2022年11月4日

長浜でオリーブ栽培

無農薬で、吉田農園がプロジェクト

 湖北地域で初となる「オリーブ農園」を作るプロジェクトが三川町の吉田農園(三川町)で進められている。最大の特徴は「無農薬栽培」。たい肥には琵琶湖で増殖している水草を利用する。

 同農園では無農薬栽培の稲作に長年、取り組んでおり、米以外の作物を模索する中、オリーブに着目した。オリーブは実はポリフェノールを豊富に含み、食用油の原料や食用(ピクルス)になるほか、葉は茶にもなる。

 オリーブは小豆島をはじめ、香川、岡山など温暖な地域でしか育たないと思っていたが、ある農業フェアで、寒冷地でも栽培できることを知った。チャレンジしようと、2年前、地元の圃場に試験的に90本の苗を植え、育てたところ、マイナス5℃、50㌢の積雪にも耐えられることが立証できた。

 農園では「地域貢献」「安全と安さ」を両立したオリーブ作りを目指し、漁業などに悪影響を及ぼし県が除去している水草を購入。微生物で分解し、もみ殻、米ぬかとブレンドすることにより、自然由来の土壌改良剤、有機肥料となった。

 また、2・5㍍以上伸ばさず、枝葉を横に広げ、脚立なしで収穫できる独自の栽培を考案。この2年間で、枯れた木は1本もなく、栽培のメドがたったことから、今年4月、約40㌃の畑に150本を植樹した。

 3年後をメドに1000本まで増やす計画で大量に搾油するための機械も購入しなくてはならず、現在、クラウドファンディング(https://bit.ly/3ULTVqF)で資金調達をしている。目標額は100万円で、12月29日まで募集している。

 農園を確立することで、資源の有効活用ができ、雇用が生まれる。担当の吉田久之さん(62)は「皆さんの家庭でも苗木を育ててもらい、長浜から『びわ湖オリーブ』を発信し、ネットワークを構築したい。そのためにも協賛を」と話している。

 なお、6日午後1時から3時まで、三川町の農園で説明見学会を開く。問い合わせは同農園℡(73)2746。

 

2022年11月2日

煙の少ない高級薪が好評

来シーズンに向け、生産ヒートアップ

 米原市上板並の市民グループ「里山を守り生かす会」(伊賀並正信代表)の作る高級薪「プレミアムホワイト」が好評で、次年度用の薪づくりが佳境を迎えている。

 山林、林業を活用し、地域おこしをしている同会では10年前、薪ストーブの流行に伴い、山林の間伐材や家屋の解体で出た廃材を利用して、薪作りを始めた。安価で高品質と評判で、年々ニーズが高まり、3年前からは地元の木材業者から原木を仕入れ、年間約30㌧を生産、販売するまでになった。

 伊賀並さんは自宅で薪ストーブを使用する中で「メンテナンスの多さ」と「清潔感」がウィークポイントと考え、煙の少ない薪「プレミアムホワイト」を考案した。

 原木は筋目が通り木肌が美しく節目の少ないナラだけを選りすぐり。虫が好んで棲みつく表皮を剥いて乾燥させている。ひと手間加えたプレミアムホワイトはすすや灰が少なくなり、煙突やストーブ内が汚れにくく、虫が出ない、というメリットが生まれた。

 ネット販売やふるさと納税の返礼品としても扱われており、少し高い価格設定にしても飛ぶように売れており、発注先は高給住宅地の田園調布(東京)や芦屋(兵庫)に住む人が目立つ。

 薪は原木を37㌢にカットして、薪割り機で割り、1年かけ、乾燥。1束ごとや箱入りで販売している。現在、加工している薪は来シーズン向け。市の助成金を受け、作業所の「いぶき弥三郎ベース」に保管専用の棚と作業台を新設し、生産効率をアップさせた。

