2024年2月26日

伝統継承へ女性、子供も主役

川道で「オコナイ」改革3年目、400人参加

 五穀豊穣などを祈願する湖北地域の伝統行事「オコナイ」。少子高齢化などによる担い手不足で存続が危ぶまれる中、湖北随一の規模で知られる川道神社のオコナイでは自治会が主体となって改革を実施し、慣習で認めてこなかった女性参加を解禁するなど持続可能な行事へと変貌を遂げている。

 川道のオコナイは7つの「庄司(しょうじ)」(オコナイ組)ごとに1俵のもち米から80㌔以上の大きな鏡餅をつくり、「屋台」と呼ばれる神輿状の台に載せて神社に奉納する。その規模から湖北最大のオコナイと呼ばれてきた。

 庄司は東村、西村、中村、藤之木村、川原村、東庄司村、下村の7つあるが、それぞれの村で「當番」(当番)2軒がオコナイ行事の準備を担当する。かつて當番宅は集会所として使用されることから畳や襖、玄関、風呂を新調したり、料理を振る舞ったりと負担は小さくなかった。その負担から川道町に嫁ぐことを敬遠する女性もいたという。

 近年は少子高齢化の深刻化と若者の転出で担い手が不足し、2021年に各庄司が実施した調査では、當番を担うことができない家が川道町全体の約6割に上った。

 「従来通りのオコナイは、近い将来、不可能になることは避けようのない現実」。危機感を抱いた関係者は同年、自治会内にプロジェクトチームを設けて、持続可能なオコナイのため簡素化を協議するとともに、「SDGs」の視点から「誰1人取り残さない」として女性参画も模索した。

 その結果、オコナイは自治会が主宰する▷鏡餅は7つから1つへと減らす▷従来の當番宿に代わる会場をコミュニティセンターとする▷開催は1日だけとする▷屋台の担ぎ手は男女を問わず希望者を募集する—などとする改革案をまとめた。オコナイの伝統の維持を求めて改革案に反対する声もあったものの、16歳以上の全町民を対象に実施したアンケート調査(回答率82・0%)では95%が改革案に賛同し、町民の圧倒的支持を取り付けて大変革することとなった。

 改革3年目となった今年のオコナイは25日に行われ、住民約400人が参加した。会場のコミュニティセンターから川道神社までの道のりを「カンバン」と呼ばれる法被を着た老若男女が鏡餅を乗せた屋台と一緒に練り歩き、子どもたちは鉦を打ち鳴らして囃した。神社境内では女性も参加して屋台を担ぎ、拝殿に鏡餅を運び入れた。

 オコナイ委員会の一員として子どもを交えた企画を考案した塚田美晴さん(46)や、カンバンを羽織って屋台を担いだ中川祐子さん(43)、香水麻未さん(38)は「歴史の重みを感じた」と語った。「オコナイは男性の行事で、女性は触れてはいけないと思っていたので、女性が参加することを聞かされた時は、えっと思った。中に入ってやってみると楽しい」と話し、「つながりができ、世代を超えた交流ができた」と笑顔を見せた。

 沢田浩臣オコナイ委員長(66)は「今年のテーマ『みんなの川道オコナイ』通りに、子どもや女性の参加が多く、雨にもかかわらず境内はいっぱいで、過去にない広がりを見せた。女性に刺激されて男性も楽しそうでした」と満足気。「同じことをしていては伝承できない。伝統とは革新の連続です」と、オコナイ改革をけん引してきた前田光治さん(68)も女性や子どもが楽しそうに参加する様子に目を細めていた。

2024年2月19日

モンゴル遊牧民の暮らしを体感

北郷里小で「みんぱっく」活用した授業

 国立民族学博物館の貸し出し資料を使ってモンゴルの遊牧民の暮らしを体感する授業が19日、北郷里小学校(椙本幸校長、児童155人)で開かれ、2年生19人が民族衣装を試着したり、羊の骨でできたおもちゃで遊んだりした。

 国語の授業でモンゴルの民族楽器「馬頭琴」にまつわる物語「スーホの白い馬」を習うのに合わせ、同校が同博物館の学習キット「みんぱっく」を取り寄せた。

 この日の授業では北川聡子教頭がモンゴルの遊牧民の暮らしを紹介した絵本「ぼくのうちはゲル」を読み聞かせ。移動式住居「ゲル」を持ち運んで季節ごとに引っ越していること、羊などの骨をおもちゃなどに加工していることなどを児童が学んだ。

 博物館の学習キットは民俗衣装やゲルのミニチュア、仏具、おもちゃなど25点からなり、児童は衣装を試着したり、モンゴル・チェスで遊んだり、シンバル状の仏具を鳴らしたりと、思い思いに遊牧民の生活を体感した。

