2023年11月16日

高月小 創立150周年

次の50年へ新たな一歩

 高月小創立150周年記念式典が11日、同校体育館で開かれ、児童や卒業生らが節目を祝った。同校を卒業したスポーツ選手もビデオメッセージを寄せた。

 同校は1873年(明治6)、「篤潤学校」の名称で開校し、明治、大正、昭和、平成、令和へと歴史を紡ぎ、卒業生は約7000人に上る。校内ではヤンマー創業者の山岡孫吉氏が子どもたちに寄贈した地球儀やグランドピアノが受け継がれている。

 式典で呉竹政彦校長は「今日の1日を心に刻み、新たな一歩を踏み出す高月小学校を皆さんでつくり、未来につなげてほしい」と語り、記念事業実行委員会の浅見勝也委員長も「ちょうど150周年を迎えたことを忘れず、しっかりと覚え、50年後の200周年を迎える時に思い出して、今日のように笑顔で一緒にお祝いしてください」と児童に話しかけていた。

 児童を代表して6年の山岡万紘さん、二宮瑠愛さんが「大人になってまたこの学校を訪れた時、学んでいるみんなの笑い声や明るく元気な声が校舎から聞こえてくる、そんな学校であってほしい」とあいさつしていた。

 サッカーJリーグ柏レイソルや浦和レッズで活躍した橋本和さん、プロ野球阪神タイガースの藤田健斗さんがビデオメッセージを寄せ、小学生時代の思い出を振り返った。藤田さんは「小学2年生から野球を始め、その時からプロになる夢があった」と語り、「好きこそものの上手なれ」との言葉を紹介して、「何事も楽しむことを大切に」と話しかけていた。

 また、児童が15年後の自身や家族に宛てた手紙を託す「メッセージ旅立ち式」があり、児童代表が手紙の入ったカプセルを宅配業者に手渡していた。

2023年11月15日

2年金賞は河井さん「竜宮の宴」

調理短大で展示会、学生の力作ずらり

 県調理短期大学校(分木町)で15日、学生が実習の成果を披露する料理展示会が開かれた。

 展示会は年1回開かれ、今年は1年生7人、2年生14人が出品し、指導員らが全体のバランスや盛り付け、季節感、配色などを審査した。

 2年生の部で金賞に輝いたのは河井真大さん(20)=長浜市垣籠町=の和食「竜宮の宴」。おとぎ話をテーマに竜宮城で振る舞われた料理を想像し、刺身の船盛り、寿司など7品を並べた。リュウグウノツカイをイメージして太刀魚を飾り付けたり、練り切りでカメを作ったり、ちらし寿司を玉手箱に詰めたりと細部にわたって工夫している。河井さんは「寿司は火を通したり、酢でしめたりして色鮮やかになるようにした。昨年は賞を獲れなかったので、今年は金賞を狙っていた。リベンジを達成できた」と話していた。

 1年生の部で金賞に輝いた三上遥さん(18)=栗東市=は「食欲の秋」のタイトルでフランス料理を出品。前菜の前に提供されるアミューズの一品に梨に見立てたライスボールを作ったほか、キノコ、サツマイモ、栗、リンゴなどの食材を使って季節感を出した。金賞受賞に「とても嬉しい。頑張っていて良かった」と笑顔を見せた。

 このほか、入賞者は次の皆さん。

 【1年】▽銀賞=笠松楽生▽銅賞=高橋嶺空【2年】▽銀賞=中川月▽銅賞=中山朝陽▽佳作=藤木萌愛、土屋心乃。

2023年11月15日

災害発生時は避難所に早変わり

南高田町にコンテナホテル 12月開業

 普段はビジネス客や観光客向けの宿泊施設、災害発生時には被災地に出動して避難所などになるコンテナホテル「HOTEL  R9  The  Yard 長浜」が12月13日、南高田町の県道沿いにオープンする。

 2720平方㍍の敷地にコンテナ39台がずらりと並ぶ。うち客室は34台。広さ13平方㍍で、ダブルルーム30室、ツインルーム4室。ベッド、ユニットバス、エアコン、冷蔵庫、電子レンジなどを備え付けている。ダブルルームの場合、料金は1人6200円から、2人8700円から。コインランドリー、自動販売機、フロントもそれぞれコンテナとなっている。

