2022年7月27日

加工用トマト収穫最盛期

「稼げる農業」目指し、2.5㌶で実証栽培

 「稼げる農業」の実現を目指し、長浜市の呼びかけで加工用トマトの栽培に取り組んでいる市内の農家で収穫作業が最盛期を迎えている。専用機械導入で作業の省力化を図ったうえ販路先企業と全量買い取りの契約を結び、市は「転作作物として農業経営の安定した柱のひとつになる」と期待を込めている。

 市内では米作りが盛んに行われているが、米の消費落ち込みに伴う米価下落が農業経営の課題となっている。このため、市は「稼げる農業」を目指して転作作物の実証栽培を農家の協力で進め、小谷城スマートインターチェンジ周辺での農業関連産業の振興も視野に入れている。

 そこで目を付けたのが加工用トマトの栽培。市が販路先の企業とのマッチングを支援した結果、カゴメ、ヤンマーマルシェの2社との連携が実現した。カゴメからは栽培方法や技術の提供、ヤンマーマルシェからは栽培支援を受けている。また、事前に買い取り価格を決定し、収穫の全量をカゴメが買い取る契約栽培となっている。

 昨年は生産者1軒が0.3㌶で栽培し、今年は6軒が計2.5㌶で取り組んでいる。

 栽培はカゴメが開発した苗を用いた。トマトはハウスで支柱を立て栽培するのが一般的だが、同社が開発した加工用トマトは露地で、支柱無しで栽培でき、転作作物に最適という。さらに、実証栽培にあたり、加工用トマト専用の機械の無償貸与を受けている。

 収穫の最盛期を迎え、7月下旬から作業が始まった。26日には湖国農産(脇坂良平代表)の湖北町八日市の畑で、生産者が真っ赤に実った小型のトマトを機械で次々と収穫していた。トマトはジュースなどに加工される。

 生産者は機械による省力化と収量に手応えを感じており、市農林政策課の尾崎栄治課長は「農業経営が不安視される中、加工用トマトの栽培は、販路先と買取価格が確定していることから、水田転作の作物として農業経営の安定した柱のひとつになる」と話し、今後、産地化を目指すことで長浜産のブランド力と取引価格を高め、生産者の所得向上につなげたい考え。

2022年7月25日

長浜市議選開票結果、新議員22人決まる

 長浜市議選は24日投開票され、新議員22人が決まった。当選者は現職12人、新人9人、元職1人。投票率は48.66%で前回を2.12ポイント上回った。

 トップ当選は2月の市長選にも立候補した元職・中川亮さん(39)で、知名度を生かしての圧勝だった。新人候補のトップ当選は歌手の北川陽大さん(44)。事務所で支援者と一緒に万歳をして喜びを分かち合った(写真上)。子育て支援やフードバンク活動などに取り組んできた新人の村山さおりさん(50)は、女性中心の手作り選挙で、20番目に滑り込んだ。事務所では村山さんと支援者に笑顔があふれた(写真下)。

 

                        24時15分確定 定数22-28

 

当        3365        中川  亮(39)無元

当        2563        松本 長治(55)無現

当        2369        鋒山 紀子(65)公現

当        2326        北川 陽大(44)無新

当        2266        押谷 正春(67)無新

当        2188        大橋 延行(57)無新

当        2115        矢守 昭男(54)無現

当        1930        田中 真浩(60)無新

当        1817        竹本 直隆(66)無現

当        1797        加納 義之(62)無新

当        1706        多賀 修平(67)無現

当        1687        伊藤喜久雄(66)無現

当        1671        中川  勇(71)無現

当        1554        押谷與茂嗣(74)無現

当        1485        千田 貞之(69)無現

当        1367        岩川 信子(63)無新

当        1353        高山  亨(67)共現

当        1348        藤井  登(64)無現

当        1342        橋本 典子(68)共新

当        1300        村山さおり(50)無新

当        1287        杉本 英一(70)無新

当        1262        鬼頭 明男(48)共現

           1165        斉藤 佳伸(70)共現

           1156        西尾 孝之(64)無現

           1050        山崎 正直(60)無現

             608        高木 卓宏(42)無新

             560        丹生 隆明(71)無現

             541        西川 明美(66)無新

          

