家倉さんら小谷美濃山でハンノキ植樹

田んぼのあぜにハンノキを植えた家倉さん(中央)ら(吉田一郎さん撮影)

湖北の原風景を次世代に

 かつて湖北地域の水田のあぜに多く見られたハンノキ(畔(はん)の木)のある風景を取り戻そうと、湖北町丁野の農家・家倉敬和さん(43)が14日、小谷美濃山町の田んぼのあぜにハンノキの幼木を植えた。「湖北の原風景を次世代につなげてゆければ」と思いを込めている。

 ハンノキは収穫した稲を掛けて干すための「はさ木」の役割を担った。木に水平に取り付けた竹に刈り取ったばかりの稲を干す風景は、湖北の秋の風物詩だった。また、伐採した枝は貴重な燃料として生活を支えた。しかし、農業近代化に伴うほ場整備で伐採され、今では見ることはない。

 湖北地域の移り行く姿を写真に収め続けている吉田一郎さん(82)=湖北アーカイブ研究所所長=の写真展「畔の木の詩」(昨年11月〜今年2月、長浜市内の複数カ所で開催)を通じて、ハンノキを知った家倉さん。その風景を復活させようと幼木の入手を吉田さんに相談し、吉田さんが写真展のトークショーで参加者にハンノキの情報提供を呼びかけたところ、鳥羽上町の北村與作さん(76)が横山のふもとの耕作放棄地に幼木があるのを見つけた。

 今月6日、家倉さん、北村さん、吉田さんらで高さ約3㍍の幼木12本を掘り起こした。14日の植樹はあぜの幅が十分に確保できる場所を探し、小谷美濃山町にたどり着いた。家倉さんは「ほ場整備では収量を最大にするため、あぜの幅は30〜40㌢ほどの狭さになっている。植えられる場所は限られている」と話す。

 4人で手分けして1時間半ほどで植え終え、吉田さんは時折、スコップからカメラに持ち替えて記録写真を撮っていた。

 農家の5代目として農業法人「お米の家倉」を設立し、稲刈りやはさ掛けなどの体験イベントで農業の魅力を発信している家倉さん。早ければ来年秋の収穫時にハンノキを使ったはさ掛け体験会を実現したい考えで、「ハンノキがある原風景を復活させたいと思っている人が近くにいてくれたおかげで、復活への一歩を踏み出せた。世代を越えて湖北の原風景を次世代につなげてゆきたい」と話している。

 吉田さんは「湖北の原風景を大事にしたいという農業者が出てきてくれたのは嬉しい。ハンノキの成長を2年後、5年後、10年後と、写真に記録し続けることが私の生きがいにもなります」と話していた。

掲載日: 2024年03月15日