 コンテナは車輪付きで、有事の際にはけん引して被災地に移動させ、「レスキューホテル」として避難所などに使える。

 ホテルを運営するのはコンテナ建築業などを手掛ける「デベロップ」(千葉県市川市)。2011年の東日本大震災で、備蓄倉庫や復興従事者用の宿泊施設の建設などで震災後まもなく現地に入った際、被災者が避難所で不便な生活を強いられているのを目の当たりして、プライベート空間をすばやく提供できるコンテナ型の避難所の必要性を痛感。17年に宮城県石巻市で復興従事者用宿泊施設として利用されていたコンテナを栃木県佐野市に移設してホテルを開業したのを初期モデルに、翌18年からコンテナホテルを全国展開している。

 長浜での開業は東近江、甲賀に続き県内3店舗目、全国71店舗目となる。

 同社ではコンテナホテルを工業団地やインターチェンジ近くに展開し、ビジネス客を取り込んでいる。開業1年未満を除く稼働率は7〜8割という。長浜ではビジネス客をメインターゲットにしながら観光客の利用も見込んでいる。同社の担当者は「平時は出張や観光の際の宿泊施設として利用してもらい、有事の際には速やかに長浜市の防災拠点として活躍できるよう地域と連携しながらホテルを運営したい」と話している。

2023年11月13日

ドラマ終盤「散り際、見届けて!」

北川さん、吉原さんトークショー

 NHK大河ドラマ「どうする家康」でお市と茶々を演じている北川景子さんと、柴田勝家役の吉原光夫さんを招いたトークショーが11日、浅井文化ホールで開かれた。

 トークショーは長浜450年戦国フェスティバル実行委員会とNHK財団の主催で、会場を埋めた約450人のファンが撮影の裏話などを楽しんだ。

 大河ドラマは12日の放送で関ケ原合戦が描かれ、今後は松本潤さん演じる家康と、豊臣家再興を目指す茶々との対決が見どころとなる。

 北川さんはお市、茶々の2役のオファーを受けたことに「みんなが知っている歴史上の人物を独り占めするのはいいのか」と悩み「演じきれるのか」とプロデューサーに相談したことを明かした。また、お市だけでなく茶々も演じることは撮影中も伏せられ、秀吉役のムロツヨシさんにも秘密に。「キャスト発表が茶々だけなく、プレッシャーだった」と話した。

 関ケ原合戦が終わり、家康の前に立ちはだかる「ラスボス」としての存在感がいよいよ際立つ茶々。「これから勢いを増し、どんどん怖くなる」「私たちの散り際は必見。見届けてもらいたい」と話した。

 戦国時代の歴史遺産が豊富な長浜について吉原さんは「(賤ケ岳合戦で秀吉に)負けたり、憎き秀吉の場所であったりするので、来るのは嫌だった」と語って会場の笑いを誘った。

 お市との結婚に「愛はあったのか?」との質問には「織田の流れを継いでいる人とつながるのは、一度も裏切らなかった信頼ある武将として自然な流れだったのではないか。この人のためなら、織田家のためなら命を捧げよう思っていたのが柴田であり、そこには大きな愛があった」と話した。

2023年11月13日

地域とともに成長し100周年

長浜北星高で記念式典盛大に

 大正時代に長浜町立商業学校として開校した長浜北星高校・高等養護学校が今年で創立100周年を迎え、11日、同校体育館で記念式典が開かれた。

 同校は1924年(大正13)開校の長浜商業学校を起源とし、以来、課程の改編を繰り返しながら長浜南高校、長浜西高校、長浜商工高校、長浜北星高校と校名を変えてきた。卒業生は2万人を超える。

 記念式典には生徒、教員、卒業生らが出席し、100周年記念事業実行委員会の柴田正明委員長は「100年もの間、地域社会とともに成長し、進化してきたのは誇るべきもの」「100周年記念式典が未来への素晴らしいスタートになることを願う」とあいさつし、中澤成行校長は「歴史的な瞬間にいるという幸せと責任を自覚し、今日のこの日を大きな出発点として新たな歴史に向かってしっかり歩んでほしい」と生徒に呼びかけた。

