3度のがん克服したリーダー

余呉町池原  藤原哲男さん(74)

 「声帯」「歯ぐき」「胃」のがんを克服し、現在、地元のそば道場やがん患者・家族会の代表を務めるアクティブリーダー。

 企業の管理職としてきびきび働いていた藤原さんは53歳の時、声がかすれて話しづらくなり、病院を受診。精密検査で喉頭がんが見つかった。詩吟を趣味としていた藤原さん。「まさか自分が」。声を失う恐怖に襲われた。自覚症状が出やすい器官だったことが幸いし、がんは進行しておらず、放射線治療と2カ月の入院で回復。3日後、職場に復帰し、定年まで元気に働き続けた。

 ところが2年前、新たに歯肉がんが見つかり、手術で患部を除去。念のため、全身を検査したところ、胃がんも見つかった。最初のがん発症から体に留意するようになり、早期発見できたことで、再発もなく、健康に過ごせている。

 「がんは遺伝性が強いなど誤ったイメージがあり、周りに話せない。元気になった経験者が声を上げるべき」と、思いを共有する仲間10人と医師らにより2015年8月、近畿で初となる「市民のためのがん治療の会滋賀県支部」を結成。17年に「よりよいがん医療をめざす近江の会」として独立した。

 会では月1回、例会を開催。市内の中学校で、がん啓発の出前授業を行うほか、今年7月からは同じ病の患者・家族らに寄り添う「ハートケアサロン」(第3土曜)を開始した。

 藤原さんは「活動を通して、早期発見や命の大切さなどを訴えたい」とし、「知識を学んだ子どもたちが家族の『ウオッチャー』となり、親の体調を気にかけ、検査を勧めるなど、家族の中で支えあう形ができれば」と話している。

 このほか、藤原さんは、がんと闘いながら、地元の仲間たちと「池原そば道場」を運営している。「地産地消」にこだわり、遊休農地でソバ栽培、空き家を改装し、そば打ち体験コーナーを設け、素朴な味が自慢の二八そばを提供するなどし、まちおこしにも一役買っている。

掲載日: 2022年09月14日