2024年11月25日

希少種ヤマトサンショウウオ守ろう!

田村山麓に新たな保護池、住民や学生ら整備作業

 長浜市南部の田村山に生息する希少種ヤマトサンショウウオの保護活動に取り組んでいる田村山生き物ネットワーク(会長=齊藤修・長浜バイオ大アニマルバイオサイエンス学科教授)は24日、新しい保護池の整備作業に取り組み、ネットワークのメンバーやバイオ大学生、近隣住民、生き物好きの小学生グループなど約70人が参加した。

 田村山では2005年に齊藤教授が麓の側溝に卵の塊を見つけたことでヤマトサンショウウオの生息が明らかになった。齊藤教授の呼びかけで結成した同ネットワークは13年に山の麓に保護池を整備し、今では保護池での産卵が定着している。

 ただ、ヤマトサンショウウオが田村山から保護池に移動するには道路や側溝を横切る必要があり、池の手前にある側溝に足止めされるなどして産卵数は減少傾向にあるという。

 このため、新しい保護池は道路や側溝に邪魔されない山際に整備。クラウドファンディングで協力を呼びかけ、146人から寄せられた資金164万9000円を活用した。

 この日は齊藤教授の案内で田村山の遊歩道を散策して自然豊かな里山環境を学んだ後、新しい保護池に移動して斜面に石を積む作業に取り組んだ。参加者が手分けして石を置き、足裏で叩いて斜面に固定していた。

 また、現在の保護池に生息する天敵のアメリカザリガニの駆除も行った。池の水をバケツですくい上げ、岩のすき間に隠れるザリガニを1匹ずつ捕獲した。ザリガニは近くの田んぼや水路から陸を移動して侵入するといい、定期的に駆除を行っているが、この日は60匹以上を捕まえた。

 参加者の中にはザリガニ好きの子どももおり、齊藤教授は「アメリカザリガニは外来種で、ヤマトサンショウウオの卵も親も食べる。駆除せざるをえない」と説明していた。

 ヤマトサンショウウオはこの時期は田村山に生息し、2月ごろに産卵のため保護池に戻ってくるが、この日は池の中でオス1匹が見つかった。齋藤教授は「山から降りてくるメスを待つため、季節を前倒しして池にいるのかも」と話していた。

 作業を終え、齊藤教授は「田村山に希少種がいることを知ってもらい、地元の理解と協力を得て末永く残していきたい」と話し、この日の作業に約70人もの有志が参加したことを喜んでいた。

 なお、新しい保護池には今後、地下水をくみ上げるポンプを設置して水を張り、現在の保護池で生まれるサンショウウオを移す。数年で新しい保護池での産卵が定着するという。

2024年11月19日

今村翔吾さん、三成の魅力語る

「五葉のまつり」発刊記念 文泉堂でトークショー

 大津市在住の直木賞作家・今村翔吾さんが石田三成をテーマにした歴史小説「五葉のまつり」(新潮社、10月30日発売)の出版にあたり、18日、大宮町の文泉堂でトークショーを行い、自身が分析する三成像について語った。

 「五葉のまつり」は刀狩りや太閤検地など豊臣秀吉の大事業を支えた五奉行を三成の視点で取り上げている。今村さんにとっては「八本目の槍」に次ぐ三成小説となっている。

 トークショーでは、今村さんは三成を書くことについて「理屈なしに単純に好きだから」と語り、「今でこそ漫画、アニメ、ゲームで三成は人気を回復しているが、依然として三成の人気は高くはなく、いまだに江戸時代に書かれた軍記物のイメージが残っている」と語った。

 一方で、最近の三成像について「義の武将」として「美化しすぎ」とした上で、三成の評価すべき点は朝鮮出兵で担当した「兵站」と説いた。「三成ら五奉行が一番力を発揮したのは朝鮮出兵」とし、20〜30万人の軍勢を集めて船で朝鮮半島に送り、食料や武器を途切れさせることなく補給し続けた手腕を取り上げ「電卓もパソコンもなしに、相当大変な作業を行った」と賞賛した。

