2021年6月29日
長浜のセイキン醤油 海を越え
創業179年の清金(せいきん)醤油店(八幡東町)の醤油が昨年11月以降、ベルギーに輸出され、日本の調味料として評判を呼んでいる。現地のスーパーでは在庫切れの状態で、きのう28日には3回目となる出荷を行った。
清金醤油店は天保13年の創業で、地元では「セイキンさん」として親しまれている。店内には代々使用してきた木桶が並び、昔ながらの「セイキン醤油」をはじめ、長浜産の大豆と小麦で仕込んだ「湖北のめぐみ」などを作っている。家庭料理を作る機会の減少、減塩志向、調味料の多様化などを受けて、国内の醤油消費量が減少する中、伝統の味を守ってきた。
そんな長浜産の醤油がなぜ、遠く離れたベルギーの地へ輸出されることになったのか。縁となったのが6代目・清水金幸さん(61)の長男・金洋さん(31)。金洋さんが以前勤めていた自動車部品メーカーで同僚だったベルギー人のマース・アナベルさん(36)がベルギーに帰国後、人口1万人ほどの地方の街ミューレベーケで日本の茶と調味料を扱うWEBショップ「kaori」を創業。それを知った金洋さんが、実家が醤油店であることを伝えたところ、「清金の醤油が欲しい」と話が進んだ。
創業以来、海外への輸出は初めて。金幸さんは「何も分からないので、ジェトロ(日本貿易機構)に相談したりした。一番、困ったのは言葉。ベルギーでは、オランダ語とフランス語を使っていますが、どちらもまったく分かりません」と振り返る。
ベルギー国内で受け入れられやすいように容器のデザインを変更し、醤油瓶は陶器をイメージした白いガラス瓶に。「セイキン醤油」などの日本語をそのままに、オランダ語とフランス語で商品名を併記した。
昨年11月に1㍑入りと150㍉㍑入りの計500本を試験的に輸出したところ好評で、今年2月には倍となる1000本余りを出荷した。ベルギーでは寿司などの日本食文化が定着し、醤油は日本食だけでなく家庭料理の味付けにも浸透しつつあるという。
また、今年1月、アナベルさんのWEBショップが高品質の日本食材を仕入れているとして、現地の新聞で取り上げられ、その時、アナベルさんが手に持って写真に写ったのも、セイキン醤油だった。現地のスーパーではセイキン醤油が品切れとなり入荷の催促を受けている状態で、きのう28日には1700本余りを出荷した。
金幸さんは「国内消費が頭打ちする中、醤油業界は輸出に力を入れる方向にある。しかし、うちのような小さな醤油店は輸出のノウハウがなく二の足を踏んでいる。今回、ご縁があって輸出できた。今後も海外に目を向ける必要があるかもしれない」と語っている。
ベルギー輸出のきっかけを作った金洋さんは兵庫県内で醤油づくりの修業に励んだ後、今年から店を手伝っている。「ベルギーへの輸出をきっかけに、他の国にも醤油が広がれば」と希望を膨らませている。