 伊賀並さんは「今年分はすでに完売。これから配達の繁忙期に入り、あと10㌧は配達しなくてはならない。原木とニーズがある限り、冬の間も作業を続ける」と話している。

2022年11月1日

定時制体験発表会 林実生さん、全国大会へ

長浜北星高から2年連続の県代表

 長浜北星高校定時制4年の林実生(あづき)さん(20)は、全国高校定時制通信制生徒生活体験発表会県予選で1位となり、11月20日、東京で開かれる全国大会に県代表として出場する。同校からは2年連続の選出。

 県予選には6人が参加し、7分以内で日常や学校生活での体験、思いを語った。林さんは「歩み〜私にとっての4年間」と題して、高校生生活を振り返り、自分に関わってもらった人への感謝の気持ちを綴った。

 5人きょうだいの林さんは中学3年の時に、母を亡くし、全日制の高校に進学するも不登校となった。スクールカウンセラーのアドバイスで定時制高校に入学したが、父だけの収入では家計を支え切れず、自宅を離れることに。家族が離れ離れになる中、父の膵臓がんが発覚。「何で私だけ、こんな目に遭うのか」と思うようになった。

 林さんは昼間、飲食店でアルバイトをしながら、高校に通学しているが、周りに支えられ、笑顔も増え、生徒会長にも選ばれた。

 論文では「定時制を選択していなかったら、こんなにも豊かな未来は待っていなかったかも」と振り返り、林さんは教えをもたらしてくれた先生やアルバイト先のオーナー、客たちへの感謝の気持ちを文章化している。

 また、「卒業して大人になってゆけば、もっと孤独に思う瞬間があるかもしれない。しかし、この定時制でまだ自分の手に残っている『大事なもの』に気づくことができた。これこそが4年間の歩み」だとし「卒業した後も、あの時、隣にいた仲間が今もどこかで頑張っていると思うことができれば、自分も上を向いて歩いていくことが出来るのではないか」と問いかけ、「気づく機会を与えてくれたのはこの高校。私にとって単なる通過点ではなく、学校以上の場所になりそう」などとまとめている。

 林さんは全国大会を前に「こういう機会をいただき、ありがたく感謝したい。おごることなく実感を伝えられたら」と話している。

2022年10月28日

バイク愛好家を奥びわ湖へ

パークウェイでジャンブルマーケット

 「バイク愛好家を奥琵琶湖へ」—西浅井町のまちおこしを展開している「びわ湖のてっぺんプロジェクト委員会」(山口正之委員長)は11月19日、奥琵琶湖パークウェイでバイクの中古部品などを展示販売する「奥びわ湖ジャンブルマーケット」を初開催する。

 委員会では昨年、奥琵琶湖パークウェイへの誘客を図るため、軽トラ市を開いたが、出店者が少なかったため、会場を道の駅・塩津海道あぢかまの里に移したところ、出店者、利用者とも増えた。

 委員会のメンバーたちは道の駅を利用するバイカー(ライダー)の多さに着目。風光明媚でライディングが楽しめるパークウェイの利点を生かし、ジャンブルマーケットを通して、バイク愛好家たちに西浅井の魅力を知ってもらおうとイベントを開催することに。

 会場ではバイクの部品(ジャンク品)を販売する店を並べるほか、キッチンカーやカレーなどの飲食テントなども出店する。事務局の乾文久さんは「マーケットではスーパーカブなど原付バイクのジャンク品が人気。パークウェイはこれから紅葉がきれい。対面販売を通して、地元と観光客の交流の場を広げることで地域振興につなげたい」と話している。

 近年、ジャンブルマーケットと呼ばれる「がらくた市」がブーム。浜名湖や大阪の舞洲、奥伊勢などではバイク愛好家やコレクターなど多くの人で賑わっている。

フリマ出店者募集

 びわ湖のてっぺんプロジェクト委員会はフリーマーケットの出店者を募集している。

 ジャンク品はメーカー、車種、排気量、一般・業者問わず。このほか、家庭に眠る不用品や手作り雑貨、手作り菓子なども販売できる。時間は午前10時から午後3時。出店料は小ブース(2㍍四方)1000円、大ブース(3×6㍍)2000円。25ブースを予定しており、定員に達し次第締め切る。問い合わせは事務局・乾さん℡090(4299)7001。