 生徒会長の吉岡真さん(3年)は「今、あらためて『叡智創造』(校訓)の言葉をかみしめ、高校生活を送る中でその時代に応じた判断ができるように力を付け、地域社会に有為の人材となれるよう、努力を重ねる」と決意を語っていた。

 式典後には同校卒業生でプロラクロス選手の山田幸代さん(41)が「夢をかなえるために」をテーマに講演した。

 なお、記念事業実行委員会では100周年モニュメント「交響の樹」の設置、同校マスコットキャラクター「ポラリス」の着ぐるみ制作などのほか、今後、同窓会館「華甲会館」の改修を行う。

2023年11月9日

曳山まつり映画 クランクアップ

長浜市街地などで撮影、来秋以降公開

 長浜曳山まつりを題材にした劇場用長編映画「長浜(仮)」の撮影が6日、クランクアップを迎えた。山組関係者やエキストラを交えて裸参り、線香番、曳山舞台での子ども歌舞伎奉納シーンなどの撮影を終え、谷口未央監督(44)は「無事に撮影が終わり、ホッとしている。これから編集、仕上げに入り、協力していただいた皆さんになるべく早く披露できるようにしたい」と話している。

 谷口監督は長浜曳山まつりのユネスコ無形文化遺産登録を機に、2016年から曳山まつりの取材や記録撮影を始めた。映画は亡き父の故郷の長浜に初めて訪れた少年・伊吹と、成長と共に自身の性に異和を感じる少女・花との出会い、曳山まつりを通じた2人の成長などを描き、国際映画祭での上映を目指している。

 撮影は10月下旬から本格化し、11月上旬の3連休には、曳山博物館広場に出した鳳凰山の舞台で伊吹役の荘司亜虎さん(12)=スターダストプロモーション=が衣装と化粧を施して歌舞伎披露の撮影に臨んだ。また、鳳凰山の詰め所の祝町自治会館では曳山まつりの成功を祈願する裸参り、子ども歌舞伎の仕上がり具合を確認する線香番の撮影も行われ、各山組の若衆や長浜曳山祭總當番の役員らも出演した。

 このほか、市街地の飲食店や平方町の高架下、高月町西野の湖岸などでも撮影が行われた。

 今後、編集作業を進め、整音や画像処理などの仕上げの後、国際映画祭へのエントリーを目指す。早くても来年秋以降の公開になるという。谷口監督は「皆さんの協力がなければ撮れない映画。エキストラとして協力してくれた方、撮影の際に食事を用意してくれた方、撮影現場での人止めなど、たくさんの方に協力していただき、感謝している。これから、しっかりと見てもらえるような映画に仕上げるために、大変な作業が待っている。曳山まつりをテーマにする責任を感じながら作業を進めたい」と話している。

 なお、コルミオ・フィルムは映画制作にあたり、クラウドファンディング(CF)で撮影資金を募り、9日現在で100人から219万4000円の資金が集まっている。CFは10日まで。目標金額は370万円。返礼品は完成披露試写会招待、エンドロールへの個人名、企業名記載など。詳細はhttps://motion-gallery.net/projects/nagahama。

2023年11月6日

びわ南小150周年、式典盛大に

坂口さん講演やミュージカルで節目祝う

 今年で創立150周年を迎えたびわ南小学校で4日、記念式典が開かれ、児童、保護者、卒業生、地域住民ら約400人が節目を祝った。同校の卒業生で毎年ノーベル賞候補にあがっている大阪大学特任教授・坂口志文さんの講演や、地域一体となって作り上げたオリジナルミュージカルの上演などがあった。

 びわ南小は1873年(明治6)から76年(明治9)にかけ、7地区に「巴水」「維新」「博道」「曽根」「道明」「望湖」「川道」の各学校が開設したのが起源。その後の統廃合を経て93年(明治26)にびわ南小学校の前身となる大郷高等小学校が誕生した。