 丹羽煌雅さんは「民族衣装が金色で格好よかった。羊の骨をおもちゃにしているのに驚いた」、曽我榮里さんは「1年に4回も引っ越しているのにびっくりした。組み立てたゲルがバラバラにならないか心配」と話していた。

2024年2月16日

古建具やガラスに新しい価値

学生がテーブルや皿など制作、黒壁で展示

 近年、古民家の価値が見直され、住宅や宿泊施設へのリノベーションがブームになる中、引き戸などの古民家の建具は廃棄の対象となることが少なくない。その建具を解体・加工してテーブルや皿などを生み出す取り組みが黒壁で行われた。

 市街地の北国街道沿いにある黒壁のエシカル棟(元工房)。今月7日から10日にかけ、武蔵野美術大学などの学生が建具の解体やガラスの加工のワークショップに取り組んだ。引き戸に使われたガラスをカットして熱を加えて皿や一輪挿しに加工したり、欄間と組み合わせて壁飾りに仕上げたりした。解体した引き戸とガラスでローテーブルを作る学生も。

 昭和初期に作られたガラスは固くて粘りがないため割れやすく、加工や加熱には注意が必要だが、学生は黒壁のガラス加工技術を活用しながら、それぞれの感性のままにガラスと古材に新たな生命を吹き込んだ。

 この取り組みは遊休不動産を活用する市の委託事業で黒壁が企画。湖北地域で古民家ゲストハウスを運営する「KOMINKA企画」(大森英昭社長、元浜町)が運営した。大森社長は古民家の再生などを手がける中で建具が廃棄されているのを憂い、別のモノに作り変えることで新たな価値を生み出そうと、黒壁の橋渡しで武蔵野美術大学の講師を務めるガラス工芸作家・五十嵐智一さんに協力を呼びかけ、ワークショップが実現した。

 廃棄される運命にあった建具を価値のある製品へと「逆転」させていることから、大森社長はこれらを「リバーソ・クラフト」と命名し、2月末までの期間限定でエシカル棟に約40点を展示。うち約30点は販売も行っている。

 SDGsの理念を若きアーティストの力を借りてポップに表現するこの取り組み。大森社長は「捨てるのを止めて、どうにかして使えないか、一緒に考えませんか」と話している。

 オープンは午前11時から午後4時、今月29日まで。月、火曜定休。

◇   ◇

 17、18、23、24、25日の計5日間、エシカル棟で切り絵作家・早川鉄兵さんデザインのスタンプエコバッグ作りのワークショップがある。午前11時から午後2時まで。参加費は2000円〜3000円。問い合わせはKOMINKA企画℡(57)6973へ。

2024年2月15日

タンスに眠る着物、小粋なシャツに

湖のスコーレで紹介・販売、18日までの期間限定

 タンスに眠る着物を普段使いのシャツに仕立て直す事業をスタートさせた小谷上山田町のデザイン・アパレル会社「仕立屋と職人」は長浜中心市街地の複合施設「湖のスコーレ」で期間限定のポップアップイベントを開催。着物生地で仕立てた小粋なシャツが並び、市民や観光客の目を引いている。

 昨年10月に事業を発表し、全国から着物の譲渡を受け付けたところ長浜市内を中心に約500着が寄せられた。着物は分解して生地に戻し、汚れやシミ、穴あきなどの部分を切り取って、今度は複数の生地を縫い合わせて一枚の反物に。その反物を使ってシャツに仕立て上げる。1枚のシャツで3〜4種類ほどの着物生地を使用し、その柄の組み合わせが新しい。

 「タンスに長い間眠っていた着物。今度はたくさん着てもらってほしい」と、デザインは普段使いのカジュアル。身頃やアームホールを大きめにゆったりと仕立て、性別や季節を問わずに着やすい。

 「シャナリシャツ」と命名し、ストアを訪れた人からは「着物生地とは思えない」「着物のイメージとは違う」といった感想が寄せられ、そのストーリー性とデザイン性から「即買い」する人も。

 「誰かに使ってもらいたい」「引き取ってもらえて嬉しい」「両親が作ってくれたけど結婚後は忙しくて着る機会がなかった」「実は一度も袖を通せていないが、思いがこもった着物なので捨てる訳にはいかなくて」—。

 譲渡の際に着物にまつわる思い出も一緒に受け取った同社共同代表のワタナベユカリさん(36)。「両親や祖父母が着物をあげた時の思いや気持ちを、私たちが橋渡し役となって、シャツを着る方々に伝えられれば」と話している。

 シャツはどれも1点もの。サイズはXS〜Lの展開。価格は2〜3万円台。湖のスコーレでの販売は18日まで。オンラインショップ「仕立屋バザール(https://www.store-shitateya.jp/)」でも販売している。