2022年10月26日

全国障害者スポーツ大会に長浜から4人が出場

8年ぶり、グラウンドソフトボールで

 グラウンドソフトボール滋賀県チームは近畿地区代表として29日から栃木県で始まる全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」に出場する。8年ぶりの全国大会出場で長浜市からは選手、コーチャー各2人が参加する。

 出場するのは祇園町の内野手・田中宏明さん(51)、元浜町の外野手・肥満孝史さん(59)、大井町のコーチャー・米田貢さん(51)、高月町雨森の同・谷口忠士さん(50)。

 滋賀チームは6チームが参加した6月5日の近畿地区予選で優勝。2014年以来、8年ぶり16回目の全国大会出場権を獲得した。

 チームとしては投手を中心とした堅い守りでリズムを作り、攻撃に繋げ、少ないチャンスを生かすのが得意。肥満さんは「自分なりに満足できる結果を残したい」と話し、キャプテンの田中さんも「今持てる力をチーム全員で発揮し、近畿代表チームとしてメダルに絡みたい」と意気込んでいる。

 なお、滋賀県チームは29日午前10時半から、宇都宮市屋板運動場で、九州代表の福岡県と初戦を戦う。

 【グラウンドソフトボール】視覚障害のある選手が出場できる競技。1チーム10人で全盲の選手が常時4人以上出場しなければならない。ルールはソフトボールが基本だがハンドボール大の球を使用。投手は全盲の選手とし、捕手が手を叩く音を頼りにボールを転がして投球。打者はボールの転がる音を頼りにバットで打つ。野手とランナーの接触を防ぐため、すべての塁に守備用・走塁用ベースが置かれ、各塁のコーチャーがランナーを誘導する。

2022年10月25日

京極寿司・中川さん、総理大臣賞

全国すし技術披露会で、山崎さんも金賞

 京極寿司(元浜町)の寿司職人・中川淳さん(26)が18日に東京で開かれた全国すし技術披露会で内閣総理大臣賞に輝いた。後輩の山崎剣司さん(25)も金賞に入賞し、2人は「頑張ってきたかいがあった。これからも前向きに寿司に向き合いたい」と喜んでいる。

 2人は県調理短期大学校(分木町)の在学中から京極寿司に勤め、中川さんは9年目、山崎さんは7年目。2018年に出場したすし技術コンクール近畿大会で中川さんは制限時間オーバー、山崎さんは調理中に薬指を切るケガで入賞を逃す不本意な結果に。以来、全国すし技術披露会での雪辱に向け、研鑽を積んできた。

 全国すし技術披露会は全国すし商生活衛生同業組合連合会の主催で4年に1度開かれている。2人は箱寿司、巻き寿司、握り寿司などを桶に盛り込む「関西江戸盛」部門に出場。制限時間40分の中、各地域の代表16人が技を競い、仕事ぶり、作品の仕上がり状態、後片付けが審査基準となった。

 中川さんは魚のすり身のオボロ、イカ、イクラなどで花をかたどった色鮮やかな細工寿司を中央に飾った作品を仕上げた。内閣総理大臣賞の受賞で「これまで頑張ってきて良かった。将来は自分の店を持ちたいので、受賞は1つのステップになる」と話している。

 4年前の近畿大会でケガで退出し、作品を完成させることが出来なかった山崎さんは「最後まで寿司を作りたい」と大会に臨んだ。桜の花をイカやイクラで表現した細工寿司などを作り上げ、「まわりの人に評価されて嬉しい。まだまだ未熟で勉強の身なので、これからも丁寧に寿司に向き合いたい」と話している。