 記念式典で森悦夫校長は「この素晴らしい歴史のある学校で学べることに誇りと自信を持ってください。校訓の『進取創造』という言葉に込められた地域の方々の願いに応え、将来、社会に貢献できる人に成長してほしい」などと児童に語りかけた。

 児童代表の中川智揮さん(6年)は「この学校がさらに歴史を重ね、いつまでもこの場にあり続け、みんなの笑顔があふれ、明るい声が響く、素敵な学校であるように心から願います」などとあいさつしていた。

 「夢をもって」をテーマに記念講演を行った坂口さんは、ウイルスやワクチン、抗体などの仕組みについて分かりやすく解説した上、ワクチン接種の普及で天然痘などの伝染病を根絶できたことを紹介した。自身が発見した「制御性T細胞」についてはがん治療につなげる研究に取り組んでいることを解説していた。

 児童には「若い皆さんに期待するのは夢を持つこと。しかし、夢を実現するには時間がかかる。運動して体を鍛えること、辛抱して勉強することが大切。世の中には勉強すればできることがたくさんある」と語り、「体と頭を鍛え、、夢を持ち、将来活躍してほしい」と呼びかけていた。

 記念事業として創作ミュージカル「時とともに響け!〜奏とピアノ物語」の上演もあった。1923年(大正12)、地域住民の募金によって同校に寄贈され、児童に親しまれてきたドイツ・フォイリッヒ社製のグランドピアノにまつわる物語。児童や教員、住民らでつくる「劇団フォイリッヒ」が大正、昭和、平成と、ピアノと一緒にタイムトラベルして同校の歴史を体験する物語を、歌やダンスを交えて披露していた。

100年ピアノ保存へ クラウドファンディング

 びわ南小に伝わるドイツ・フォイリッヒ社製のグランドピアノを保存のため、有志で組織する実行委員会がクラウドファンディング(CF)で修理費用やコンサート費用を募っている。

 住民の募金によって学校に寄贈されたピアノは今年でちょうど100年。実行委では親しみを込めて「100年ピアノ」と呼び、来年11月にコンサート「フォイリッヒのつどい」を計画している。

 目標金額は100万円で、今後10年間分のピアノの調律・修繕費、つどい公演費などに充てる。CFは「キャンプファイヤー」(https://tinyurl.com/4h9382fx)で、来年1月19日まで実施している。

2023年10月31日

ブロンズさん市長表敬訪問

米出身、ロータリー交換留学で虎高へ

 ロータリークラブの交換留学プログラムで長浜市内にホームステイしながら虎姫高校に通うアメリカ人のブロンズ・エド・アーロンさん(17)が30日、ホストクラブの長浜ロータリークラブ(國友隆房会長)のメンバー5人とともに浅見宣義市長を表敬訪問した。

 ブロンズさんはコロラド州カーボンデール出身で、今年8月から来年7月まで虎姫高校に留学している。アメリカで柔術に打ち込む格闘技好きで、留学中は武徳殿(朝日町)で柔道、HARVEST(米原市醒井)でグラップリングなどの総合格闘技に取り組んでいる。

 5カ月前から日本語の勉強を始め、この日の表敬訪問では簡単な日本語で受け答え。格闘技好きと聞かされた浅見市長は「日本の文化を知るために是非、相撲にチャレンジしてほしい」などと話しかけた。

 ブロンズさんは浅見市長に「市長として長浜で何をしたいですか」などと質問。人口減少対策として「長浜にはブラジル人やペルー人が多い。もっと外国人を増やしてはどうですか」と提案し、「賛否があり、難しい問題」と浅見市長をタジタジさせる場面もあった。

 これまでにイスラエル、ケニア、コスタリカ、メキシコを訪れたことがあるブロンズさん。日本では語学や格闘技に打ち込むとともに、東京や広島など各地を訪れたいと話している。

 浅見市長は「長浜は勉強になる街。長浜を楽しんで、良いところを吸収してアメリカに持ち帰ってほしい」と話しかけていた。

2023年10月26日

脂乗り十分!ビワトロマス

バイオ大開発の餌で養殖、市場で出荷

 長浜バイオ大学の研究室が開発した餌で育てた養殖ビワマスが24日、長浜地方卸売市場で出荷された。酒かすやおから、商品化できない養殖アユなどを混合、醗酵させて餌の栄養価を高めたことで脂乗りは十分。バイオ大は「ビワトロマス」のブランド名で流通させたい考えで、養殖に協力した「びわ鮎センター」の川瀬利弥社長(67)は「『ビワトロマス』として胸を張って出せる」と太鼓判を押している。

