思いを次世代へ 「歴史と再生」で特別賞を受賞
木之本町木之本の江北図書館が4日、講談社の「第4回野間出版文化賞特別賞」を受賞。同社の創業者、野間清治氏の遺志により設けられた名誉ある賞で、地域住民の「長い歴史を持つ図書館を守ろう」という熱意などが評価された。
「野間出版文化賞」は「野間文芸賞」「野間文芸新人賞」「野間児童文芸賞」に加え、2019年、出版にまつわる優れた表現活動をした個人・団体を顕彰する目的で創設された。過去、小説家の新海誠氏、東野圭吾氏、池井戸潤氏、伊集院静氏らが受賞している。
特別賞は図書などに関連する施設などを対象に21年、新設され「角川武蔵野ミュージアム」(埼玉県所沢市)が受賞している。
同図書館は旧余呉村出身の弁護士・杉野文彌氏が「郷土の青少年に読書に親しむ機会を」と1902年(明治35)、私財を投じて杉野文庫として設立したのが前身。
時代とともに各地に公立図書館が次々と誕生する中、利用者が減少。支援を受けていた伊香郡町村会が市町合併を機に解散以降は資金難にも見舞われ、施設の老朽化が進んでいた。
そんな苦境にあえぐ私立図書館を再生しようと地域住民有志が立ち上がり、昨年6月、理事を一新。新理事たちは施設の整備を進め、イベントなどを企画。賑わいと活気を取り戻しつつある。
賞選考委員の林真理子さん(小説家)らは同図書館が県内で現存する最古の図書館で、個人が設立して100 年以上にわたり、地域住民が運営を続けてきたことに着目。
公的支援が受けられない中、運営メンバーが「思いを次世代につなぎ、愛される図書館にしたい」と、再生に向けて積極的に取り組んでいる点を評価した。
久保寺容子館長は「今まで守って、支えてくださった人たちの思いをつなげてゆきたい。いただいた賞を糧に次の段階へステップアップしたい」と話している。
なお、贈呈式は12月16日、東京の帝国ホテルで。記念の賞牌(しょうはい)と副賞の100万円が贈られる。