
2025年2月27日
微細藻類でカキを短期肥育
長浜バイオ大学発のスタートアップ企業「ノベルジェン」(田村町)が微細藻類の培養技術を活用してカキを短期間で肥育し、海外向けに販路を拡大する実証事業に取り組んでいる。長浜地方卸売市場に実証設備が完成し、2月27日、関係者にお披露目された。
同社は微細藻類の持つ特性などについて長年研究を行っている同大学アニマルバイオサイエンス学科の小倉淳教授が設立し、社長を務めている。小倉教授は赤潮の発生メカニズムに着想を得て微細藻類を人工的に急速に繁殖させる技術を開発しており、その技術で微細藻類を培養してカキに与えることで、短期間で肥育させることができるという。
国内のカキ養殖場では近海の清浄化などに伴ってカキの身が小ぶりになっていることが課題で、同社は長浜バイオインキュベーションセンター内に設けた水槽で微細藻類によるカキの肥育を研究してきた。
新しい実証設備は肥育システムを社会実装させる研究のため、市場の一角を借りて整備。広さ約80平方㍍の施設内に微細藻類を繁殖させる水槽と、カキを肥育する水槽を設置し、肥育に最適な微細藻類の種類や温度、光などを調べている。2025年度中にプロトタイプの肥育システムの販売を始め、全国のどこにいても新鮮で身入りが良いカキを食べられるようにしたい考え。最終的には日本産生カキの人気が高い東南アジアやヨーロッパ、北米などへの輸出拡大を目指す。
微細藻類は光合成で大気中の二酸化炭素を吸収する上、カキは豊富なタンパク源となることから、肥育システムの社会実装は地球温暖化防止や食料自給率向上に貢献すると注目されている。このため、同社の「日本産冷凍生食用カキの品質向上と輸出量増大を目的とした、カキの短期肥育システムと流通DXプラットフォームの開発と実証」には農林水産省が助成金12億4700万円(限度額=2028年3月まで)の交付を決定し事業を後押ししている。
この日のお披露目会では小倉教授が設備の概要や今後の展望などを関係者に説明した後、会場をびわこレストランROKUに移し、微細藻類で肥育したカキの試食会を行った。小倉教授は「微細藻類は地球上の40%以上の二酸化炭素を吸収する重要な生物群で、食物連鎖の基盤にも位置し、さまざまな生き物を支えている。社会実装で二酸化炭素の吸収や、食料生産プロセスに使うことで持続可能な新しい世界をつくることができる」とその可能性を披露していた。