 「琵琶湖の宝石」とも呼ばれるビワマスはマグロのトロに匹敵する脂が魅力の一つ。ただ、天然モノは漁獲量が安定しない上、脂乗りも季節や個体によって差がある。安定した出荷を目指して県内では10年程前から養殖が本格化しているが、餌代などのコストが課題となり、養殖業から撤退した業者もいる。

 長浜バイオ大アニマルバイオサイエンス学科の河内浩行教授の食品分子機能学研究室は2011年ごろから低コスト、高栄養価の餌の開発に取り組んでいる。目標はブランド名「ビワトロマス」に見合う脂乗り。過去にはブラックバスのミンチを混ぜた餌を開発して話題を呼んだが、ブラックバスの安定した調達がネックとなっていた。

 今回、びわ鮎センターの養殖池を4区画に分け、研究室が開発した3種類の餌と既存の餌1種類を与えた。研究室の学生が餌を手作りして毎日餌やりを行い、ビワマスの喰い付き、生育状態などを比較、分析してきた。7月には学内で食味試験を行った。

 そこで採用したのは食品残渣の酒かすやおからに商品化できないアユ、ビワマスのアラを加えて醗酵させた餌。廃棄されるものを再利用したことで、餌代も従来の半額から3分の1程度に収まったという。

 24日朝、バイオ大の学生らが市場に魚を買い付けに来た飲食店経営者らにビワマスの刺身を試食してもらった。日本料理店「塩梅」を経営する中嶋利直さんは「臭みがなく美味しい。身も分厚い。バイオ大の学生が餌を開発したというストーリー性もあり、お客さんに紹介しやすい」と話していた。

 河内教授は「大学での食味試験でも反応が良かった。安い餌を開発したことで、養殖業から撤退した業者を呼び戻すことができれば」と期待している。

 川瀬社長は「バイオ大は10年以上、餌の研究を続けているが、今回の醗酵させた餌はこれまでの研究の集大成と感じている。脂乗りが良く『ビワトロマス』とPRできることを進言した」と評価し、「我々養殖業者が直面しているのは餌の高騰。コストダウンが図れているのは大きな魅力。課題は餌を手作りする労力がどの程度のコストになるか」と話していた。

 バイオ大のビワマスは1週間かけ計300匹を出荷する。

2023年10月24日

「姉川クラゲ」食文化復活へ

龍谷大など、米原市小泉で試験栽培

 姉川上流で採取され、戦中・戦後は地域の食卓を飾っていた藻類の一種「姉川クラゲ」の食文化発信と特産品化を目指し、龍谷大など8者で結成する普及推進協議会が米原市小泉で試験栽培を始めた。

 姉川クラゲは一般的に「イシクラゲ」と呼ばれ、陸上に繁殖する藻類。ワカメのような見た目で、庭の片隅や駐車場、学校のグラウンドなどさまざまな場所で見かける。姉川上流では石灰成分を含む湧水で自生環境が整っており、戦中・戦後は酢の物や天ぷら、みそ汁の具などとして地域住民に食されていたという。

 その研究に打ち込んでいるのは龍谷大学農学部の玉井鉄宗講師(56)=植物栄養学。玉井講師によると、イシクラゲは高温や低温、真空、宇宙線など過酷な環境でも死ぬことがないうえ、大気中の窒素を取り込んで自ら栄養を作り出せるなど、驚きの生命力を持つ。例えば、乾燥状態では無代謝で休眠し、水を与えることで休眠から回復し活動を再開する。遠い未来のテラフォーミング(惑星地球化)構想でも最初に惑星に送り込んで土壌改良する候補に想定されているという。

 その「超環境ストレス耐性」を持つイシクラゲは、抗ガン、抗ウイルス、抗酸化、紫外線吸収などの機能性成分を多数含むことも明らかになっており、製薬会社などもサプリメントや医薬品、化粧品の原料などとして注目している。