 また、現在のロシアによるウクライナ侵攻を例に挙げながら、「戦を始めるのは簡単だが、どうやって終わらせるのかが難しい」と語り、「三成は朝鮮出兵の初手から終わらせ方を考え、早く戦を終わらせようとした」と紹介。「三成はあと1冊書く」と宣言し、朝鮮出兵を終わらせた三成の外交手腕などをテーマとすることをにおわせた。

 明治時代を舞台にした今村さんの時代小説「イクサガミ」は俳優・岡田准一さんの主演でドラマ化が決まっており、今村さんはいずれ三成をテーマにしたNHK大河ドラマを実現したいと語った。

 書店が全国で1万店を切った現状を憂い、「他の娯楽に本が負けている」「本を読まない人に本の楽しさを伝えるのは難しい」と語った。その上で「皆さんにはそれぞれ本の面白さを伝えてもらいたい」と来場者に呼びかけていた。

 質疑応答では来場者から「時代考証にどれだけ重きを置いているのか?」との質問があり、今村さんは「何年何月何日に誰がどこにいたかは押さえている。それ以外のところはフィクションで私のテーマを乗せている」と答えていた。

 トークショー後にはサイン会も行われた。

2024年11月13日

最後の料理展示会、金賞は笠松さん

県調理短大、指導者や卒業生らも出品

 県調理短期大学校(分木町)で13日、学生が実習の成果を披露する料理展示会が開かれた。来年3月末に閉校することから最後の展示会となり、学生だけでなく指導者や卒業生、高校生らも出品して花を添えた。 展示会は年1回開かれ、33回目を迎える今年は2年生7人、指導員2人、外部講師2人のほか、卒業生3人、彦根総合高校のフードクリエイト科と総合学科・製菓コーディネート系列の生徒が出品。日本料理、フランス料理、寿司、和菓子、飴細工、洋菓子など多彩な料理が並び、来場者の目を楽しませていた。 学生の作品は指導員らが全体のバランスや盛り付け、季節感、配色などを審査。金賞に笠松楽生(らい)さん(20)=草津市=のフランス料理のコース「リーニュ・デ・デパール」(スタートラインの意味)が輝いた。 金賞に輝いたコース料理は前菜、スープ、魚、肉、デザートなど8皿で構成し、特にキャビアやアワビなど使った6種類からなる「アミューズ」が自信作という。「昨年は銀賞で悔しい思いをした。1年かけて構想を練ってきた」という笠松さん。「色合い、盛り付けた際のバランスなどに気を配った。金賞をとれて嬉しい」と語っている。 笠松さんは料理人の父に憧れて物心ついたときから料理への道を志し、現在は調理短大に通いながら父が統括料理長を務めるクサツエストピアホテルの厨房で研鑽に励んでいる。「卒業してからが料理人としての本番。これからスタートラインに立つという思いを料理に込めた」と話していた。 このほか銀賞に三上遥さん(19)、銅賞に藤原龍大さん(19)の作品が選ばれた。 この日は学生が大根の桂むき、アジの三枚おろしなどのデモンストレーションで日ごろの実習の成果を披露したほか、卒業生が働く京極寿司によるマグロの解体、振る舞い寿司もあった。

2024年11月12日

心肺停止の高齢男性救う

胸骨圧迫やAEDで、松田さんらに感謝状

 突然、心肺停止に陥った高齢男性に胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAED(自動体外式除細動器)を施して人命救助したとして、湖北地域消防本部は11日、長浜水道企業団職員の松田凌大さん(25)と松田遼雅さん(26)、アヤハディオ長浜店の店長・細溝勉さん(59)に感謝状を贈った。

 今年7月4日午前10時ごろ、アヤハディオ長浜店の敷地屋外で男性(70)=当時=が突然、転倒。たまたま近くにいた凌大さんと遼雅さんが「大丈夫ですか?」と声をかけたころ、男性は泡を吹いてけいれんを起こし、心肺が停止。遼雅さんは急いで胸骨圧迫を施し、凌大さんは119番通報して救急隊を誘導した。細溝さんはAEDを持って駆け付け、電気ショックを施した。

