2021年10月5日

どうなる?お産 ㉒-㉓

⑳地域医療[3] 医師の働き方改革 期待もある

 2024年に始まる医師の働き方改革。病院が減ってしまわないのか、分娩費が値上がりしないのか…、気がかりは多い。

 ただ、「医師側としては、期待もある」と、滋賀医科大医学部付属病院の村上節教授は言う。

 まずは女性医師が働きやすくなる。産婦人科医は女性が多い。県内の病院勤務医の約48%は女性で、うち7割弱が20〜30歳代だ。

 一般的に、医師は24歳で医学部を卒業後、研修医として2年かけて診療科全体を回る。その後、専攻医として約3年間、専攻した科で研修を積む。

 さらに、産婦人科のキャリアでは、基本となる領域以外にも、それに基づく「サブスペシャルティー領域」(周産期、婦人科腫瘍、生殖医療、内視鏡技術など)を習得するのに約3年かかる。その時点で30歳代半ば。中堅として働き盛りだが、女性医師はとうに出産適齢期を迎えている。子どもを望むなら現場を離れざるを得ない。

 その結果、科の構成が50、40代の次は若い研修医という事態が頻発し、上級医師に過重負担がかかる構図が生まれがちだという。

 村上教授は「集約化で1施設当たりの医師が増えれば、産休・育休から復帰した女性医師に日中を任せ、上級医師は日中休むなど、柔軟な体制が組めるかもしれない」と話す。

 さらに、産婦人科医師の志望者数の増加が期待できる。産婦人科は、当直回数や勤務時間、訴訟リスクが他科を上回る「3K」と呼ばれてきた。過去25年、医師総数は増えているのに、産婦人科医は微減となっている。

 実際、滋賀医大でも、4年生の時には産婦人科に興味を持っていても、翌年からの臨床実習と卒業後2年間の初期研修で各科を回ると、他科を選ぶ者は少なくない。

 「忙しさを目の当たりにするから。だが医学生や初期研修医にゆとりのある働き方を見せることができれば、志望者は増える」と村上教授は信じている。

 なぜなら、「医療界でこんなに幸せなことが起こるのは産婦人科だけ」だからという。

 教授は元々、精神科医志望だった。しかし、入学した東北大の臨床実習で病棟を回る内に、他科が「残念です」ばかりなのに、産婦人科だけが「おめでとう」と言えることに感動し、産婦人科医になったそうだ。

 「今は過渡期。みんな将来がわからないでいる。何年もかかる事業だが、未来は悪くないはずだ」

 一市民として、働き方改革が地域医療にもたらす課題は注視したい。一方で、医師の労働環境の整備が期待通りに進むよう、理解も深めていきたい。

(9月27日掲載)

地域医療[4] 楠井隆・長浜赤十字病院長に聞く1

 市立長浜病院が分娩を中止した背景に、病院の集約化を急ぐ国策があった。

 厚労省は2020年、病院再編を重点支援する全国5区域の一つに、湖北区域(長浜、米原両市)の4病院(長浜赤十字=日赤、市立長浜、市立湖北、セフィロト)を選んだ。

 再編統合の核となる長浜日赤と市立長浜は、救命救急や緊急性の高い「高度急性期・急性期」の病院だ。どんな再編統合が地域医療のためなのか。長浜日赤の楠井隆院長に話を聞いた。

 「2病院の機能を再配分し、急性期も回復期も地域で完結して支える一つの病院となることが望ましい」

 そう話す楠井院長は、理由を次のように説明した。

 「医師不足と将来の人口減を考えると、似た病院が二つあっても効率が悪い。一方で、長浜に回復期の患者の受け入れ先が少なく、県南の施設に転院をお願いしている状況がある」

 院長がモデルとみるのは、兵庫県立病院だった尼崎病院(約500床)と塚口病院(約400床)の統合だ。15年に「県立尼崎総合医療センター」(約730床)に再編された。

 尼崎病院は地域の中核病院として、がん手術など高度専門医療を提供する一方で、周産期医療は実施していなかった。

 塚口病院は、地域周産期母子医療センターの指定を受け、周産期医療と小児(救急)医療を担っていた。しかし脳神経外科医、心臓血管外科医が不在で、合併症妊婦(脳血管障害、急性心疾患など)への対応ができなかった。また両病院とも老朽化や敷地不足に直面していた。

 確かに長浜の2病院と状況は似ている。市立長浜(約600床)は厚労省から「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受け、長浜日赤(約500床)は「地域周産期母子医療センター」の指定を受ける。

 両病院とも建設から築20年以上の本館の老朽化、高度医療機器のメンテナンスが問題となっている。長浜日赤は、現状の敷地では改修・増築に対応できない。

 楠井院長は、病院再編への期待は多いという。

 まず、医師が1病院に集まれば診療機能の充実が図れる。そこに患者が集まれば、症例数が増え治療の多様性に厚みができる。

 指導医は研修医や専攻医に多様な指導ができ、若手が習得できる手技が増える。技術的な向上が見込めるとなれば、医師にとってはそこで働く大きな誘因となる。技術レベル向上が医師確保を促す、という好循環を目指したいという。

 楠井院長は「一つになれば、大学病院に負けない高度な機能を持てる。話を前に進めるため、行政の支援が必要だ」と力を込めた。

 

(10月5日掲載)

堀江昌史

2021年10月4日

「旅する蝶」アサギマダラ

西浅井のペンションに大挙、産卵も

 西浅井町大浦のログハウスペンション「ラダー」に、「旅する蝶」アサギマダラが大挙。乱舞する光景が見られ、話題となっている。

 アサギマダラは、浅葱(あさぎ)色の大きな羽が特徴。秋に温暖な地を求め、信州方面から九州などへと、日本列島を縦断するように南下し、その距離は1000㌔を超えることも。人気アニメ「鬼滅の刃」にも登場し、キャラクターのモチーフになった、とファンの間で話題となっており、近年、脚光を浴びている。

 ラダーには開設当初の22年前から数匹が飛来していた。昨年、オーナーの田中伸征さん(52)は蝶が飛び交う「バタフライガーデン」を作ろうと、アサギマダラが蜜を吸うため集まるフジバカマを10株ほど植えたところ、多い日で10匹程度が集まるように。

 今年、フジバカマの数を3倍増やし、産卵場所として好むキジョラン(鬼女蘭)を植えたところ、9月上旬から次々と飛来するようになり、10月3日には過去最多の60羽が集結。初の産卵も確認できた。

 アサギマダラは各地を移動しながら、昼間、フジバカマやヒヨドリバナ、アザミなどキク科の植物に集まり、夜は涼しい山中で過ごす。天候や気温に敏感で環境バロメーターを示すとされ、近年、地球温暖化の影響で北上傾向にあるという。

 この蝶の生態は明らかにされていない部分が多く、各地で固体識別番号を羽に入れるマーキング調査も行われている。田中さんは「ラダーの目前には琵琶湖があり、周りを山に囲まれているから、棲みやすいのでは。来年はもっと増えるだろう」と推測している。見ごろは今週いっぱい。