 2018年から姉川クラゲを研究している玉井講師は研究室での栽培に成功している。食文化復活と地域振興を目指し、地元の小泉区や県、市、製薬会社などに呼びかけ、8者で姉川クラゲ普及推進協議会を結成して本格的な試験栽培に乗り出した。

 姉川クラゲを活用した地域活性化を応援する県は、国の農山漁村振興交付金を活用して事業費を捻出。3年間で最大3000万円活用する。

 栽培は小泉の姉川沿いの休耕田にビニルハウス1棟を建てて実施。湧水と紫外線のみで栽培し、肥料は用いない。散水、点灯は自動制御し、手間がかかることはないという。

 23日には研究室の学生や地域住民が人工芝の上にイシクラゲの断片を並べる作業を行った。試験栽培は3年かけて行い、玉井講師は「実験室レベルではうまく栽培できたが、屋外は初めて。うまくいけば貴重な姉川クラゲを使って栽培したい」と話している。いぶきファーム代表で同協議会の谷口隆一会長(67)は「小泉は石灰岩の湧水が無尽蔵にある。石灰を好む姉川クラゲを育てる環境に適している。3年間の試験で絶対に成功させたい」と話している。

2023年10月17日

無施錠自転車、すぐに盗むぞ!

県警公認「ドロボー仮面」、長浜農高で防犯啓発

 長浜署管内での自転車窃盗が前年の倍近く増えているとして、県警生活安全企画課の公認キャラクター「ドロボー仮面」が16日、初めて長浜署管内に入り、長浜農業高校の生徒と一緒に防犯啓発に取り組んだ。

 ドロボー仮面はマスクに唐草模様のマントを付けた姿。2019年に誕生し「ドロボー目線」での防犯活動に取り組んでいる。長浜署管内では初めての出番となった。

 この日は同校を訪れ生徒有志6人に県内の自転車窃盗の現状や闇バイトで若者が狙われている実態を説明した後、「自転車盗多発中」「NO!闇バイト」と題したチラシを下校中の生徒に配り、「鍵がかかっていない自転車はすぐに盗むぞ。だが、ツーロック(二重施錠)だと俺様は諦めるぞ」と話しかけていた。

 防犯啓発に参加した中嶋花凛さんと山口芽咲さん(いずれも1年)は「チラシを見てもらうことで、自転車盗難の被害が少なくなれば」「闇バイトは知り合いがツイッター(現・X)で『稼げる』と誘われ、巻き込まれたという話を聞いた。怖いので、無くなってほしい」と話していた。

 県警のまとめによると、1月から9月末までの県内の自転車盗は1038件、前年同期比で22%増加し、被害にあった自転車の7割が無施錠だった。

 長浜署管内では79件発生し、前年同期比88%増。増加率は県内12署で最も高かった。8割が無施錠だった。ドロボー仮面は「アパートやマンションは油断して無施錠の自転車が多い。若者もあまり鍵をかけない。俺様はいつでも狙っているぞ」と話していた。

2023年10月16日

和装で散策、秋の長浜満喫

市街地で着物園遊会、曳山巡行も

 和装で市街地の散策を楽しむ「長浜きもの大園遊会」が14日開かれ、着物姿の283人が商店街でショッピングや茶席の体験などを楽しんだ。

 長浜きもの大園遊会は、和装産業の振興と商店街の活性化を目的に1984年に始まり、今年で37回目を迎えた。大通寺では着物ファッションショーや滋賀出身のモデル高橋ユウさんのトークショーなどがあり、高級着物や宿泊券などが当たる抽選会もあった。

 安浄寺で表千家流の茶席を楽しんだ千田玲菜さん(20)=田川町=と伊賀並優羽さん(20)=大路町=は母親が着ていた振り袖で参加。「みんなが良い着物だと言ってくれて嬉しい。洋服の時と違って背筋が伸びる気がする」と話していた。