 これらの対応により救急隊が到着した際には男性は呼吸と脈拍を再開させ、入院後に社会復帰した。

 消防本部で行われた感謝状贈呈式で清水正幸消防長は「誰もが躊躇する場面でとっさに行動を起こした勇気と判断が尊い命を救った」と称えた。

 胸骨圧迫を施した遼雅さんは普通救命講習を受けた経験があり、心肺蘇生の知識や手順を身に付けていた。「こういう事案はいつ起こるか分からないが、講習を受けて知識があったので対応できた。みんなにも講習を受けてもらえれば」などと話していた。

2024年11月7日

グランスノー奥伊吹 関西最速!11月22日オープン

人工造雪機など拡充、約5カ月営業へ

 奥伊吹観光(草野丈太社長)が運営するスキー場「グランスノー奥伊吹」(米原市甲津原)は今月22日にオープンする。人工造雪機や人工降雪機を新たに導入するなど積極的な設備投資で安定したゲレンデ環境を整えることで例年より約1カ月早め、関西最速のオープンとする。さらに4月13日まで開設し、西日本最長の営業日数となる143日を目指す。

 暖冬による雪不足で関西のスキー場が運営に苦慮する中、グランスノー奥伊吹は水を霧状にまいて雪をつくる人工降雪機、氷を削って大量の雪をつくる人工造雪機を拡充して24時間継続して雪をつくれる態勢を整え、天候に左右されずに滑走可能なゲレンデを維持してきた。

 自然の地形を生かした全14コースがあり、京阪神・中京圏からのアクセスの良さ、標高が高く雪質が良いことも評判。昨シーズンは過去最多の26万人が来場した。

 今シーズンに向けては総額21億8000万円の設備投資を行った。約12億円かけて人工増雪機を新たに7基導入して8基体制とし、1日あたり525㌧の造雪が可能に。昨シーズンの12倍の能力で、これにより例年より約1カ月早い11月22日オープンを実現させる。さらに人工降雪機2基を新設することでゲレンデ全体の約8割を人工雪でカバーすることが可能となる。

 また、フジテック製のエスカレーター6基を約5億円かけて新設。駐車場からゲレンデまでの移動の負担を軽減し、荷物の多いファミリーも快適に利用できる。このほか、環境負荷を軽減する最新のハイブリッド浄化槽も3億8000万円の工費をかけて整備した。

 同社では「利用環境向上と環境負荷軽減の両立を実現することで持続可能な未来に向けたスキー場づくりを進める」としている。

 

2024年11月6日

城下町遺産、みんなで選んで!

25候補から10件、投票受付中

 長浜市街地に残る歴史的風景などを「長浜城下町遺産」として選定している長浜城下町まちづくり勉強会(渡辺浩之会長)は今年度、新たに選定する遺産10件を選ぶため、市民に投票への協力を呼びかけている。 1573年、後に天下人となる羽柴秀吉が開いた長浜の城下町には「発展の痕跡」が数多く残されており、城下町遺産の選定は、市民自らが地域の歴史を見つめ直し、後世に伝承するために2021年度から始まった。これまでに31カ所を選定しており、4年目となる今年度は25候補の中から10件を市民投票などで選ぶ。 今年度の遺産候補にノミネートしているのは、1939年の渇水時に琵琶湖中から発見された長浜城の井戸跡とされる「太閤井戸跡」(豊公園)、秀吉が建造した長浜城の大手門を移築したと伝えられる「大通寺台所門」(元浜町)、幕末から「八幡の地蔵さん」として住民に親しまれてきた「田の中延命地蔵尊」(高田町)、嘉永年間(1848~54年)に創業した両替商「銭作」を前身とした書店で、勝海舟の「心如金石」の扁額がかかる「文泉堂」(大宮町)など。 このほか、1933年(昭和8)に300人以上の町民の寄付で建築された「武徳殿」(朝日町)、1964年(昭和39)に地元の資産家が「長浜にも東京タワーのような名物を作りたい」という意向で建設し長浜の高度成長期を代表する建造物として貴重な「長浜タワー」(元浜町)なども候補に挙がっている。 秀吉遺産、町屋遺産、景観遺産、産業・近代化遺産の4つのジャンルに分類している。 各候補を紹介するパネル展をさざなみタウン(14日まで)と曳山博物館(10日まで)で同時開催中。市民投票は「長浜城下町遺産」のホームページ(https://nagahama.net/jyoukamachi/)で16日まで受け付ける。18日の選定委員会で投票結果を参考に今年度の城下町遺産を決定する。

