2022年2月17日

一貫斎の飛行機模型 初公開

鈴木さんが制作、国友鉄砲ミュージアムで

 国友鉄砲研究会メンバーで模型飛行機マニアの鈴木健市さん(81)=八幡東町=は、江戸時代の発明家、国友一貫斎(1778〜1840年)が考案した飛行機絵図の縮尺模型を製作し、国友鉄砲ミュージアム(国友町)で展示している。

 絵図面は一貫斎が鳥に模した飛行機を描いた「阿鼻機流(あびきる)大鳥秘術」。寸法も書いており、文政13年(1830年)に江戸幕府に提出した飛行機構想の資料とみられる。

 鈴木さんは少年時代から模型飛行機、グライダーなどの製作が趣味で、一貫斎発明品の復元企画で鳥形飛行機の製作を担当。縮尺10分の1模型を木と紙を材料に1カ月半がかりで1月末ごろ完成させた。大きさは縦66㌢、横120㌢。

 実際には飛べない構造だが、鈴木さんは「図面には鳥のように飛びたい強い願いが現れている」といい、数々の発明品を生み出した実績から「あと5年も長生きすれば世界初の飛行機を完成させた可能性がある」と、その才能を惜しんでいる。さらに、一貫斎の自画像では、手にした掛け軸から鳥が飛び出す図が描かれており、この絵からも飛行機への関心の高さがうかがえるという。

 特別展「一貫斎への招待」で3月末まで展示される。期間中は無休。問い合わせは℡(62)1250へ。

2022年2月16日

夫婦の絆はどれだけ強い?

糊でくっつくフクラガエル 長浜バイオ大・倉林准教授が接着力研究

 長浜バイオ大アニマルバイオサイエンス学科の倉林敦准教授(50)が広島大学両生類研究センターと共同で南アフリカ原産のフクラガエルの糊(のり)粘膜の成分解明に取り組んでいる。

 フクラガエルは丸々とした愛らしい体型から、ペットとして飼育するファンが日本でも多い。メスに比べてオスが非常に小さいことから、交尾(正しくは抱接)の際にオスがメスを抱きかかえられず、このため、皮膚から糊を分泌して体を接着することでつがいを作るユニークな特徴を持っている。

 これまで糊を人工的に分泌させられず研究が進まなかったが、倉林准教授は電気刺激を与えることで糊の分泌を促し採取することに成功した。

 糊の調査では時間経過とともに接着力が強力になり、面ファスナー(マジックテープなど)と同程度の接着力を持つことが分かった。

 また、オスとメスが違う種類の糊を出し混ぜ合うことでより強い接着力が生じるという「エポキシ仮説」が有名だったが、研究ではオスとメスの糊に大きな違いがないことが明らかになり、双方の糊を混ぜた場合でも変化はなかった。また、オスは糊を出さない別の種類のメスに対しても接着することが確認された。

 「夫婦の絆の強さ」を連想させるフクラガエルの接着力の強さだが、今回、オスが別種のメスにも接着できる生態が分かったことで、その「浮気性」も明らかになった。

 倉林准教授は2003年に広島大学両生類研究センターに赴任したのを機に、ユニークな体位で交尾するフクラガエルの生態に興味を持ち、研究を始めた。2015年以降、計4回、南アフリカで現地調査し、十数種類のフクラガエルの粘液の採取に成功。「瞬間接着剤顔負け」の強力な糊を出す品種も発見している。フクラガエルは20種類が確認されているが、倉林准教授はまだ名前のない新種も発見している。

 なお、フクラガエルの糊はアレルギー反応の出にくい「生体接着剤」として皮膚や骨の接合など手術現場で応用できる可能性があり、倉林准教授は「糊物質の正体や、糊に関わる遺伝子について研究を進めたい」とコメントしている。

 研究成果は15日、国際科学雑誌「SALAMANDRA」に掲載され、フクラガエルの交尾のようすが雑誌の表紙を飾っている。

2022年2月10日

昆虫食が食料危機を救う!?