 市街地ではこの日、曳山博物館に収蔵する曳山を入れ替える「曳山交替式」もあり、若衆が息を合わせて曳山を引いていた。

◇      ◇

 長浜きもの大園遊会はかつて1000人もの若い女性が参加し「日本一の着物イベント」をうたっていたが、近年は少子化に伴って参加者が減少。このため、昨年からは参加対象者を「振袖の16歳以上の女性」から「着物で参加できる方」へと変更し、老若男女が参加できるイベントに改めていた。

 今年の参加者は昨年の624人の半分を割り込み、中でも振袖での参加者はわずか83人。1000人もの振袖女性で華やいだ時代と比べると隔世の感が出ていた。

 

2023年10月12日

駆除鹿の命、無駄なく余すことなく

永井さん、ペット用ジャーキーと革製品を開発

 駆除されたシカを地域資源として有効活用しようと、木之本町木之本の永井友恵さん(54)がペット用ジャーキーと革製品の開発、販売に挑戦。「シカの命を無駄にせず、余すことなく使いたい」と持続可能な事業化を目指している。

 農作物の獣害や森林荒廃の一因であるシカは駆除の対象となっている。ただ、駆除後に「ジビエ」などとして利用されているシカは一部に限られ、多くが廃棄されているのが実情。

 永井さんはシカを活用した商品開発で需要を増やせれば、駆除されたシカの廃棄が減り命を無駄にすることがないと、肉と皮の活用を模索した。

 シカ肉に注目したきっかけは家族として迎え入れている4頭の保護犬の存在がある。保護犬は飼い主に捨てられたり、虐待を受けたりした経験から心と身体に問題を抱えていることが多いという。永井さんが市販のシカ肉ジャーキーを与えたところ食いつきが良かったことから、知り合いの猟師から直接シカ肉を購入して食べさせるように。「今ではどの犬も見違えるように、元気に、愛らしく生まれ変わった」と話す。

 「高たんぱくで、鉄分、ビタミン、ミネラルを多く含み、脂肪は牛赤身肉の5分の1とも言われている。野山を駆け回り、その恵みを食べ生きてきたシカの肉は生命の力を秘めた天然の無添加食材」と絶賛する永井さん。「もっと多くの人に身近に感じられる商品として届けしたい」と、16年勤めた会社を辞め、今年2月シカ肉や革製品を開発、製造、販売する個人事業「MyGo」を立ち上げた。

 犬、猫などのペット用ジャーキーは福井県小浜市の猟師・大場明さんから買い付けたシカ肉に相性の良いベリーを合わせて作った。「愛犬の喜ぶ顔と健康を通して、シカ肉の良さを感じていただければ」と話す。

 革製品はバッグ、サコッシュ、コースターがあり、小浜市の革工芸作家・木崎亨さんに加工を依頼して製作したもの。軽くてしなやかで耐久性があるのが特徴という。

 永井さんは「狩猟は単に命を奪うだけでなく、自然との関係を深め、命の循環を感じる貴重な経験。ジャーキーや革製品からシカを身近に感じてもらえれば」と話している。

 なお、現在、獣害駆除されたシカの購入費や皮の加工費、フード乾燥機の導入費用などを募るクラウドファンディング(CF)を実施している。詳細はCFサイト「キャンプファイヤー」(https://tinyurl.com/yk36c3dn)から。

2023年10月11日

近江学びあいステーションに「トゥクトゥク」

イベント告知に活用、運転体験も

 米原市顔戸の近江学びあいステーションに東南アジアで走っている三輪自動車「トゥクトゥク」がお目見えし、来館者の人気を集めている。市内で走らせて地域のイベント告知や企業の宣伝用に活用するほか、希望者は運転や乗車も体験できる。

 同館の山田裕美館長(68)が長浜市内の宿泊施設が走らせている光景を見て、「米原でも走らせたら子どもたちが喜ぶはず」と導入を決めた。同館を運営するNPO法人おうみ地域人権・文化・スポーツ振興会の村田輝男理事長(71)、副理事長の山田館長、鹿取宏美理事(59)の3人が地域への恩返しの思いを込めて購入、寄付した。

 同館に導入されたトゥクトゥクは4人乗り。車体が青色、前方上部が黄色で、周囲に紫色のイルミネーションが装着されている。最高速度は80㌔、普通免許があれば誰でも運転できる。