2024年10月31日

愛称決定 湖北THGツインアリーナ & 長浜城テニスガーデン

 長浜市は伊香ツインアリーナ(木之本町西山)と市民庭球場(公園町)のネーミングライツ企業を決定し、30日、契約を交わした。

 伊香ツインアリーナは田中ホールディングス(木之本町木之本)が「湖北THGツインアリーナ」の愛称を付けた。THGは田中ホールディングスグループの頭文字に由来するほか、「Top Human Goals(人間の目標を達成する場)」との意味があり、施設利用者が目標に向かって挑戦してほしいとの思いも込めている。

 市民庭球場は長浜市内に事業所や寮がある兵神装備(神戸市)が「長浜城テニスガーデンsupported by HEISHIN」の愛称を付けた。県外からの来場者に容易に場所を連想してもらえるよう「長浜城」を付け、テニスコートが16面あることから「ガーデン」とした。

 ネーミングライツは公共施設などに愛称をつける権利を民間事業者に販売することで新たな歳入を確保するのが目的。ネーミングライツ料はツインアリーナが年額200万円、庭球場が年額150万円。両企業とも来年4月から5年間の契約を市と結んだ。ネーミングライツ料は施設の維持管理に活用する。

 市役所で行われた契約締結式で浅見宣義市長は「来年、国スポ・障スポの会場として多くの選手が来場し、この愛称が日本中に知れ渡り、知名度が上がることになる」などとあいさつした。

 田中ホールディングスの田中正孝社長は「国スポに限らず地元の子どもたちが施設を使い、どんどんスポーツに頑張ってもらうことを祈念する」と語り、個人的願望として将来、ツインアリーナでプロバスケットボールチーム「滋賀レイクスターズ」の試合を主催したいと語っていた。

 兵神装備は1968年に高月町出身の小野恒男氏が神戸で創業。地元に貢献したいとの思いから73年に高月町東物部に滋賀事業所を開設した。契約締結式で市田邦洋社長は社是に「所期報公」(事業を通じ、社会に貢献することを第一とする)を掲げていることを紹介し、「これからもさまざまな形で滋賀事業所を支えていただいている長浜市や周辺地域に貢献していきたい」と話した。

2024年10月29日

地域の拠点、神田まちセン完成

旧講堂の意匠引き継ぐホール、広場に続くテラス

 加田町で建て替え工事を進めていた神田まちづくりセンターが完成し、29日、内覧会が開かれた。神田山と麓に広がる広場に面した開放的なテラス、旧講堂の意匠を引き継いだ多目的ホールなど地域活動の拠点にふさわしい構造で、関係者はコミュニティの活性化に期待を寄せている。

 新しいセンターは鉄骨平屋建て746平方㍍で、会議室、調理実習室、和室、多目的ホールなどを設けている。このうち、多目的ホールには旧講堂に飾っていた腕木を取り付け、窓のデザインも引き継いだ。屋根にも旧講堂に取り付けられていた棟飾りを採用するなど、地域のシンボルだった旧講堂をイメージした造りになっている。

 神田連合自治会長で、神田地区まちづくり協議会長の伊藤義弘さん(70)は「立派なセンターが完成し感慨深い。多目的ホールは前の講堂をイメージして造っていただき、地元でも喜んでいる人が多い」と語り、「神田山や広場と一体となっているので、多くの人にテラスを利用してもらいたい。この環境を生かして、地域のつながり、コミュニティがさらに深まれば」と期待を込めていた。

