長浜のお庭文化を後世に

市民有志が書籍化へCFで資金募る

 長浜市内に残る個人宅の庭や名勝庭園などを調査しているグループ「ながはまのお庭プロジェクト」(山崎弘子代表)はこれまで発行した小冊子5冊を再編集し新たにインタビューなどを盛り込んだ書籍を販売することになり、クラウドファンディング(CF)で制作費用180万円を募っている。

 長浜市は茶人で造園家の小堀遠州(1579〜1647年)の出身地。遠州の手掛けた庭は市内にはないものの、遠州の作庭文化を受け継いだ辻宗範、勝元宗益(鈍穴)、布施宇吉(植吉)らが活躍した。長浜商人は豊かな経済力を背景に庭師を呼び寄せて競って庭を造らせ、今もその多くが当時の姿を変えず受け継がれている。

 2009年に京都大学の学生らが市街地で庭の調査を始めたのをきっかけに個人宅に古い庭が多く残ることが明らかになり、さらに調査を進めるため、大学教授や庭師、市民活動家、市職員ら有志でプロジェクトを結成。中心市街地に残る個人宅の庭の調査を進め、市町合併後は市全域を見て回り、約10年かけて約1000カ所を調べた。このうち、江戸、明治、大正時代に造られた庭を小冊子「ながはまのお庭」にまとめあげ、これまで5巻を発行した。また、庭を巡るツアーや講演会の開催などを通して、長浜に残る庭文化の発信、保存に取り組んできた。

 新しく書籍化を計画しているのは小冊子を再編集したもので、約100カ所の庭を紹介したうえで、所有者へのインタビュー、庭師による座談会のようすも収録する。タイトルは「市中の山居〜ながはまのお庭〜」(仮題)で、B5判98ページ。

 古い庭は今も隠れるように大切に受け継がれてきたものの、現代の住宅に似合わないとして取り壊されて駐車場になるなど少しずつ失われつつあり、同プロジェクトは「今、声を上げないと失われてしまう」と危機感を抱く。山崎代表は「埋もれていた長浜のお庭文化を調査・発見する機会をいただいた。住宅事情が変わり庭の存続が危ぶまれるが、世界に誇れる日本の庭文化が守られるきっかけとなれば」と話している。

 なお、CFでは寄付金額に応じて書籍や絵はがき、米、地酒などの返礼品を贈る。詳細はキャンプファイヤー(https://bit.ly/3mojy2m)へ。

掲載日: 2021年10月26日