 同館で実施している放課後児童クラブの名称にちなんで「お家笑里号(おかえりごう)」と名付け、利用する子どもたちを乗せて楽しませている。公道も走行できるため、地域や市のイベント告知のポスターを車体に掲示して市内を走らせる計画だ。企業の宣伝の場合は有料となる。

 事前予約があれば、無料で乗車や運転体験ができる。山田館長は「親子で乗車でき、どこでも走行できる。これからも各所で走らせて、子どもたちが楽しんでくれたらうれしい」と笑顔を見せていた。問い合わせは同館℡(52)3483。

2023年10月10日

甲冑姿の秀吉座像、豊国神社に

長浜開町450年で設置 浄財広く募る

 羽柴秀吉が長浜城と城下町を整備して450年の節目を記念して、豊国神社の境内に甲冑姿の若き秀吉の座像が設置された。

 秀吉を神様として祀っている豊国神社に秀吉を顕彰する像がなかったことから、氏子らでつくる「長浜開町450年豊国神社実行委員会」(谷口正臣会長)が秀吉と長浜の町の軌跡を後世に語り継ごうと、そのシンボルとなる秀吉像を設置した。

 座像は高さ約1・2㍍のブロンズ製で台座を含めると約2・4㍍。秀吉が長浜を治めた37歳の頃をイメージし、真っすぐと前を見据えた凛々しい表情。秀吉は関白や太閤の姿は知られているが、甲冑姿は全国的にも珍しい。

 当時の肖像画は残っていないため、東大阪大短期大学部・平田敦司教授が名古屋市秀吉清正記念館の肖像画(1721年作)や秀吉遺品とされる甲冑を参考に原型を制作し、太田浩司さん(淡海歴史文化研究所所長)、豊国神社の湯本崇彦宮司が監修した。

 7日、関係者を交えて除幕式があり、ブロンズ像がお披露目された。湯本宮司は「秀吉公をたたえる湖北、長浜のシンボルができた。豊国神社を参拝して長浜の歴史を感じていただければ」と話している。

 秀吉像の設置は同実行委員会の企画する450年事業の一環で、このほかにも石碑の建立などを計画している。実行委は450年事業にあたって広く浄財を募っており、現在はクラウドファンディングも実施中。詳細はhttps://rescuex.jp/project/99857から。

2023年10月5日

タンスの着物、小粋なシャツに

「仕立屋と職人」が新サービス開始

 ライフスタイルの変化で着る機会が激減した着物を小粋なシャツに仕立て直すサービスを、小谷上山田町のデザイン・アパレル会社「仕立屋と職人」が始めた。

 同社は元地域おこし協力隊員のワタナベユカリさん(35)と石井挙之(たかゆき)さん(37)が立ち上げ、地域のものづくり文化や職人技術の発掘、継承、発信などに取り組んでいる。

 その活動の中で、かつて嫁入り道具として嫁ぎ先に持っていった着物が着る機会がないままタンスに眠り、買い取り業者に依頼しても値段が付かないものも多いという現状を知った。「タンスに眠ったまま行き先を失った着物たちは時間が過ぎていくのを待つだけ」と、デザインを加えて日常で楽しめるシャツに仕立て直すサービスを考案した。

 サービスは着なくなった着物を引き取り、1着ずつ分解して異なる2〜3着の生地を縫い合わせて新たなシャツを仕立てるもの。同社のホームページにある「着物受継ぎ相談フォーム」で着物の譲渡を受け付け、対価として同社のECサイトで使えるクーポンを発行する。着物を分解して使うためシミや穴あきなど傷んでいる部分があっても引き取るが、着物の状態によっては査定がゼロとなる場合もある。

 ブランド名は「シャナリシャツ」。タンスの肥やしが生き返る、廻る着物の小粋なシャツ—とPRし、2人は「新しいより懐かしい。日本人としてルーツを辿るようなブランドをつくっていきたい」と思いを込めている。

 シャナリシャツは譲渡された着物を1着ずつ分解して組み立てているため1枚として同じデザインは存在しない。価格は2万2000円から。詳細は「仕立屋と職人」のホームページ(https://shitateya-to-shokunin.jp/)から。