 総事業は5億3464万円。建築は大塚工務店、設計・監理はヤスザワ設計、電気設備は川一電機、機械設備は岩崎工業所。

 なお、新しいまちづくりセンターは11月1日から使用開始。今後、旧センターの解体、外構工事などを経て、来年3月30日にグランドオープンを迎える。

 

2024年10月24日

塚田さん、淡海節大会で初優勝

挑戦続け20余年、悲願に「堂々と歌姫名乗れる」

 滋賀の民謡「淡海節(たんかいぶし)」の歌声を競う第34回びわ湖大津淡海節全国大会(9月28、29日、大津市北部地域文化センター)で長浜市の民謡歌手・塚田陵子さん(49)が初優勝した。これで県内の民謡3大会すべてで優勝を飾ったことになり、「びわ湖の歌姫」を名乗って活動する塚田さんは「これで堂々と歌姫を名乗れますね」と笑顔を見せている。

 淡海節は大正時代初期、大津市本堅田出身の喜劇役者、志賀廼家淡海(しがのやたんかい)が琵琶湖を懐かしんで作詞・作曲し、劇中で歌ったもの。当時、一世を風靡して全国に広まった。昭和39年に堅田地区の住民らによって保存会が結成され、大会が開かれるようになった。

 塚田さんは20代の頃から大会に出場し、優勝は悲願だった。淡海節の歌い方は出場者によってやや異なるといい、塚田さんは一切のアレンジを廃し、保存会が伝える歌い方を忠実に守って大会に臨んできた。優勝を受け「やっとかー、というのが正直な気持ちで、諦めずにいて良かった。今後、責任を持って淡海節を伝えていきたい」と話している。

 大会では「寿年の部」と「スーパーシニアの部」で塚田さんの師匠である磯田久子さん(93)=大津市=も優勝。師弟揃っての優勝に喜びもひとしおだという。

 塚田さんは昨年6月の第32回鈴鹿馬子唄全国大会(甲賀市)、11月の第11回津軽三味線津軽民謡全国大会inびわ湖(大津市)の津軽五大民謡部門でも優勝。淡海節全国大会を含め、滋賀の3大会を制覇した。

 現在、淡海節、鈴鹿馬子唄、琵琶湖舟唄を収録したCDのリリースを計画しており、「大会での優勝が自信につながった。民謡を通して滋賀・長浜の風景を伝え続けたい」と話している。

2024年10月22日

ガラスの魅力、パンケーキと一緒に

黒壁直営「96カフェ」 25日新装オープン

 黒壁直営の「96カフェ」(元浜町)が25日、新装オープンする。「ガラス×花×パンケーキ」をコンセプトに、黒壁ガラスで華やかに装飾された店内で、こだわりのパンケーキを楽しめる。

 カフェは黒壁ガラス館から北国街道を挟んで西側にあり、8月から改修工事を行っていた。黒壁のリニューアルプロジェクトの第4弾。

 ガラス細工や花で彩られたテーブル、吹きガラスで制作したランプ、しずく型のオーナメント、そして板ガラスを何層にも重ねて作り上げた壁面装飾—。黒壁の工芸技術を凝らして作り上げた店内は、ガラスの可愛らしさを存分に伝える装飾であふれている。

 そのガラスと花の空間で提供されるのは、素材と焼き上げにこだわったパンケーキ。ヤマハタ鶏卵(米原市柏原)の新鮮な卵、伊吹牛乳、伊吹ヨーグルト、百匠屋(長浜市三田町)の米粉などを使用している。注文を受けてから卵白を泡立ててメレンゲを作るなど生地にこだわり、低温でじっくり焼き上げる。提供までに30分ほどかかるが、広報担当の佐藤泉さんは「30分待つだけの価値がある美味しさ。是非、一度食べてください」と胸を張る。

 パンケーキは看板商品の「花降る抹茶パンケーキ」(1800円)をはじめイチゴ、ショコラ、モンブランクリームなどスイーツ系6種、「近江牛自家製ローストビーフパンケーキ」(2500円)などミール系3種類を展開する。