                                                                       ※按分票の小数点以下は切り捨て

 

 

2022年7月22日

湖北のキッカー インターハイへ

草津東高サッカー 3人がベンチ入り

 草津東高サッカー部が24日に徳島県内で開幕する全国高校総合体育大会(インターハイ)に出場。湖北地域からは3人がベンチ入りし、1回戦、強豪の市立船橋(千葉県)と対戦する。

 ベンチ入りするのは高月中出身の西野勇太選手(3年)=GK、森優斗選手(3年)=FW、柏原中出身の伊藤翔汰選手(3年)=MF。西野、森両選手は中学時代、クラブチーム「FostaFC」で、伊藤選手は「MIOびわこ滋賀」で活躍した。

 草津東は6月の県予選決勝で近江高を0—0からのPK戦(4—2)で破り、3大会ぶり14回目の出場を決めた。予選全5試合を無失点と堅守を誇り、西野選手は190㌢の長身を生かしてPK戦でシュートを防ぐ活躍。攻撃は伊藤選手らMFがパスワークから好機を生み、俊足の森選手らFWの2トップが敵陣深く攻め入った。

 インターハイでの目標を「ベスト8以上」と語る3人。初戦の市立船橋戦は24日午前9時15分から鳴門・大塚スポーツパーク球技場で。西野選手は「体格を生かした積極的なプレーで無失点に抑える」、森選手は「県予選では守備に助けてもらうことが多かった。攻撃陣が守備陣を助けられるプレーをしたい」、伊藤選手は「相手はプレミアリーグ所属の格上だが、臆することなくチャレンジしたい」と抱負を語っている。

 

島根代表に びわ中出身・塚田選手

 

 びわ中出身の塚田喜心選手(17)は島根県代表の立正大淞南高から出場し、ゴールキーパーとして全国のピッチを踏む。

 塚田選手は中学時代にクラブチーム「MIOびわこ滋賀」で活動し、「全国から集まる選手と一緒に寮生活でサッカーに打ち込みたい」とチームの先輩も活躍していた同校へ進学した。

 同校のサッカー部は強豪で知られ、部員は150人を数える。熾烈なレギュラー争いの中、シュートのセーブ力と、ディフェンスへの的確なコーチング(指示)が評価され、今年4月に正ゴールキーパーのポジションを手に入れた。6月の島根県大会での失点は決勝戦の1点のみだったが、「試合終了間際の失点だった。チームが最後まで集中できなかった」と振り返る。

 インターハイを目前に控え、「スタメンで2年は1人だけ。多くの先輩がいる中で、自分が出させてもらう。先輩の思いを背負い、恥じないプレーをしたい」と抱負を語っている。

 初戦は24日午前11時半から鳴門・大塚スポーツパーク球技場で聖和学園(宮城代表)と。

 

2022年7月17日

長浜市議選告示 定数22に28人立候補

 任期満了に伴う長浜市議選が17日告示され、定数22に対して28人が立候補を届け出た(17日午前10時現在)。24日投開票される。

 立候補者の内訳は現職16人、新人11人、元職1人。男性23人、女性5人。党派別では共産党4人、公明党1人、無所属23人となっている。

 期日前投票は18日から23日まで市役所本庁、北部振興局、支所、イオン長浜店で。時間は午前8時半から午後8時まで(イオン長浜店は午前10時から)。当日投票は24日、市内37カ所で。7月16日現在の有権者数は9万4713人。

 

長浜市議選立候補者(28人/定数22)

 