2022年10月19日

養殖ビワマスの採卵始まる

醒井養鱒場で 千匹から100万粒

 米原市上丹生の醒井養鱒場は18日、養殖用ビワマスの採卵作業の様子を公開。11月上旬までに約1000匹から約100万粒を採卵する計画だ。

 醒井養鱒場は1979年にビワマスの養殖に成功し、90年からより価値の高い種を作り出すための育種研究に着手。93年に養殖の環境でも大きく成育する「高成長系」の作出に成功。2008年からはさらに大型化が可能になる技術開発を始めた。

 ビワマスの成熟期間は天然だと3年から5年かかるが、養殖では2年でほとんどが成熟。全長40㌢の場合、1匹で1000粒ほどの卵を産む。採卵の作業工程は①雌の頭部分を木製の採卵台に入れ、腹部から卵をしぼり取る②集めた卵に薄い塩水(等張液)を入れて汚物などを洗い流す③雄からしぼり取った精子をかけて受精させる④ふ化場に運んで消毒後、12℃前後のわき水に入れて収容する。その後、卵は27、28日後にふ化する。

 初日の18日は約170匹から15万粒を採卵した。作業は11月上旬まで行われ、4㌢ほどに成長した稚魚約10万匹はビワマスを養殖業者でつくる「びわサーモン振興協議会」に配布される。養殖のビワマスは「びわサーモン」の商標で提供されており、2021年度は約14・4㌧の生産量だった。桑村邦彦場長は「コロナで消費が少し落ち込んだが、これから回復するだろう。知名度が高くなることを期待したい」と話していた。

「紅葉ます祭」採卵・釣り体験

 醒井養鱒場は11月13日に「紅葉ます祭」を催す。採卵体験が午前11時半と午後0時半・各回10人・1000円、釣り体験が午前10時半・同11時半・午後0時半・同1時半で各回20人・1000円。ニジマス親子丼やびわますバーガーなど飲食販売、ストラックアウトなども。午前10時〜午後3時。入場料は大人540円、高大生320円、中学生以下無料。

2022年10月18日

上草戦隊5爺バー、デビュー

筋力減っても 地域への思いは減らないぜ!悪と疲労と戦うヒーローの平均年齢は62歳 

 ヒーローの平均年齢は62歳!?5人の祖父・祖母らによる「上草戦隊5爺(ファイブジー)バー(婆)」が30日の「上草野まつり」でデビューする。

 コロナ禍でイベントなどが次々と中止になり、上草野地域づくり協議会にぎわい部会(宮元久和部会長)は「地域の子どもたちに喜んでもらえる催しを」と戦隊モノを企画した。

 戦隊のメンバー男女5人は1人を除き、孫の数は10人以上。ネーミングは携帯電話などに用いられる次世代通信規格「5G」の普及が進んでいることから、時代の「波」に乗ろうと「上草戦隊5爺バー」と命名した。

 戦隊ショーではレッドやブルーの戦士が東草野の安心安全を守る正義の味方となり、会場内を走り回る悪者のダークサンダーや手下と戦う。練習を始めたばかりだが「しんどい」ので上演時間は20分が限界か。

 隊長のレッド(62)は「筋力や関節は減っても、地域への思いは減らないぜ」と意気込み、メンバーたちも「戦え!みんなのために。飲め!本番に向かってグルコサミン」と雄叫びをあげている。

 なお、上草野まつりは30日午後1時から、野瀬町の上草野まちづくりセンターで。シンガーソングライター小林未奈さんのコンサートや鍛冶屋太閤踊りなどがある。入場無料。

2022年10月14日

シルク生地、家庭で気軽に洗濯

浜縮緬工業協同組合が加工技術を開発 洋服や寝具への採用に期待

 浜縮緬工業協同組合(吉田和生理事長)はシルク生地を家庭用洗濯機で洗えるように加工する技術を開発した。今後、地元だけでなく幅広い産地のシルクを加工する事業に乗り出し、和装だけでなく、アパレルや寝具、インテリアなどの分野にもシルク生地を売り込む。

