2023年4月24日

「伊吹在来そば」全国PRへ

そば店など8者が会設立、ロゴ制作

 伊吹山中腹で鎌倉時代から栽培されてきた「伊吹在来そば」を守り全国にPRするため、米原、彦根両市のそば店など8者が「伊吹在来そばの会」(膽吹邦一会長)を設立。在来そばの名称を使用できる基準やロゴマークをつくり、クラウドファンディング(CF)を通じて全国に発信している。

 伊吹在来そばは粒の直径が4・5㍉以下で一般の品種より小粒。殻を除いて製粉すると淡い緑の色合いや甘み、香りが強く出る。平安時代後期から鎌倉時代に伊吹山中腹で栽培が始まったとされ、2019年には地域の特色ある農林水産物を守る地理的表示「GI」保護制度の対象に選ばれている。

 同会のメンバーは膽吹会長(麺工房伊吹長兵衛)のほか、水田裕久さん(雲鈴)、谷口隆一さん(久次郎)、門田真吾さん(献上伊吹そばつる亀庵)、小林満さん(そば処百百百百(どどもも))、伊富貴務さん(蕎麦の里伊吹)、伊富貴良市さん(蕎麦の里伊吹)、山崎茂さん(麻心)の8人。

 在来そばを使っていないものの「伊吹そば」や類似の名称を使用している乾麺などの商品が販売されていることから、差別化を図るため同会では「伊吹在来そば」の名称をブランドとして使用する。

 同会では「伊吹在来そば」の名称を使用できる基準として、そば店で提供する際には商品全体に占める在来そばの割合を7割以上、乾麺などの商品を販売する際には5割以上とすることを決めている。同会のお墨付きとなるロゴマークも制作した。

 CFサイト「キャンプファイヤー(https://bit.ly/40IQuU8)」でいぶき在来そばをPRし、6月2日までチラシやポスター、リーフレットなどの製作資金を募っている。目標金額は30万円で、返礼品に食事券や乾麺などを用意している。

 同会は「在来種にこだわったそばを作り続けることを誇りにしており、この素晴らしい伝統と味を全国へ広め、後世へと継いでいきたい」としている。

 【伊吹在来そば】古くから山岳信仰の霊場、修業の場として神聖視されてきた伊吹山で、平安時代後期から鎌倉時代にかけて中腹に開かれた太平護国寺で修行をする修行僧たちが食料を確保するためにそばの栽培を始めたことが起源とされる。

 松尾芭蕉の弟子、森川許六の文献「本朝文選」(1706年)には「伊吹蕎麦。天下にかくれなければ。からみ大根。又此山を極上とさだむ」と記され、そば文化が花開いた江戸時代にはすでに「伊吹在来そば」の美味しさが全国に知られていたことがうかがえる。

 江戸時代に膳所藩が編さんした「近江與地志略」(1734年)には秋になると琵琶湖の船の上からも伊吹山に広がるそばの白い花を見ることができたと伝わり、「伊富貴山之図」(1739年、彦根藩井伊家文書)には伊吹山の西面にそば畑が描かれている。

 太平護国寺が衰退した江戸時代以降は太平寺村の名産としてそば栽培は継続されたが、昭和の高度経済成長期に伊吹山の一部がセメント鉱山になったことに伴って住民が麓に移住し農家が激減。そばの栽培量も大幅に減少し、太平寺地区に近い峠地区で一部の農家が在来そばの栽培を守り続けていた。

 地元のそば愛好家が1995年に農家から種子を譲り受けて栽培したのを機に復活の機運が高まり、現在は姉川の渓谷沿いをはじめ谷口から広がる米原市内に栽培が拡大している。年間生産量は平均30㌧ほどになるという。