藤井  登(64)無現 三ツ矢元町

西川 明美(66)無新 大寺町

多賀 修平(67)無現 唐国町

押谷 正春(67)無新 川道町

竹本 直隆(66)無現 湖北町尾上

松本 長治(55)無現 木之本町杉野

中川  勇(71)無現 相撲町

杉本 英一(70)無新 十里町

田中 真浩(60)無新 余呉町国安

押谷與茂嗣(74)無現 野瀬町

橋本 典子(68)共新 布勢町

加納 義之(62)無新 加納町

北川 陽大(44)無新 祇園町

山崎 正直(60)無現 末広町

高木 卓宏(42)無新 宮司町

斉藤 佳伸(70)共現 早崎町

村山さおり(50)無新 千草町

鬼頭 明男(48)共現 湖北町速水

岩川 信子(63)無新 公園町

矢守 昭男(54)無現 北野町

丹生 隆明(71)無現 余呉町上丹生

中川  亮(39)無元 高月町高月

鋒山 紀子(65)公現 加納町

高山  亨(67)共現 中山町

大橋 延行(57)無新 西浅井町大浦

伊藤喜久雄(66)無現 加田町

西尾 孝之(64)無現 湖北高田町

千田 貞之(69)無現 木之本町木之本

 

※敬称略。党派の略称は共=共産党、公=公明党、無=無所属。現=現職、新=新人、元=元職。丸かっこ内は投票日の年齢

2022年7月13日

飯田さんルワンダで情操教育

青年海外協力隊 8月から

 口分田町の教員・飯田萌さん(27)がJICAの青年海外協力隊員として8月からアフリカのルワンダに赴任することになり、12日、浅見宣義市長らを表敬訪問して出発を報告した。

 飯田さんは小学6年生の時、総合学習で学校に行けない子どもたちが世界にいることを知り、国際ボランティアに興味を持った。大学生時代には単身、ネパールやカンボジアを訪れ、孤児施設でのボランティア活動に取り組んだ。大学卒業後は湯田小学校で教員を務め、子どもたちに外国のことを伝えたいと隊員に応募した。

 ルワンダは1990〜94年の民族対立による激しい内戦で100万人が犠牲となった暗い過去を持つが、現在はICT国家として「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの急成長を遂げている。飯田さんは同国南部のニャンザ郡の私立教育機関に赴任し、小学生に音楽や図工の指導など情操教育に携わる。2024年3月に帰国予定。

 表敬訪問で飯田さんは「教員として行くので長浜の小学校とルワンダの子どもたちをつなげ、滋賀、長浜の文化をルワンダで伝えたい」と抱負を語り、浅見市長は「交流の輪が広がるきっかけをつくってもらえれば」、織田恭淳教育長は「向こうの子どもたちに楽しい夢や目標を持たせてほしい」と語りかけていた。

 裁縫を趣味とする飯田さんは「カラフルなアフリカ布を使ってモノ作りにも挑戦したい」と語ったほか、長浜市少年少女合唱団「輝らりキッズ」で9年間活動した経験を生かして「現地では子どもたちと一緒に歌いたい」とルワンダに思いを馳せていた。

2022年7月12日

県大会6連覇 インターハイなど9人出場

長浜北高ソフトテニス  市長を表敬訪問

 長浜北高の女子ソフトテニス部が29日から愛媛県今治市で開かれる全国高校総体(インターハイ)に団体、個人の部両方で出場する。

 同部は6月に長浜市内で開かれた県春季大会で、団体戦で優勝し、個人戦でも1位、2位、5位に輝いた。

 インターハイの個人戦に出場するのは、県大会優勝の吉田瞭子(3)・三國ここ菜(3)ペア、準優勝の三國そそ来(2)・福島陽向(2)ペア、5位の川島若奈(3)・藤田咲良(3)ペアの3組。団体戦には北川瑞希(3)・長田悠(2)ペアを加えた4組が出場する。21日から大阪府岸和田市で開かれる近畿大会にも出場する。

 同校は2025年に長浜市内で開催される国民スポーツ大会ソフトテニス競技の強化拠点高校に指定され、2020年の県民体育大会、秋季大会、21年の春、夏、秋季大会、そして今回の春季大会と、団体、個人で6連覇を果たしている。

 このほか、男子ソフトテニス部の玉置毅斗さん(2年)は国体少年男子滋賀予選会で1位に輝き、8月の国体近畿ブロック大会に出場する。

 11日、選手9人が長浜市の浅見宣義市長を表敬訪問し、選手それぞれが「私たちらしい元気で明るいプレーができるよう精一杯頑張る。応援をお願いします」「インターハイという最高の舞台で自分たちが今までやってきたことを最大限発揮し、楽しく笑顔で終われるようにしたい」「高校生活最後の大会となる。自分が最後まで出し切れたと思うような試合をできように頑張る」などと抱負を語っていた。