 営業時間は午前11時から午後5時半まで。ランチ、カフェタイムで提供メニューが変わる。水曜・木曜定休。

 

 

2024年10月16日

長浜きものアワード デザイン、着こなし斬新に

学生が大通寺門前で披露

 長浜きもの大園遊会に代わる新イベント「長浜きものアワード」が12日、市街地で開かれ、学生によるファッションショーが開かれた。着物や帯を斬新に加工したモード感あふれる衣装が次々とランウェイで披露され、参加した学生は審査員やカメラの前でポーズを決めるなどしてPRしていた。

 大学や専門学校から9校17チームがエントリー。学生が着物や帯を取り入れた装いで大通寺門前のレッドカーペット上を歩き、モデル・女優の川津明日香さんや声優の山口勝平さんら5人が審査した。

 和の素材を取り入れながら、モード感や細部の美しさなどにこだわった衣装が続々と登場し、グランプリには愛知学泉短期大学生活デザイン総合学科2年の仲野あかりさん(20)の作品が選ばれた。「和魂漢才」をテーマにスカートと振り袖を組み合わせ、スカートは浜縮緬とレースを幾重にも重ねて作り上げ、振り袖の部分は透ける素材で「ステンドグラス」風にデザインしている。自身がモデルを務め、「グランプリに輝き、とても嬉しい。360度どこからでも美しく見えるように制作した。今後もデザインに浜縮緬を取り入れたい」と話した。

 審査員特別賞に輝いた成安造形大学のグループ「ブラッキュ」はピンク色に染めた浜縮緬を用い、「美しさと醜さの共存」をコンセプトにした作品を披露。グループのリーダーで空間デザイン領域コスチュームデザインコース3年生の宮下樹さん(21)は「コスチュームデザインコースは異素材を使った加工法が特徴で、造形的な表現が主。それを着物という伝統的なものに当てはめて表現できたのは良い機会だった」と振り返り、浜縮緬について「ゴツくて存在感がある生地。それをうまく使いこなせるかがデザイナーの技量だと思う。魅力的な生地なので使いたいが、難しさが伴う」と話した。

 長浜きものアワードは、秋の風物詩だった園遊会の中止に伴って、新しく誕生した実行委員会が新趣向の和装イベントを模索する中で誕生した。急ピッチの準備だったため学生の参加は17チームにとどめたが、これ以外にも参加を希望する学校が多くあったという。新イベントは成功裡に終わり、実行委員長の和田洋典さんは閉会式で「今後も若者に着物文化にどんどん触れてほしい。アワードを若者の制作発表の場、着物を着る機会とし、着物のまち長浜、学生の集まるまち長浜を目指したい」と語った。

 成安造形大学3年生の松尾栞さん(21)は「学外でのファッションショーも、コンペも初めてで、今までにない経験となった。他の大学の作品を見たり、会話したりして刺激を受けた。来年以降も開かれるなら是非、参加したい」と話していた。

2024年10月9日

「金継ぎ」、バルセロナ大学で披露

杉中さんが実演、日本の漆文化を発信

 仏壇仏具店「宗永堂」(国友町)の店主で塗師の杉中伸安さん(60)がスペインの公立バルセロナ大学の招きを受けて、欠けた器を漆で接着して金で装飾する日本の伝統技術「金継ぎ」の講義を行った。

 金継ぎは、壊れたものを直して大切にする精神性とそのデザイン性が海外で注目を集めている。

 バルセロナ大学は1450年設立のヨーロッパ最古の大学の一つで、学生約6万3000人が在籍するスペイン屈指の高等教育機関。昨年、同大学で文化財修復を専攻するマリーナ・デュアルテさんが杉中さんの元で2週間の修業に励んだのが縁で、同大学の文化財修復科の講義に招かれた。

 杉中さんは9月13日から18日までスペインに滞在し、うち1日、講義を行った。講義は一般公開され学生や市民約100人が訪れた。漆の歴史、日本とスペインの関わりなどを紹介した後、割れた皿を使って金継ぎを実演。漆を塗布して割れた部分を接着したり、金粉で装飾したりする工程がスクリーンに映し出され、出席者はスマートフォンで撮影するなど身を乗り出して杉中さんの技を観察していた。