 組合が生産を手掛ける「浜ちりめん」は絹織物の最高級品とされるが、和装需要の落ち込みで減産が続き、半世紀前のピーク時には124社いた組合員も現在は10社へと激減。シルク生地の新たな需要を生み出すには和装以外での活用が不可欠で、一時は供給先として高級子ども服ブランドとの商談が進んだが、「洗濯が難しいようでは、子ども服には不向き」と、採用に至らなかった。

 シルクは濡れた状態では摩擦に弱く、洗濯はドライクリーニングか優しい手洗いに限られる。組合では商談の失敗を受けて、家庭で気軽に洗濯できるようなシルクの加工技術の研究に乗り出し、県東北部工業技術センターの支援を得ながら13年かけて開発を進めてきた。

 「Yasa Silk(ヤサシクル)」と命名した新しい加工技術は、シルク生地を有機化合物で処理して分子レベルで結合を施し、強度をアップさせた。家庭用洗濯機を使ったテストでは60回洗っても、シルク最大の弱点である摩擦によるスレ、縮み、色落ちがほとんどなかった。

 吉田理事長は「シルク本来の吸放湿性の良さや、夏涼しく、冬暖かいといった性能もそのまま」と太鼓判を押す。加工時間はシルク生地20反で5時間程度。浜ちりめん生地だけでなく、あらゆるシルク生地に加工を施すことができるという。現在、特許を出願している。

 10月6、7日に京都市内で開催した「浜ちりめん白生地求評展示会」でもこの技術を紹介。会場には和装産業関係者だけでなく寝装寝具メーカーも来場し、吉田理事長は「説明を求められっぱなしで、反応が非常に良かった」と手応えを感じている。11月には東京で開かれるアパレル展示会にも出展する予定で「和装はもちろん、幅広いアパレル商品、寝装寝具などに活用してもらい、シルクの新たな分野を切り拓きたい」と話している。

 ヤサシルクに関する問い合わせは同組合℡(62)4011へ。

2022年10月12日

海外で熱視線、伝統技術「金継ぎ」

宗永堂の杉中さん、ロンドンで体験講座を指導

 欠けた器を漆で接着して金で装飾する日本の伝統技術「金継(きんつ)ぎ」。壊れたもの直して大切にする技法はそのデザイン性も評価され、海外では「KINTSUGI」として注目を集めている。国友町の仏壇仏具店「宗永堂」の店主・杉中伸安さん(58)のもとにも海外から金継ぎの依頼が舞い込み、今月上旬にはロンドンに招かれて体験講座(ワークショップ)の講師を務めた。

 杉中さんは独自の漆ブランド「NUUL(ヌール)」を立ち上げで独創性のある漆器を送り出している。その手仕事に魅了された栗東市の中小企業診断士・磯野研さんの提案で、昨年9月、海外に金継ぎ作品を紹介、販売するネットサイト「The  Kintsugi  Labo  Japan」を一緒に立ち上げた。サイト内の英文は磯野さんの妻の三知恵さんが担当した。

 サイトでは金継ぎの技法について紹介したうえ、作品を従来の古典的な「アンティーク」、デザイン性を重視した「ユニーク」、漆器にも応用した独創的な「ネオ」の3種に分類して販売。これまでに欧米や中東など世界各国から注文が入り、特に抹茶用の茶碗が人気という。また、金継ぎによる修繕の依頼も入り、イタリアからは細かく欠けた皿が届いている。

 体験講座の依頼はロンドン市内の複合施設「パンテクニコン」から舞い込んだ。日本と北欧の文化などを紹介する施設で、コンセプトストア、カフェ、レストラン、バーなどが入る。「海外で金継ぎがブームになっていることは知っていたが、まさか自分が行くことになるとは。海外は30年ぶりでしたので、パスポートを慌てて作りました」と杉中さん。