 浅見市長は「インターハイ出場は高校生の夢。全力を尽くして頑張ってほしい」と語りかけていた。

2022年6月29日

シェリー酒に魅せられて

中川さん元浜町にバル開店  狩猟でジビエも

 スペイン・アンダルシア地方で作られる「シェリー酒」。辛口から極甘口まで幅広い味わいを楽しめるのが魅力だが、日本での知名度は決して高くない。そんなシェリー酒に魅せられた女性が5月、元浜町にスペインバルを開業。県内では出会うことのない品揃えに、シェリー酒ファンから密かな人気を集めている。

 大通寺門前通りの表参道とゆう壱番街の交差点角にオープンしたバル「パロミノ」。古民家を改装したレトロ感のある店内にはシェリー酒のボトルが並び、壁にはシカの毛皮。オーナー・シェフの中川弘美さん(47)=湖北町伊部=のこだわりが光る。

 シェリー酒はアンダルシア地方のヘレスで生産されるアルコール度数を高めた白ワイン。紹興酒を思わせる熟成感とコクのある味わいから、すっきりと爽やかな風味まで、幅広い味覚が特徴。

 中川さんは京都市内の大学在学中、ショットバーでアルバイトしたのをきっかけに飲食業に携わるように。その後のホテル勤務時代に先輩のアドバイスでシェリー酒について学び、特別な資格「ベネンシアドール」を取得した。

 「当初はシェリー酒の良さが分からないまま、資格を取ったんです」と中川さん。シェリー酒に魅了された転機は、アルバイト時代のつてで神戸市内でショットバーの開業に携わったこと。店長としてさまざまな酒類を仕入れる中、「せっかく資格があるのだから、シェリー酒も揃えよう」。試飲を重ねるうちに、その魅力の虜となり「私の味覚が成長したのか、とにかく『開眼』でした」と当時を振り返る。その後、そのショットバーはシェリー酒を楽しめる店として評判を集めた。

 2019年に湖北町に帰郷し、開業を準備してきた。店名「パロミノ」はシェリー酒に使用されるブドウの品種に由来する。

 店内では常時約30種類のシェリー酒を取り扱う。料理は気軽なスペインの小皿料理「タパス」が中心だが、シカ肉も見逃せない。中川さんは狩猟免許を取得し、自ら湖北の山で捕獲したシカを調理して提供している。「今はシカ肉しか出していませんが、シェリー酒はジビエに良く合う」と語る。野菜もスローフードの観点からできる限り地元産を使うようにしている。

 「シェリー酒にしてもジビエにしても少しハードルが高いかもしれないが、長浜にないジャンルの店。新しい味覚を見つけ、楽しんでほしい」と話している。

 営業時間は正午から午後9時まで。定休日は月・火曜。問い合わせは℡(53)4965へ。

2022年6月28日

フレイル予防体操 共同開発

米原市と筑波大、身体能力アップ

 米原市は27日、高齢者向けの体操を筑波大学と共同で開発したと発表。加齢に伴う身体能力と認知機能が低下した状態「フレイル」の対策に有用な調査結果が得られたとして、地域の出前講座などで活用していく。

 共同開発の体操は、タニタ社製の消費カロリー計付きなわとび(カロリージャンプ)を用いていすに座りながらできる「タニタSTOP!フレイル健康体操」。有酸素運動、筋トレ、バランス運動、有酸素×脳トレの4ジャンル計20種類の多彩なエクササイズで構成されている。所要時間は約20分で、タニタ社のホームページやユーチューブ(https://www.youtube.com/watch?v=wHeGBSVUQw8)で動画を公開中。

 米原市は今年1月から3月にかけて市内4カ所で65歳以上の高齢者75人に対し、休憩を入れて1回につき90分間、週1回のペースで全12回の同体操の教室を実施。教室終了後、筑波大学が参加者に調査したところ、教室前と比べての改善率が脚筋力で14・4%、歩行速度で7・0%上昇するなどの効果が出たという。一方で認知機能についての改善は見られなかった。

