シルク生地、家庭で気軽に洗濯

浜縮緬工業協同組合が加工技術を開発 洋服や寝具への採用に期待

 浜縮緬工業協同組合(吉田和生理事長)はシルク生地を家庭用洗濯機で洗えるように加工する技術を開発した。今後、地元だけでなく幅広い産地のシルクを加工する事業に乗り出し、和装だけでなく、アパレルや寝具、インテリアなどの分野にもシルク生地を売り込む。

 組合が生産を手掛ける「浜ちりめん」は絹織物の最高級品とされるが、和装需要の落ち込みで減産が続き、半世紀前のピーク時には124社いた組合員も現在は10社へと激減。シルク生地の新たな需要を生み出すには和装以外での活用が不可欠で、一時は供給先として高級子ども服ブランドとの商談が進んだが、「洗濯が難しいようでは、子ども服には不向き」と、採用に至らなかった。

 シルクは濡れた状態では摩擦に弱く、洗濯はドライクリーニングか優しい手洗いに限られる。組合では商談の失敗を受けて、家庭で気軽に洗濯できるようなシルクの加工技術の研究に乗り出し、県東北部工業技術センターの支援を得ながら13年かけて開発を進めてきた。

 「Yasa Silk(ヤサシクル)」と命名した新しい加工技術は、シルク生地を有機化合物で処理して分子レベルで結合を施し、強度をアップさせた。家庭用洗濯機を使ったテストでは60回洗っても、シルク最大の弱点である摩擦によるスレ、縮み、色落ちがほとんどなかった。

 吉田理事長は「シルク本来の吸放湿性の良さや、夏涼しく、冬暖かいといった性能もそのまま」と太鼓判を押す。加工時間はシルク生地20反で5時間程度。浜ちりめん生地だけでなく、あらゆるシルク生地に加工を施すことができるという。現在、特許を出願している。

 10月6、7日に京都市内で開催した「浜ちりめん白生地求評展示会」でもこの技術を紹介。会場には和装産業関係者だけでなく寝装寝具メーカーも来場し、吉田理事長は「説明を求められっぱなしで、反応が非常に良かった」と手応えを感じている。11月には東京で開かれるアパレル展示会にも出展する予定で「和装はもちろん、幅広いアパレル商品、寝装寝具などに活用してもらい、シルクの新たな分野を切り拓きたい」と話している。

 ヤサシルクに関する問い合わせは同組合℡(62)4011へ。

掲載日: 2022年10月14日