

 4回目となる同コンテストはベテランまで参加でき、「冷凍イタリア産グリル野菜」をテーマに作品を募集。約150人のうち6人が決勝に進出し、イタリアンの巨匠・片岡護さんら4人が審査した。

 丹部さんは冷凍ズッキーニを用いたオリジナル料理「トルタ ディ ズッキーネ」で勝負。ズッキーニを冷凍のまま、パン粉、粉砕したグッシーニ(細長いパン)、パルミジャーノ(チーズ)、ニンニクを効かしたオリーブオイルなどと混ぜ合わせ、オーブンで香ばしく焼き上げるという「加熱解凍調味法」で頂点を目指した。

 結果は埼玉県のシェフ・羽鳥雅晴さんに次ぐ2位。丹部さんは「素直に評価されたことが嬉しい。デモンストレーション中のアクシデントが逆に評価に繋がり、それが無かったら勝てなかった。さらに上を目指したい。応援してくだった皆さんに感謝したい」と話している。

2024年2月2日

近江長岡駅に「カフェルミエ」誕生

待合室の一角改修し、地域住民団体が運営

 米原市長岡のJR近江長岡駅の待合室に1日、「カフェ ルミエ」がオープン。初日にはオープニングセレモニーが開かれ、地元住民たちがコーヒーを楽しんだ。

 長岡、万願寺、西山の3自治会の住民たちが設立した団体「近江長岡大好き倶楽部」が運営する。待合室の一角約32平方㍍の有効活用を以前から模索していたところ、米原への移住者で、市の空家再生みらいつくり隊員を務めている石崎達郎さん(43)・美和さん(38)夫妻、山城真理さん(47)の3人との交流の中でカフェにすることを決めた。市への要望やJR東海との協議などを経て、昨年12月から改装工事を始めた。

 クラウドファンディングや市の補助、住民らからの寄付で資金を集めたが、想定以上の経費がかかった。改装費用を抑えるため、空家再生みらいつくり隊の3人や同倶楽部のメンバーたちが床のタイル張りや壁のペンキ塗りなど独自で行った。山城さんは「近江長岡のように古い街並みが残るパリにあるおしゃれなカフェをイメージした」と笑顔で話していた。

 ルミエはフランス語で「あかり」の意味で、「山東地域のホタルの光に人が集まるように、多くの人が訪れるお店にしよう」との思いから命名。

 店ではオーガニックのコーヒー豆を使用するなど自然素材にこだわり、フードメニューも地元食材を取り入れる。

 4月以降のカフェの定休日には地元の野菜や米、手作りパン、土産品などを販売するマルシェを開催する計画。市民だけでなく、市外からの来店客にも楽しんでもらえるような店づくりを目指す。

 1日のセレモニーで、山城さんは「きょうのオープンはゴールではなくスタート。地域の皆さんをできるだけ巻き込んで、みんなでお店をつくり上げていき、近江長岡を盛り上げていきたい」と意気込みを語った。

 同倶楽部の吉川良幸会長(70)は「オープンしたカフェを見て地域の底力を感じる。近江長岡はおもしろい場所だと思ってもらえるための拠点にしたい」と話した。

2024年1月30日

全国サッカー準V、近江高・前田監督、浅見市長と対談

地元に根ざしたチームづくりを

 旧虎姫町月ヶ瀬出身で、第102回全国高校サッカー選手権大会で準優勝に輝いた近江高校の前田高孝(たかのり)監督(38)が25日、長浜市役所で浅見宣義市長と対談。湖北のサッカー少年が目指したいと思えるようなチームづくりへの意欲を示し、長浜市へは人工芝グラウンドなどサッカー環境の整備を求めていた。

 国立競技場で行われた決勝戦で着用した黒いベンチコート姿で対談に臨んだ前田監督は全国大会について「選手が1試合ごとにものすごく成長した」と選手の頑張りを振り返り、「国立の決勝であれば観客5万5000人。その中で自信を持ってプレーできるかどうかは、日ごろから試合を意識した練習にある」と語った。

 近江高は京都サンガFC、ガンバ大阪ユース、セレッソ大阪U18などの強豪が集まる「関西プリンスリーグ」の1部と2部にAチーム、Bチームがそれぞれ参加。1年を通して強豪チームと試合を重ね、選手の成長を促している。また、Aチーム、Bチームの選手を入れ替え、その「切磋琢磨」がチームの成長につながっているとした。

 前田監督が近江高に就任したのは2015年。部員の数が足りないため最初の1年は部員募集に動き、2016年から本格始動した。

 どのような思いで近江高の監督に就任したのか。「私が中学3年の時、こちらで強い高校がなく、草津東高へ1時間半かけて行った。やはり、こちらの地域で子ども達が目指せるようなサッカーの強いチームをつくりたいとの思いがあった」と話した。

 前田監督によると、湖北出身のプロサッカー選手は自身のほか、柏レイソルなどで活躍した橋本和選手、近江高卒で琉球FCの山内舟征選手の計3人しかいない。「南の方は何十人とプロがいる」と比較し、県北部のサッカーの隆盛を目指している。

 浅見市長から「長浜では昨年、湖北キッカーズが初めて県で優勝した」と報告されると、「県大会で湖北のチームが優勝したのは嬉しいニュース」と語った。

 前田監督は「中学生は南のクラブチームに行く。そこから県外の高校を目指す。そこが課題」とし、子たちが目指したくなる魅力あるチームづくりに意欲を示した。

 浅見市長から湖北地域の子どもたちへの指導を提案されると「できることがあれば」と応じた上、「人工芝のサッカーグラウンドなどがあれば」とサッカー環境の整備を提案していた。

 また、浅見市長から日本一への意欲を問われた前田監督は、「日本一を目指すことだけが目的ではない」と語り、選手の人間的な成長も大切にしているとした。

 「(青森山田のような)全国区になるには大きな組織が必要になる。大きくすると試合に出られない子も出てくる」と語り、「こじんまりとした感じで地道にやっていきたい」とし、「田舎のうまい蕎麦屋」のような地元に根ざしたチームづくりを目指す決意を示した。

◇   ◇

 前田監督は草津東高校でフォワードとして活躍し、卒業後は清水エスパルスに入団するも、ひざのけがで2年目のシーズン終了後に戦力外通告を受けた。

 シンガポールやドイツなど海外でのプレーを経て、23歳で帰国し、後に関西学院大学へ進学した。在学中は、西宮サッカースクールジュニアユースで育成した中学生たちが市立西宮高校に進学し、全国大会で8強入り。前田監督のコーチング術が脚光を浴びるようになった。

 その後、関学サッカー部のヘッドコーチに招かれ、関西選手権優勝、全国大学サッカー選手権準優勝の成績を残した。そして「地元にサッカーの強豪を作りたい」との夢を果たすため、2015年4月に近江高へ赴任。当時、「滋賀で育ててもらった恩返し。近江高が強くなることで、県全体のレベルアップを目指したい」と語っていた。