 米原市は「なわとび体操」の愛称を付け、出前講座や高齢者サロンのほか、一人でもできるため自宅での実施を推奨している。監修した筑波大学の山田実教授は「全身の筋肉量が増加し、歩行速度など運動機能の改善効果が認められた。自宅で座りながら体操でき、腕と足の両方を鍛えることができるのがいい」と話している。タニタ社のなわとび以外の一般のタオルなど代用品を使っても体操できるという。

2022年6月20日

全国優勝の先輩が指導

中嶋さん 長浜西中女子ソフト部を訪問

 長浜西中女子ソフトボール部が1991年の全国大会で優勝した時のメンバーの一人で、現在も仙台市のチームで活躍している中嶋理恵さん(45)=旧姓・一居=が19日、五輪出場経験のある仲間を連れて母校の長浜西中を訪れ、後輩の練習に参加。30年前を思い出しながら「夢中に、真剣に取り組むとその時の仲間は一生の宝物になる」などと思いを語った。

 中嶌さんは中学3年生の時、全国大会で優勝。卒業後は愛知淑徳高校を経て実業団チームの日立製作所で内野手として活躍。現在は仙台市の「ファイナル仙台」で活動している。実業団所属時には五輪選考会にもノミネートされた。

 この日は子どもがソフトボール部に所属している同級生からの依頼を受けて、遠く仙台から駆け付けた。五輪3大会に出場しシドニーで銀、アテネで銅を獲得した高山樹里さん(投手)、シドニー銀の山田美葉さん(捕手)ら仲間を誘って、計9人で同校を訪れた。

 西中の部員11人と一緒に汗を流し、「声を出していこう」「相手の顔を見て」などと声を張り上げて部員を鼓舞し、チームプレーに欠かせないコミュニケーションの大切さを呼びかけていた。また、部員が少なくゲーム形式の練習が不足していることに気付き、対戦チームのランナー役として参加するなどして実戦を想定した練習を作り上げていた。

 キャプテンの佃真唯子さん(14)=3年=は「ロングティー(バッティング)の打ち方を教えてもらったら、打球の伸びがぜんぜん違うようになった」と語り、「今日は貴重な経験となった。一つでも多くのことを吸収し、夏の大会に向けて頑張りたい」と話していた。

 30年ぶりに母校のグラウンドに立った中嶋さん。「毎日休みなく、ここで頑張っていたことを思い出す。厳しくも楽しい練習で、それが私の素地、基本となった」と振り返った。この日は当時、一緒に白球を追いかけた仲間ともグラウンドで再会し、「子どもたちには目標に向かって真剣に、夢中に、練習して欲しい。そうすれば一緒に汗を流した仲間も一生続く」と話していた。

2022年6月16日

植物工場で葉物野菜栽培

長浜農高  初収穫で手応え

 長浜農業高校が今年度から校内に設けた植物工場で野菜の栽培に挑戦し、このほど初収穫を迎えた。快適な空間で農業に従事でき、収量もまずまずとあって、生徒は手応えを感じているようすだった。

 国のスマート農業推進政策の一環で、今年4月、農業技術センターの一室に広さ15平方㍍の植物工場を整備。密閉された室内での植物工場の導入は県内の農業高校では初の試みで、園芸科の3年生が栽培用と実験用の棚計3台で小松菜、リーフレタスなど葉物野菜の栽培に取り組んでいる。

 植物工場では野菜の生育に必要な温湿度、光の照射時間、CO2濃度、液体肥料の分量といった栽培環境をタッチパネルなどで制御する。1日15時間、電球で照らすことでハウス栽培に比べ2割程度、栽培期間の短縮につながり、密閉空間のため病害虫の被害も抑制できた。