長浜バイオ大学 コオロギ食用化を共同研究

 「地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた昆虫が支える循環型食料システムの開発」—。長浜バイオ大学が壮大なテーマを掲げる内閣府主導のプロジェクトに参加し、将来の食料難を救う切り札として注目を集める「昆虫食」の具現化に向けて研究開発に取り組んでいる。

 世界の人口は現在の78億人から2050年には98億人へと増加し、食料生産が追い付かない状態になるとされ、国際連合食糧農業機関は2013年、その解決策として昆虫の活用を提案。これを受け、世界規模で昆虫食の研究が進んでいる。

 内閣府主導のプロジェクトには長浜バイオ大を含め10の大学と研究機関が参加。長浜バイオ大ではアニマルバイオサイエンス学科の小倉淳教授を先頭に、教員、学生が研究に取り組んでいる。

 食料危機の切り札がなぜ昆虫食なのか。小倉教授は「昆虫は温室効果ガスの排出量が極めて少ない利点がある。さらには牧場のように広大な飼育スペースを必要とせず、栄養価の面でも優秀。例えば、鶏のササミのタンパク質が重量当たり約25%だとすれば、コオロギは約80%。持続可能な次世代のタンパク質源として非常に有望」(大学広報誌めいこう46号)と説明している。つまり、昆虫食の研究は遠くない将来、人口増加でタンパク質の供給が追い付かなくなる「タンパク質クライシス」への備えというわけだ。

 長浜バイオ大では昆虫の食料化・飼料化に取り組み、「昆虫ゲノム育種」「昆虫由来水産飼料開発」「コオロギ由来食料開発」「社会実装」の4つの視点で研究を進める。先行する欧州ではヨーロッパイエコオロギの食用化が進んでいるが、比較的湿度が高い日本では生育に課題があることから、日本全国でコオロギを採取して飼育し、最新のゲノム解析技術を用いて、日本独自の低コストで生産性の高い品種を目指している。

「食材の優秀さ、知って」澤田さん  飼育環境など模索

 このうち、「昆虫ゲノム育種」と「社会実装」を担当する学生の一人が、メディカルバイオサイエンス学科3年生の澤田祐衣さん(21)。子どものころから昆虫が大好きで、特に蛾に魅力を感じ、自宅では蚕を飼育している。

 藻類の分泌する糖類が水中のマイクロプラスチックを絡めとって除去する研究を行っていたところ、昆虫好きを知っていた小倉教授から勧誘され、プロジェクトに参加。全国のコオロギの採取、飼育、観察を担当している。湿度や温度に注意しながら最も適した飼育環境を模索している。観察を重ねるうち体長5㍉程の小型のコオロギが、カビの生えた餌を食すなど劣悪な環境でも生存できることに気づいた。

 また、昆虫食を広める「社会実装」では、どのように情報発信すれば、昆虫食への理解を深められるのかを研究している。これまでの調査で、男性に比べ女性の方が昆虫食への関心が高く、「栄養価の高さや環境問題への意識の高さが背景にあるのかもしれない」と語る。コオロギを粉末状にした「コオロギパウダー」は高タンパクで、筋トレやダイエットに励む女性はあまり嫌悪感を抱かずにプロテインとして注目しているという。

 個人的にも昆虫食への探求心が強い。コオロギパウダーを使った料理を食したり、「タガメ酒」を自作したり、自宅で飼育する蚕をボイルして試食したりと、好奇心は尽きない。

 「昆虫のことを何も知らないままで嫌いになるのではなく、食材として優秀なことを知って欲しい」と澤田さん。今は昆虫食にエンターテイメント性を求める人が多いが、「スーパーに昆虫食が並ぶ将来になれば」と、昆虫食が食卓を飾る未来を夢見ている。

2022年2月10日

伊吹山ふもとに「宇宙図書艦」

数学や宇宙など2000冊  5月開設へ

 伊吹山のふもと、米原市春照に今年5月、さまざまな分野の本を並べる私設図書館「宇宙図書艦 Hull_Terrace」を、東近江市内でリラクゼーションサロンを経営する安川美佐子さん(50)がオープンさせる。現在、クラウドファンディングで改装費の支援を募っている。

 安川さんは数学塾を経営していた父親の岡本礼二さん(故人)の影響で、数学や宇宙など約5000冊の本に囲まれた生活を送ってきた。このまま眠らせておくのはもったいないと、7年前から「宇宙図書艦プロジェクト」と題した私設図書館の整備を計画。適した場所を探していたところ、リラクゼーションサロンの利用客が所有する農業倉庫の紹介を受けた。