2024年2月8日

U10サッカー県大会 びわSSS初優勝

堅守から攻撃、粘り強いプレーで接戦制す

 びわサッカースポーツ少年団(びわSSS)が県サッカー協会主催の第7回U10選手権県大会で初優勝した。

 びわSSSは昨年の湖北ブロック予選を1位で通過し、各ブロックの代表32チームが出場したトーナメントを制した。すべての試合で1失点以下に抑え、堅実な守備から攻撃につなげた。

 決勝は1月28日、野洲川歴史公園サッカー場であり、数々の公式戦で優勝している強豪のA・Z・R(アッズーロ、甲賀市)と対戦。前半を0対0で終え、後半でコーナーキックから押し込んで先制点を奪ったが、終了間際に同点ゴールを決められ、延長戦へ。1対1のまま互いに譲らない接戦を展開し、最後はPK戦(2—0)で決着した。

 田辺彰太監督は「粘り強いびわのサッカーを選手たちができたことが優勝という結果につながった」と選手を称えた。

 小学生サッカーは県南部のチームが強く、湖北勢の公式戦での県大会優勝は昨年の湖北キッカーズ(U11)に次いで2回目となる。

 キャプテンの堤春翔さんは「目標にしていた優勝が実現できてすごくうれしい。コーチの指導や保護者の支え、他の学年の練習のサポートのおかげ。来年の県大会も優勝したい」と話している。

 出場選手は次の皆さん。

 佃奏汰(伊香具4)、橋本怜音(びわ南4)、島津凛心(北郷里4)、二宮快(伊香具4)、落合志龍(びわ南3)、室幸佑(びわ南4)、北川悠斗(虎姫学園4)、堤春翔(長浜北4)、小谷優士朗(長浜4)、上阪大惺(虎姫学園4)、水谷飛翔(長浜北3)、宮澤悠人(長浜北4)、中原幸瞭(長浜北4)、赤山恒平(米原3)、志智陽空(長浜北4)、布施珀翔(虎姫学園4)。

2024年2月7日

過疎地の買い物支援へ、移動店舗

平和堂とコープしが、7地域で運行、連携協定結ぶ

 食料品の移動販売を通じて過疎地域の高齢者の買い物とコミュニティの活性化を支援しようと、平和堂、生活協同組合コープしが、長浜市、市社会福祉協議会、市内7地域の地域づくり協議会が7日、連携協定を提携した。

 平和堂は2021年から甲賀市で「移動スーパー」を運行しており、そのノウハウを生かして4月以降、びわ、杉野、高時、伊香具の各地域で、準備が整い次第、順次運行する。

 コープしがは余呉、上草野の2地域で昨年から移動店舗「あったか便」を運行している。新たに「2号車」を導入し、今月26日から西黒田、神田、田根の3地域でも運行を始める。

 両社とも軽トラックに300〜400点ほどの生鮮食品や加工食品などを積み込み、各地域の停留所で販売する。

 スーパーが近くにない過疎地域では、車を持たない高齢者は近隣住民の支援などで買い物に出ていたが、人口減少や住民の高齢化でそれも難しくなっているという。昨年から移動店舗が赴いている余呉、上草野の両地域では停留所に地域の高齢者が集まっておしゃべりするコミュニティの場ともなっており、見守りや支え合いの観点からも移動販売の役割は大きい。

 平和堂は長浜市内で8店舗(1店舗建て替え中)、宅配を行うホームサポートセンター4店舗を展開し、移動販売は初参入。協定締結式で平松正嗣社長は「店舗に行くのが難しいお客さまが商品を見ながらお買い物でき、コミュニケーションも生まれる。お客さまの声を聞き、サービスを向上させたい」と話した。

 コープしがは現状の2地域から、5地域へと拡大する。白石一夫理事長は「滋賀県を網羅する平和堂と一緒に地域課題の解決に取り組めるのを嬉しく思う。地域づくり協議会、社会福祉協議会の尽力に感謝します」などと話した上、巡回先の高齢者からの温かい言葉が従業員のやりがい、励みとなっていることを紹介していた。

 協定締結にあたって各地域づくり協議会の会長が寄せたコメントでは「自動車の利用が困難な高齢者は隣近所の互助や結いの仕組みにより支援されてきたが、人口減少や高齢化による食品などの購入アクセス困難者が増え大きな課題となってきた」(びわ・伊藤雅明会長)などと地域が直面している課題を示し、移動販売を「歩いて行ける買い物場所は、井戸端(会議)にも通じる暮らしの場として待ち望むものだった」(神田・小川幸男会長)などと歓迎。