 今月上旬に小松菜とリーフレタスの収穫を迎えた。小松菜は大きさが不揃いで課題を残したが、リーフレタスはハウス栽培に比べ大きく成長し、市内のスーパーに出荷した。

 収穫作業にあたった千田柊哉さん(3年)は「屋外での栽培よりも育てやすく、収穫量も多い気がする。短期間に大きく成長したので驚いた」、宮元士央哉さん(3年)は「快適な環境で栽培でき、成長スピードを速く感じた。収穫のタイミングが同じだったので、短期間の収穫となり、その点では大変でした」と語っていた。このほかにも「露地栽培よりも、人も植物も快適な環境で栽培できるので植物工場は良いなと感じた。また、密閉された環境なので、虫に食べられることもなく、おいしい野菜が作れる」との感想が出ていた。

 指導にあたった菱田実教諭は「ICT技術を使った植物工場の整備は、時代に即した農業教材となる」と意義を語り、「今後は光の色を変えることによって生育や栄養がどう変化するのか調べたい。ゆくゆくはイチゴやトマトの栽培に挑戦できれば」と話していた。

2022年6月13日

高番の米 ブランド化目指す

「おかるばあさんのコシヒカリ」地元の伝説にちなんで命名

 米原市高番の農事組合法人エコファーム高番が地元産米を「おかるばあさんのコシヒカリ」と命名し、ブランド化を目指している。

 エコファーム高番は組合員54人。高番地区の田んぼ約30㌶のうち約20㌶でコシヒカリを栽培している。同法人によると、伊吹山の雪解け水にはミネラルが豊富に含まれ、土壌も良質なため、おいしい米が育つという。一方で、米の作り手の後継者不在の課題があるため「高番のコシヒカリを後世にもつなげる必要がある」との思いからブランド化を企画した。

 商品名のおかるばあさんは大昔に高番に住んでいたという伝説の人物。蚕を荒らすネズミに困っていた村のために、おかるばあさんがお堂に祀られている神様に祈り、周囲の丸石を持ち帰って蚕のそばに置いたところ、ネズミが来なくなったという言い伝えが残る。現在、地元の千福神社の近くには「おかるばあさんの祠(ほこら)」が建っている。

 同法人は現在、米袋のデザインに取り組んでおり、8月に完成予定。10月に「おかるばあさんのコシヒカリ」の5㌔と10㌔を、インターネットを中心に販売する。

 同法人代表の畑中満さん(61)は「高番のコシヒカリは近江米の中でも高く評価されている。伊吹山の伏流水で育った自慢の米を多くの人に食べてほしい。ブランド化することで、私も作りたいと思う後継者が出てきてくれたらうれしい」と話していた。

 なお、同法人は米袋の製作に向け、デザイン費や印刷代などをクラウドファンディングで募っている。目標額30万円。8月5日まで。リターン品はおかるばあさんのコシヒカリ、稲刈り体験、ポストカード。詳細は「キャンプファイヤー」のサイトで(https://bit.ly/3NbBmIo)。

2022年6月9日

関節リウマチ 正しく知って!

湖北初 弥高町に専門クリニック

 関節に痛みや腫れが生じ、放っておくと関節変形などを引き起こす「関節リウマチ」。今年4月に弥高町に専門クリニック「リウマチ科みやもと」を開院した宮本茂輝さん(45)は「早期発見と早期治療が欠かせない」と訴え、市民にリウマチに対する正しい理解を呼びかけている。

 宮本さんは市立長浜病院や長浜赤十字病院など県内の病院・診療所4カ所のリウマチ科に長年勤務した後、今年4月に独立・開業した。リウマチ専門のクリニックは全国的にも珍しく、県内2例目、湖北地域では初となる。リウマチによる炎症を超音波で確認する「関節エコー」など専門の器具を備えている。

 リウマチは関節の内面を覆っている滑膜(かつまく)に炎症が起こる自己免疫疾患で、積極的に治療を行わないと関節が破壊され、変形などを引き起こす。国内で70〜100万人の患者がいるとされ、宮本さんは「決して珍しくない病気だが、正しく理解されていないことから治療が遅れる患者が少なくない」と指摘する。

 リウマチは中年以降の女性に多いとされるが、10代や男性も発症する。「初期症状は手の指や手首、足の指がこわばる。朝方に手がこわばっている場合は、リウマチを疑ったほうがよい」と説明する。

 関節痛などが発生した場合、まずは整形外科を受診するのが一般的だが、「明確にリウマチと診断するのが難しいケースもあり、十分な治療に繋がっているとはいえない」と指摘する。