 現地では10月1、2日の2日間で計5回の講座を行い、25人程を指導した。講座時間は1回当たり90分に制限されていたことから、割れた器を漆で接着する金継ぎの体験には短く、代わって金で装飾を施す蒔絵を体験してもらった。参加者は杉中さんの手ほどきで速乾性のある漆を使ってコースターとジュエリーボウルに模様を描き、金粉をまぶしてオリジナルの蒔絵作品を完成させた。三知恵さんが通訳を担当した。杉中さんは「皆さん、興味を持ってやってくれていた。独創性のあるデザインにする女性もいて、芸術の素地の違いを感じた」と振り返る。

 ロンドン滞在中には大英博物館やナショナルギャラリー(国立美術館)も訪れた。「驚いたのはこれだけ立派な施設なのに入場料が無料だったこと。文化に対する意識の違いを感じました」と刺激を受けた。

 仏壇需要の低迷で、漆文化の継承が課題となる中、海外で注目を集める日本の漆工芸。杉中さんは「海外でのワークショップはハードルが高いが、いずれは1カ月ほど滞在して、本物の漆を使ってじっくりと金継ぎを教えたい」と新たな挑戦を思案している。

2022年10月11日

4年ぶり華やか着物園遊会

連休、長浜市街地でイベント多彩に

 長浜市街地で8、9日、秋の恒例行事「長浜きもの大園遊会」や「長浜火縄銃大会」、「豊公まつり」が開かれた。新型コロナウイルス禍で中止となっていた晴れやかな行事が次々と復活し、3連休と相まって多くの見物客が訪れた。

長浜きもの大園遊会

 市街地を着物姿でそぞろ歩くきもの大園遊会は8日開かれた。和装産業の振興と商店街の活性化を目的に1984年に始まった。台風やコロナ禍で4年ぶりの開催となった今年は、参加資格を従来の振り袖の女性から老若男女に広げ、計624人が参加した。

 参加者は商店街でショッピングや食べ歩きを楽しんだり、町家で茶席を体験したりと、優雅な秋の一日を過ごした。写真愛好家も大挙し、女性にポーズをお願いするなどしてレンズを向けていた。また、花魁(おいらん)の練り歩きもあり、モデル役の女性が気さくに記念写真に応じていた。

 母親が成人式に着た振り袖で参加した市内の女性(26)は「着物を着ると新鮮な気持ちになります。祖父母に会いに行ったら、綺麗になったねと喜んでもらえました。きょうは黒壁スクエアの散歩を楽しみたい」と話していた。

曳山交替式

 市街地では8日、曳山博物館に収蔵する曳山の交替式があった。来年の長浜曳山まつりで子ども歌舞伎を奉納する出番山4基が博物館から引き出され、市街地を巡行して各山組の山蔵に収められた。また、新たに4基が曳山博物館に引き入れられ、揃いの法被姿の若衆らが力を合わせていた。

長浜火縄銃大会

 長浜城歴史博物館の前庭では8日、長浜火縄銃大会が行われた。1983年の同博物館の開館を記念して始まり、地元の国友鉄砲研究会や火縄銃文化を受け継ぐ各地の保存会が参加して演武を披露。鉄砲の歴史を今に伝えている。

 今年は国友、彦根、堺、西之表市の4団体が参加し、順番に火縄銃や大筒などを発砲。「ドーン」と体に響く轟音とともに白い煙が舞い上がり、見物客はその迫力に圧倒されていた。

豊公まつり

 羽柴秀吉らの賤ヶ岳合戦の凱旋行列を再現した豊公まつりは9日開かれ、観光客であふれる市街地を武者行列が練り歩いた。合戦は織田信長の後継をめぐる秀吉と柴田勝家の争いで、これに勝利した秀吉は天下人へと大きく歩みを進めた。同まつりは秀吉や合戦で活躍した加藤清正、福島正則ら「賤ヶ岳七本槍」の武者行列を再現し行われている。