 「各自治会が協力し、単に買い物という枠から地域住民の交流の場につながっていくように取り組みたい」(高時・山内喜久雄会長)、「移動販売による日常的な生活支援、停留所を活用した交流機会の促進、見守り活動の推進などさまざまな効果に期待したい」(西黒田・高森喜兵衛会長)と、地域コミュニティの活性化や見守り効果にも期待を寄せている。

2024年2月2日

丹部さん イタリア料理コンテストで準グランプリ

 大井町出身で名古屋市のイタリア料理店のシェフを務める丹部優(ゆう)さん(34)が1月30日、東京で開かれた「イタリア料理コンテスト」(日本イタリア料理協会、カゴメ主催)で準グランプリを受賞した。初出場での快挙。

 丹部さんは京都調理師専門学校を卒業後、京都で就職したが、突然、小麦粉アレルギーを発症。地元、滋賀に戻って体調を整えながら、和食、中華などオールジャンルで料理を学び、2013年、イタリア料理の道へ。名古屋のレストランで修業を重ね、19年、渡伊。ルッカの1つ星「リストランテ・インブート」で郷土料理などを学び、1年足らずでセクションシェフまで昇り詰めた。

 帰国後は名古屋市の新規店舗の立ち上げなどに関わるほか、湖北地域で料理教室を開催。現在、イタリア料理店「セルジョ」(名古屋市)のシェフを務める。昨年は若手料理人の登竜門「シェフワングランプリ」(吉本興業、朝日放送主催)に初応募。461人の中、イタリア料理部門でベスト5に選出されていた。

 4回目となる同コンテストはベテランまで参加でき、「冷凍イタリア産グリル野菜」をテーマに作品を募集。約150人のうち6人が決勝に進出し、イタリアンの巨匠・片岡護さんら4人が審査した。

 丹部さんは冷凍ズッキーニを用いたオリジナル料理「トルタ ディ ズッキーネ」で勝負。ズッキーニを冷凍のまま、パン粉、粉砕したグッシーニ(細長いパン)、パルミジャーノ(チーズ)、ニンニクを効かしたオリーブオイルなどと混ぜ合わせ、オーブンで香ばしく焼き上げるという「加熱解凍調味法」で頂点を目指した。

 結果は埼玉県のシェフ・羽鳥雅晴さんに次ぐ2位。丹部さんは「素直に評価されたことが嬉しい。デモンストレーション中のアクシデントが逆に評価に繋がり、それが無かったら勝てなかった。さらに上を目指したい。応援してくだった皆さんに感謝したい」と話している。

2024年2月2日

近江長岡駅に「カフェルミエ」誕生

待合室の一角改修し、地域住民団体が運営

 米原市長岡のJR近江長岡駅の待合室に1日、「カフェ ルミエ」がオープン。初日にはオープニングセレモニーが開かれ、地元住民たちがコーヒーを楽しんだ。

 長岡、万願寺、西山の3自治会の住民たちが設立した団体「近江長岡大好き倶楽部」が運営する。待合室の一角約32平方㍍の有効活用を以前から模索していたところ、米原への移住者で、市の空家再生みらいつくり隊員を務めている石崎達郎さん(43)・美和さん(38)夫妻、山城真理さん(47)の3人との交流の中でカフェにすることを決めた。市への要望やJR東海との協議などを経て、昨年12月から改装工事を始めた。

 クラウドファンディングや市の補助、住民らからの寄付で資金を集めたが、想定以上の経費がかかった。改装費用を抑えるため、空家再生みらいつくり隊の3人や同倶楽部のメンバーたちが床のタイル張りや壁のペンキ塗りなど独自で行った。山城さんは「近江長岡のように古い街並みが残るパリにあるおしゃれなカフェをイメージした」と笑顔で話していた。

 ルミエはフランス語で「あかり」の意味で、「山東地域のホタルの光に人が集まるように、多くの人が訪れるお店にしよう」との思いから命名。

 店ではオーガニックのコーヒー豆を使用するなど自然素材にこだわり、フードメニューも地元食材を取り入れる。

 4月以降のカフェの定休日には地元の野菜や米、手作りパン、土産品などを販売するマルシェを開催する計画。市民だけでなく、市外からの来店客にも楽しんでもらえるような店づくりを目指す。

 1日のセレモニーで、山城さんは「きょうのオープンはゴールではなくスタート。地域の皆さんをできるだけ巻き込んで、みんなでお店をつくり上げていき、近江長岡を盛り上げていきたい」と意気込みを語った。

 同倶楽部の吉川良幸会長(70)は「オープンしたカフェを見て地域の底力を感じる。近江長岡はおもしろい場所だと思ってもらえるための拠点にしたい」と話した。