2024年9月27日
地酒の伝統と技術を大切に
長浜市内3つの蔵元の代表が地酒の魅力について語るシンポジウム「長浜酒蔵談義」が26日、長浜まちづくりセンター(さざなみタウン内)で開かれた。
蔵元がどのような思いを込めて酒造りに取り組んでいるのか、酒類販売店や飲食店などに知ってもらおうと、長浜小売酒販組合(竹中一浩理事長)が企画した。
1532年創業で「桑酒」が人気を呼んでいる山路酒造(木之本町木之本)、1534年創業で「七本槍」の銘柄で知られる冨田酒造(木之本町木之本)、「湖濱」などで知られる2010年創業の佐藤酒造(榎木町)の代表らが地酒への思いやこだわりを語り、販売店や飲食店関係者、一般消費者ら約30人が聞き入った。
冨田酒造 地酒で「土地を表現」冨田酒造の冨田泰伸さんは「地酒の『地』の部分を大切にしている」と酒米へのこだわりを語った。以前、ワイン関連の仕事でフランス・ブルゴーニュ地方を訪れた際、ワインを作る農家がその土地に誇りを持ってワインを通して土地を表現していたことに衝撃を受けた、と語った。一方、日本酒の原料となる酒米は保存がきくことから全国から「良い米」を調達できるが、冨田さんは米の仕入れ先を見直して現在は県内の農家と契約を結んで県産米での酒造りに取り組んでいることを説明した。
また、昔ながらの木桶を使って、天然乳酸菌の働きを利用した伝統製法「生酛(きもと)造り」にも挑戦していることを取り上げ、「米と水からつくり上げるこの技術を昔のものにしてしまうのはもったいない」と語り、「海外でも日本酒の生産が始まっている。大本山の日本が持つ技術や歴史に目を向けて大切にしないと、コスパで逆転される時代が来るかもしれない」などと訴えていた。
山路酒造 「みりん粕」活用を山路酒造の山路祐子さんはみりんの製法で作ったリキュール「桑酒」が創業当初から愛され、島崎藤村の注文書も残っていると語った。近年は桑酒を炭酸で割ってミントやレモンを添える「モヒート」を提案したところ、人気を集めるようになったという。
桑酒を搾ったときにできる「みりん粕」について「昔は奈良漬けに使ったが、今はみりん粕の存在が忘れ去られようとしている」と憂い、レシピ冊子を作って発信に努めているとした。
奈良漬け以外にも桑酒を使った菓子の開発にも取り組み、「お酒以外でも、お酒を飲めない方にも、楽しんでもらえる商品を考えている」と語った。
佐藤酒造 地元の魅力を発信佐藤酒造の佐藤硬史さんは「地酒を通して地元の魅力を発信できる、新しい価値を作ることを理念にしている」と語った。「長浜曳山まつり」をラベルにするなど、「お酒を1本持っていくだけで地元の魅力を伝えられる商品を作ってきた」と話した。
また、新しい挑戦として県内産のハチミツを使った「ミード」の開発に長浜バイオ大と連携して取り組み、「今年12月には何とか商品化できそう」と報告した。
近年、日本酒の製造技術をベースにした新趣向の酒「クラフトサケ」が脚光を浴びており、佐藤さんは「地酒メーカーとして地に足を着けたお酒造りと、柔軟な発想での美味しいお酒造りに取り組んでいきたい」と語った。
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3人は地酒に合う料理として鯖のなれずし、鮎の塩焼き、小鮎の佃煮などを挙げていた。出席者からは地酒での乾杯を推奨する条例を滋賀県が制定していることを見習って、長浜市内でも乾杯条例制定の機運を盛り上げてはどうかとの意見が出ていた。