2023年4月20日

彦根城の酵母でビール

「彦根麦酒」バイオ大教授の協力で開発

 長浜バイオ大の向由起夫教授の協力で、クラフトビール醸造会社「彦根麦酒」が彦根城内で採取された酵母を使ってビールを醸造した。

 同社は彦根産の大麦麦芽、ホップ、水、酵母を使ったビール醸造を目指しているが、酵母の発見が難航。このため、酵母の研究を行っている長浜バイオ大の向教授に協力を依頼し、2020年からビール醸造に適した酵母を彦根市内で探してきた。

 21年からは県立河瀬中学高校の科学部とも連携し、生徒が彦根城の西の丸広場に生えていたキノコを採取。そのキノコからビール発酵に適したサッカロミセスという酵母が見つかり、「彦根麦酒酵母K21」と名付け、試験醸造を重ねて今年3月下旬に製品化に成功した。

 向教授によると、サッカロミセスは一般的に花や実などの糖分から採取される酵母だといい、偶然、キノコに付着していたとみられる。キノコを採取した河瀬高3年生の宮尾悠生さん(17)も「好奇心のみで採取したキノコから酵母が見つかり、驚きしかない。その酵母からビールができてよかった」と話した。

 商品名は「志成」。河瀬中学高校の科学部が同校の校訓にちなんで命名した。ほのかに甘くフルーティーな味わいが特徴だという。330㍉㍑、税込み880円。40本限定。5月2日から彦根麦酒荒神山醸造所(同市石寺町)で限定販売する。

2023年4月17日

凛々しく華やかに子ども歌舞伎

名演「よくできました!」 4万人を魅了

 長浜曳山まつりは17日朝の「御幣返しの儀」で祭典を終えた。曳山全13基が出場した本日(ほんび)の15日は時折小雨の降る天候だったが、子ども役者が歌舞伎を凛々しく披露し、観客を魅了していた。

 長浜市によると15日の人出は約4万人。ユネスコ無形文化遺産登録を記念して全基出場した2017年の7万人と比べると3万人少なかった。

 15日は曳山まつりの起源とされる長刀組の太刀渡りがあり、鎧姿の子ども武者が2㍍余りの大きな太刀を腰に下げ八幡宮境内へと練り歩いた。

 

 一番山の常磐山の舞台では吉田櫂さん(10)が扇と鈴を手に三番叟を優雅に舞い、歌舞伎奉納の幕開けを告げた。常磐山は「鬼一法眼三略巻 今出川菊畑の場」を上演。兵法の秘伝書「虎の巻」を盗み出すため平家方の屋敷に身分を偽って潜入する牛若丸を描いた物語で、川村旭弘さん(9)演じる牛若丸が見得を切ると、観客から大きな拍手が沸いていた。

 各山は八幡宮で歌舞伎を奉納した後、お旅所へと巡行し、道中の大手門通りなどでも歌舞伎を上演していた。

 お旅所には歌舞伎を奉納しない「暇番山」を含め、夕刻に全13基が勢揃い。あいにくの天候のため曳山にはビニールシートが被せられたが、提灯の明かりに照らされた幻想的な舞台で子ども役者が迫力のある演技を見せていた。

 

 

 

2023年4月14日

演技はつらつと「十三日番」

長浜曳山まつり、子ども歌舞伎を上演

 長浜曳山まつりは13日の夕刻から夜にかけて出番山の地元で初めての歌舞伎披露となる「十三日番」があった。提灯の明かりに照らされた曳山の舞台で、子ども役者がはつらつとした演技を見せ、稽古を見守ってきた若衆や沿道の市民、観光客から「よくできました!」などと喝采があがった。

 「十三日番」は舞台衣装に身を包み化粧を施して初めて曳山の舞台で臨む公演。子ども役者は緊張したようすもなく、堂々とした演技を披露していた。

 「鬼一法眼三略巻 今出川菊畑の場」を演じた一番山の常磐山では子ども役者が息のあった演技を披露。川村旭弘さん(9)の演じる牛若丸と、想いを寄せる皆鶴姫役の大澤到将さん(10)との掛け合いシーンは提灯の明かりに照らされて艶っぽく見え、観客を魅了していた。

