びわ出身、坂口さんノーベル賞

生理学・医学賞  「制御性T細胞」発見

 今年のノーベル生理学・医学賞が6日発表され、長浜市出身で大阪大特任教授の坂口志文氏(74)が受賞者に選ばれた。細胞の過剰な免疫反応を抑制する「制御性T細胞」の発見と、その役割の解明が高く評価された。

 人間の免疫は、体外から侵入する病原体を排除する一方、自身の組織を誤って攻撃する危険も抱える。坂口氏は、過剰な免疫反応を防ぐ「ブレーキ役」を探り続け、長年、その存在が疑問視されてきた細胞を突き止めた。これが制御性T細胞だ。研究により、制御性T細胞は自己免疫病(アレルギーやリウマチなど)の発症に深く関わることが明らかとなった。また、がんでは逆に制御性T細胞が働きすぎて免疫応答を弱め、腫瘍が免疫から逃れて増殖することも判明した。

 制御性T細胞をコントロールできれば、免疫反応を状況に応じて強化・抑制できる医療につながる。その研究成果は自己免疫疾患やアレルギー、がんといったさまざまな病気の治療開発に道を開いている。

 坂口氏は長浜市曽根町出身。びわ南小、びわ中、長浜北高を経て、京大医学部卒。大学院を中退して愛知県がんセンターの研究生になり自己免疫疾患の研究を始めた。83年に医学博士号を取得。約10年間、米国で研究を重ね、帰国後は京大再生医科学研究所教授などを経て、大阪大名誉教授・特任教授、京大名誉教授を務める。2019年には文化勲章を受章している。

家族や同級生、吉報に笑顔 受賞候補に挙がって10年

 制御性T細胞の発見で2015年にノーベル賞の登竜門と呼ばれる「ガードナー国際賞」を受賞したのを機に、アメリカの調査会社トムソン・ロイターがノーベル賞の有力候補に取り上げた。以来、母校の長浜北高に取材依頼が殺到し、このため、その年からノーベル賞発表日に同級生や関係者らが長浜北高に集ってメディアのカメラの前で吉報を待つ行事が恒例化していた。

 2020年からは会場を市役所に移し、市職員らも吉報を待つように。今年も坂口氏の兄の偉作さんや同級生ら約20人が集ってメディア関係者の前でインターネット中継を、かたずをのんで見守った。坂口氏の名前が発表されると、「オー」という歓声と拍手が沸き起こり、手を握り合ったりして喜びを爆発させた。万歳三唱やクラッカーを鳴らして快挙を祝った。

 ノーベル賞が期待されて10年。偉作さんは「ようやく取れた」と笑顔を見せ、昨年104歳で亡くなった母親が受賞を一番待ち焦がれていたと振り返った。「すぐに墓前に報告したい」などと語った。

 長浜北高の大森文子校長は「長浜北高と長浜高校が統合して10周年の節目に、このような嬉しいお知らせをいただき、本当に喜ばしいこと」と語った。

 同級生の木全正顕さんは「坂口君、ノーベル賞受賞おめでとう。君が候補者として名前が挙がって10年たった。この間、私たち同級生は毎年集まって君の受賞を待った。やっとおめでとうと言える」と声を弾ませた。

掲載日: 2025年10月10日