 この日は大人と子どもの武者行列が豊国神社と長浜八幡宮を往復。道中、ポーズを決めたり、勝どきの声を上げたりすると、沿道の観光客から拍手が送られていた。

2022年10月4日

歩いて 健康と賞品をゲット

スマホウォーク「ビワテク」挑戦を

 スマートフォンを利用したウォーキングで健康と賞品をゲットできる「ビワテクチャレンジ」が15日から始まる。今年は総勢100人に素敵なプレゼントが当たる。

 参加方法は「ビワテク」アプリをダウンロードし、スタンプラリーの期間限定コース、長浜駅から慶雲館、ヤンマーミュージアムなどを巡る「ながはまの偉人に学ぶ」(3㌔)、高月駅から高月図書館、雨森芳洲庵などを歩く「芳洲先生と大ケヤキを訪ねて」(約6㌔)の対象コースを歩き、コース上のチェック地点でポイントを獲得する。

 対象は19歳以上の市民。1コース完歩ごとに応募でき、1人で最大2口。期間は11月23日まで。賞品は磁気ネックレスやスマホ通信対応の体組成計、竹生島クルーズペア乗船券や地元温泉の入浴券など。好きな賞品を複数選んで応募。抽選で100人に当たる。

 コロナ禍でもできる健康づくりとして始まった企画で、今年で3回目。これまでのビワテクチャレンジ完歩者は2020年が54人、21年が102人。

 市健康企画課は「期間限定キャンペーンをきっかけにビワテクユーザーが増えれば、と思い賞品を充実させた。ぜひ、参加を」と呼びかけている。

 ビワテクは県内各地で行われており、長浜市の場合、3カ月ごとに4コースを設定し、実施している。アプリの市民ユーザーは2060人(9月27日時点)。無料。

2022年9月30日

「ゆいま〜る」できるお店に

孤立の寂しさ、原動力に—真境名さん、えきまちで期間限定の沖縄料理店

 えきまちテラス長浜1階のレンタルスペースで、手軽な沖縄料理を提供する期間限定の「ゆきねぇのティーダ食堂」がオープンした。出店者の眞境名(まじきな)由樹さん(27)=相撲町=は「将来は、みんなの居場所になれるようなお店を出したい」と話している。

 沖縄県与那原町出身の眞境名さんは15歳で長浜市に移住した。現在は3人の子育てをしながら障害者福祉施設で介護士としても働いている。コロナ禍で自宅にこもって子育てしていた3年前、世間から孤立している寂しさを感じ、15歳で知らない土地に来た不安や、仕事を通じて知り合ったハンディキャップを抱える人たちの生きづらさにも共通していることに気付いた。「きっと同じ思いの人が多いはず。だったら、そんなみんなの居場所をつくりたい」と、自身のルーツである沖縄の料理を提供し、誰もが気軽に集える店づくりを思い描くように。

 長浜市パートナーシップ推進協議会が主催する起業セミナーに参加するなどして準備を進め、本格的に店舗を構える前にえきまちテラス長浜のレンタルスペースで出店することになった。

 メニューはタコライス(600円)、タコス(2個入り、650円)、沖縄そば・大(800円)など。また、外国人の友人に教えてもらった世界各国の料理を週替わりでサプライズ提供する予定。

 店のコンセプトは「食を通していろんな人がゆいまーる(※)できて、ちょっと幸せになれる場所」。眞境名さんは「このお店で毎日、違う出会いがあり楽しい。もっとたくさんの人に来てもらい、帰って来たいと思える場所にしたい」と話している。時間は午前11時から午後5時。火・水曜定休。営業は12月まで。

※=沖縄の方言で「人と人とが繋がる」「助け合う」の意味。