 「神霊矢口渡 頓兵衛住家の場」を演じた孔雀山の舞台では、強欲な父親の頓兵衛を演じる大澤凜太郎さん(11)の迫力ある演技と台詞が観客を圧倒。落人に一目ぼれし自らを犠牲にするお舟を、廣瀬理さん(9)が熱演し、沿道から大きな拍手が送られていた。

 14日は曳山が長浜八幡宮に向かう「登り山」、八幡宮から子ども役者の行列が地元に帰る「夕渡り」があり、本日(ほんび)の15日は八幡宮、お旅所、道中で歌舞伎が上演される。長浜開町450年を記念し、お旅所には歌舞伎を奉納しない「暇番山」も含め全13基が集合する。

 

 

奉納、一番山は常磐山 くじ取り式で、22年ぶり

 子ども歌舞伎の奉納順を決める「くじ取り式」が13日、長浜八幡宮であり、常磐山が22年ぶりとなる一番山を引き当てた。

 式には出番山の若衆から選ばれた「くじ取り人」が赤鉢巻を締めて整列。背後に立つ若衆が扇子を手に「ヨイサー、ヨイサー」と囃し立て、熱がこもるあまり他の山組のくじ取り人に詰め寄り、押し合いになるシーンも。

 くじ取り人は、丸めたくじが置かれた三方を神前から選び取り、總當番の合図で一斉にくじを開いた。

 一番山を引き当てた常磐山の田沢卓巳さん(22)は「まさか一番が来るとは思わず、嬉しい。子どもたちには楽しく悔いのないように演技してもらいたい」と話した。

 二番山は萬歳楼、三番山は翁山、四番山は孔雀山。

2023年4月6日

本格時代劇「アカツキ」の前日譚公開

ボイスドラマ、14日から

 長浜市内の若者が中心となって作り上げた戦国時代劇「アカツキ」が5月20、21日、長浜文芸会館で上演される。より舞台を楽しんでもらおうと、一足早くその世界観を楽しめるスピンオフのボイスドラマ3作品が完成し、今月14日から公開される。

 時代劇は長浜市と市民芸術文化創造協議会が昨年8月に制作を発表。湖北地域で活躍する俳優、演出家、舞台スタッフが中心となって「高品質なエンターテイメント作品」を制作することで、湖北地域の文化・芸術のレベルアップと新たなファンの開拓を目指した。

 「アカツキ」は戦国時代を舞台に、豊臣氏に滅ぼされた傭兵集団「六賀衆」に協力していた傭兵・暁月三郎を描く。殺陣、アクションを随所にちりばめたエンターテイメント作品で、作・演出は劇団プラネットカンパニー主宰の北澤あさこさん、制作総指揮はNPO法人はまかる代表の磯崎真一さん。殺陣の指導は国内外で忍者ショーを行っている「伊賀之忍者衆羅威堂」が担当している。出演者は高校生から60代までの16人で公募やオーディションなどで選考した。

 ボイスドラマは「皿合戦」(公開日14日)、「六賀衆の緊急軍議」(21日)、「柿の木」(28日)。いずれも「アカツキ」の世界を体験できる前日譚で、「アカツキ」のホームページ(https://hamacul.or.jp/akatsuki/)で午後7時に公開する。出演者はすべて公募し、声優の山口勝平さんの指導を受けた。磯崎さんは「ボイスドラマで奥行きのある世界観を楽しんでほしい」と話している。

 「アカツキ」上演は20日が午後2時、同6時から2回公演、21日が午後2時から。チケットは一般3000円、大学生以下1000円(当日券はいずれも500円増)。長浜文芸会館、浅井文化ホール、湖北文化ホール、木之本スティックホール、臨湖、チケットぴあ、ローソンチケットで発売中。