 学生や市民が想定を超えて詰めかけたため直前になって急きょ講義室を変更。ヨーロッパで「KINTSUGI」として注目を集める日本の伝統技術の人気の高さをうかがわせた。

 杉中さんは「学生は文化財の修復を学んでいるが、ヨーロッパでは漆を使う文化がなく、興味を持って熱心なようすだった。ブームの金継ぎを通じて日本の漆文化を知ってもらうきっかけとなり、嬉しい」と話した。

 バルセロナにはサグラダファミリア大聖堂やグエル公園など天才建築家アントニオ・ガウディが設計した建築物が数多く残る。大聖堂などを視察した杉中さんは「デザイン、配色、発想に刺激を受けた。今後、私の作品にその影響は必ず出てくるでしょう」と話していた。

2024年10月7日

秋の週末を満喫 アート・イン・ナガハマ

市街地は芸術一色に、人出4万5000人

 長浜市街地で5、6日、芸術イベント「アート・イン・ナガハマ」が開かれ、商店街の通りに芸術家の作品が並んだ。好天に恵まれたこともあり多くの観光客や市民が市街地に繰り出し、芸術一色の秋の週末を満喫していた。

 イベントは市民による手作り芸術祭として1987年に豊公園で始まった。その後、会場を市街地商店街に移し、約200組の作家がブース出展や実演などを行っている。

 38回目を迎えた今年は全国から133組の作家が集った。通りには陶芸、革細工、アクセサリーなど多彩なアート作品が並び、観光客や市民が作家とおしゃべりを楽しみながら、品定めをしていた。

 曳山博物館広場ではゴリラ特化作家「A・Flocon」が幅11㍍の巨大キャンバスにゴリラの絵を描いた。来場者の飛び入り参加を歓迎し、子どもたちも一緒に思い思いに絵を描いていた。

 曳山博物館北側のきいなパークでは来場者の夢をイラストで描くコーナーが登場し、イラストレーター中尾仁士さん、グラフィッククリエイター春仲萌絵さんが幅8㍍のキャンバスに、来場者から聞き取った多彩な夢を柔らかなタッチのイラストで表現していた。

 このほか、さまざまな創作体験に挑戦する「AINカーニバル」、コロコロコミック連載作家・古本ゆうやさんの原画展・サイン会、大道芸人・鈴木和人さんのパフォーマンス、人形劇まつりなどがあり、実行委員会によると2日間の人出は約4万5000人。

 

 

2024年10月1日

アサギマダラ 今年も優雅に飛来

「旅する蝶」 西浅井のペンションに

 西浅井町大浦のログハウスペンション「Rudder」に、「旅する蝶」として知られるアサギマダラが今年も飛来。秋の七草の一つのフジバカマを求めて優雅に飛ぶ姿が見られる。 アサギマダラは春から夏にかけて北へ移動し、越冬のため秋になると南に戻る。長距離を飛ぶ蝶として知られ、南への通過途中の毎年この時期に滋賀を訪れる。 同ペンションは蝶が飛び交う「バタフライガーデン」を目指し、2020年春からフジバカマやキバナコスモス、ヒャクニチソウ、蝶の幼虫のエサとなる草花など15種類ほどを植えたところ、アサギマダラなどが飛来するようになった。

 代表の田中伸征さん(55)によると、今年は9月26日からアサギマダラの姿が見られ、29日には16匹が花の蜜を吸いにとまっている様子を確認したという。今年はウラナミシジミなどを含め計8種類の蝶が訪れている。 田中さんは「朝になるとひらひらと舞い降り、夕方に優雅に帰るアサギマダラの姿がとても美しい。今年も来てくれてホッとしています」と話していた。見ごろは今月下旬まで。 アサギマダラを観察できるバタフライガーデンはオープンカフェの敷地内にある。カフェでは地産地消のオムライスや自家製パンのフレンチトースト、コーヒーなどが楽しめる。営業時間は午前10時から午後2時まで。