 農業倉庫は2階建てで、釣り天井や床板の設置、断熱施工などの改装を行い、5月15日にオープン予定。父親から譲り受けた数学や宇宙などの専門書をはじめ、小説、実用書、漫画など計約2000冊を並べる。このほか、ギャラリーやマルシェ、ライブなどに利用できるマルチスペース、ミシンや楽器などを置くシェアルームも整備する。

 図書館名は、春照の訓読み「はるてらす」の音の響きから英語で「Hull」(船体)、「Terrace」(遺構)と表現した。安川さんは「皆さんに宇宙人の気分になってもらえるよう、楽しく作り上げていきたい。多くの人に本を読んでもらえたら、父も嬉しいと思う」と話している。

 改装費を募るクラウドファンディングは3月30日まで「キャンプファイヤー」で実施。目標額300万円。リターン品はオリジナルブレンドアロマ、宇宙図書艦一日貸し切りチケット、フレンチレストランのパーティーなど。詳細はキャンプファイヤー(https://bit.ly/3JC4FlX)へ。

2022年2月4日

琵琶湖パールとイチゴの洋菓子

尾崎さん 期間限定でえきまちテラス長浜に出店

 えきまちテラス長浜1階のチャレンジスペースに2日、琵琶湖パールを使った手作りアクセサリーと、長浜産イチゴの洋菓子を扱う店「TROIS(トロワ)3」が期間限定でオープンした。

 店主の尾崎友美さん(39)=新庄中町=は兵庫栄養調理製菓専門学校の講師や北ビワコホテルグラツィエの製菓長を務めるなどパティシエとして20年のキャリアを持つ。同ホテルのショップで琵琶湖パールのアクセサリーに出会って以来、その魅力の虜となりアクセサリー作りに没頭。昨年、ホテルを退職し、アクセサリーの制作・販売へと舵を切った。

 尾崎さんが使用する琵琶湖パールは形や色が不揃いだが、「1つとして同じものがないのが嬉しい」と語る。チャレンジスペースにはピアスやリング、ブローチなどが並び、黒壁にちなんでガラスを多用した作品も多い。

 洋菓子は長浜産のイチゴ、県産の米粉、薄力粉を使うなど材料にこだわった「苺シフォン」や「苺タルト」などを販売。「苺シフォン」は瓶にイチゴと生クリーム、シフォン生地を詰め、見た目も可愛らしいスイーツに仕上がっている。

 「これまでは作ってばかりでお客さんとしゃべることが少なかったので、対面販売で気付かされることが多い」と尾崎さん。「ここでの経験を生かして、いつかアクセサリーと洋菓子の店を持ちたい」と夢を語っている。

 出店期間は28日まで。営業時間は午前11時から午後5時まで(なくなり次第終了)。火・日曜定休。

2022年2月1日

湖北から2人 世界大会へ

きもの装いコンテスト関西大会入賞

 着物をいかに美しく装えるかを競う「全日本きもの装いコンテスト」の関西大会で、米原市上多良の松田清楓(さやか)さん(17)と、同市米原西の宮川佳奈さん(23)が入賞し、4月に東京で開かれる世界大会に出場することが決まった。

 コンテストは全日本きものコンサルタント協会が毎年開催し、振り袖、留め袖、カジュアルなど6部門で、鏡を見ずにいかに1人で美しく装えるかを競う。着装審査後のスピーチも評価の対象となる。関西大会は1月中旬に奈良市内で開かれ、約70人が出場した。

 カジュアル部門に出場した松田さんは小紋を素早く綺麗に着こなし、女王、準女王に次ぐ1位に輝いた。小学2年生からコンテストに挑戦し、世界大会への出場は今度で4回目となる。ただ、これまで1度も1次審査を通過できておらず「さらに早く、美しく着られるようにけい古を重ね、表彰台を目指したい」と語っている。

 振り袖部門に出場した宮川さんは2位に入賞。出場15人の中で最も早い約7分で装った。スピーチでは子ども向けの着物教室を手伝ったり、米原中学校で浴衣の着付けを教えたりした経験をもとに「次の世代に着物を伝えたい」と話した。世界大会では母親の振り袖で出場し、着物文化の継承をPRしたい考え。

 2人を指導している松田陽子さん(48)=米原市上多良=は「世界大会への出場を決めてくれて、ほっとしている。2人にはこれからも着物に携わってもらい、日本の文化を若い世代に伝えて欲しい」とエールを送っている。