 リウマチの治療薬については日々進歩しており、早期に発見すれば投薬で進行を抑制することが可能という。「現状では適切な治療を受けていない方も多い。早期発見につながるよう、初期症状を知ってもらいたい」とし、「複数カ所の関節に痛みや腫れがあるなら、リウマチを疑い専門家を頼ってほしい」と呼びかけている。

 問い合わせはリウマチ科みやもと℡(53)3887へ。木・日・祝と第2・4土曜は休診。詳細はHP(https://rheumatoid-arthritis-miyamoto.jp/)。

2022年6月8日

キャンプ道具で漆の魅力発信

塗師の中川さん  仲間4人で制作集団立ち上げ 日本の伝統技術 長浜から全国へ

 曽根町の老舗「カネイ中川仏壇」5代目で、漆ガレージブランド「GNU(ヌー)」を立ち上げキャンプ道具の漆塗りなどを手掛けている中川喜裕さん(32)。仲間4人でクリエイター集団「HikU(ハイク)」を結成し、えきまちテラス長浜に事務所兼ギャラリーをオープンさせた。キャンパー垂涎の道具を次々と生み出し、オープンの5日には早朝から開店を待つ行列ができるなど、注目の高さをうかがわせている。

 メンバーは中川さんのほか、レザークラフトを生かしたキャンプ道具を制作し全国のキャンパーが注目する中村友洋さん(43)、写真家・ツジタシンヤさん(32)、デザイナー・前川有季さん(28)。兵庫県猪名川町在住の中村さん以外は、長浜を拠点に活動している。

 仏壇需要の低迷で漆塗りなどの伝統技術を受け継ぐ職人の高齢化と後継者不在を危惧する中川さんは、仏壇の「お洗濯」や長浜曳山まつりの曳山修理に携わる中で、技術継承の大切さを痛感。漆塗りの魅力を世に再認識してもらうため、キャンプ道具に無料で漆を塗るプロジェクトや、漆塗り体験ワークショップに取り組んでいる。昨年は新事業としてGNUを立ち上げ、漆塗りのキャンプ道具を作り上げてきた。

 SNSを通じて中川さんの取り組みを知った中村さん。日ごろから「日本には伝統工芸の素晴らしい技術があるのに、なぜ海外製品ばかりに目を奪われるのか。大事な技術がどんどん失われてしまう」と危機感を抱いており、中川さんについて「こういう若者を盛り上げていかなければならない」と、HikUの立ち上げに繋がった。

 ツジタさんは写真や動画の撮影でHikUの取り組みを発信し、前川さんはオリジナルキャラクターの制作、ステッカーやTシャツなどの製品化を担当している。

 HikUはこれまでに、木目の美しいトチに漆を塗った保冷缶カバー、縁を薄さ1㍉に仕上げた木製ウイスキーカップ、柄に漆を塗った刃物など、職人技術の粋を集めたキャンプ道具を生み出している。輪島の曲げわっぱ職人が作った弁当箱に自身で漆塗りを施す「アウトドア漆キットtamate—bako」は、漆塗りの魅力を直に体験できる商品として注目を集めている。

 事務所兼ギャラリーがオープンした5日は早朝から行列ができ、遠くは九州や東北地方からの来場者もあった。中村さんの知名度の高さによるが、漆技術を応用したキャンプ道具への関心の高さをうかがわせた。

 「日本の伝統工芸である漆塗りの価値を、新しい形で世に広めて欲しい」と期待する中村さん。中川さんは「漆文化を広めるのはもちろんだが、オープン日に多くの方が長浜を訪れていただいたように、長浜を盛り上げ、地方創生にもつながる活動をしたい」と決意を込める。

 HikUではキャンプ道具の製作・販売のみならず、定期的に体験イベントを開いて伝統工芸に市民が触れる機会を増やす。

 HikUは「The  story  of  hiking  with  you」(あなたと一緒に高みを目指して登ってゆく物語)との思いを込めている。事務所兼ギャラリーは主に土日にオープン。開店日などの詳細は代表℡080(5535)2758へ。