夫婦の絆はどれだけ強い?

糊でくっつくフクラガエル 長浜バイオ大・倉林准教授が接着力研究

 長浜バイオ大アニマルバイオサイエンス学科の倉林敦准教授(50)が広島大学両生類研究センターと共同で南アフリカ原産のフクラガエルの糊(のり)粘膜の成分解明に取り組んでいる。

 フクラガエルは丸々とした愛らしい体型から、ペットとして飼育するファンが日本でも多い。メスに比べてオスが非常に小さいことから、交尾(正しくは抱接)の際にオスがメスを抱きかかえられず、このため、皮膚から糊を分泌して体を接着することでつがいを作るユニークな特徴を持っている。

 これまで糊を人工的に分泌させられず研究が進まなかったが、倉林准教授は電気刺激を与えることで糊の分泌を促し採取することに成功した。

 糊の調査では時間経過とともに接着力が強力になり、面ファスナー(マジックテープなど)と同程度の接着力を持つことが分かった。

 また、オスとメスが違う種類の糊を出し混ぜ合うことでより強い接着力が生じるという「エポキシ仮説」が有名だったが、研究ではオスとメスの糊に大きな違いがないことが明らかになり、双方の糊を混ぜた場合でも変化はなかった。また、オスは糊を出さない別の種類のメスに対しても接着することが確認された。

 「夫婦の絆の強さ」を連想させるフクラガエルの接着力の強さだが、今回、オスが別種のメスにも接着できる生態が分かったことで、その「浮気性」も明らかになった。

 倉林准教授は2003年に広島大学両生類研究センターに赴任したのを機に、ユニークな体位で交尾するフクラガエルの生態に興味を持ち、研究を始めた。2015年以降、計4回、南アフリカで現地調査し、十数種類のフクラガエルの粘液の採取に成功。「瞬間接着剤顔負け」の強力な糊を出す品種も発見している。フクラガエルは20種類が確認されているが、倉林准教授はまだ名前のない新種も発見している。

 なお、フクラガエルの糊はアレルギー反応の出にくい「生体接着剤」として皮膚や骨の接合など手術現場で応用できる可能性があり、倉林准教授は「糊物質の正体や、糊に関わる遺伝子について研究を進めたい」とコメントしている。

 研究成果は15日、国際科学雑誌「SALAMANDRA」に掲載され、フクラガエルの交尾のようすが雑誌の表紙を飾っている。

掲載日: 2022年02月16日