SDGs 持続可能な未来に向けて①

 最近、新聞やテレビで目にするSDGs。Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、2015年9月に国連で開かれたサミットで採択された国際社会共通の目標を指す。このサミットでは、2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が決定され、この中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいる。

 SDGsは「誰ひとり取り残さない」ことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標として、「貧困をなくそう」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「人や国の不平等をなくそう」など17のゴール(目標)を定めている。湖北地域でも企業や団体、教育機関などがそれぞれSDGsの各目標を念頭に置いた取り組みを推進し、その輪がじわりと広がっている。

 

 湖北地域でSDGsの啓発活動に率先して取り組むのが長浜ユネスコ協会の片山勝会長。学校や団体の研修会でSDGsについて解説し、その輪を広げようと精力的に活動している。いま、なぜSDGsが注目されるのか、そして、市民はSDGsにどう向き合えばいいのか、そのヒントを聞いた。

 なぜ、今、SDGsが注目されるのでしょうか?

 ◆世界は深刻な課題を数多く抱えています。森林伐採やCO2排出に伴う温暖化、そして異常気象。地球環境はいよいよ悪化しています。一方で、世界の人口は増え続け、国同士が限られた資源を奪い合うことになりかねません。紛争や貧困も、いまだに解決されない課題です。SDGsが国連で採択されたのは「世界は、このままではいけない」という意識が世界の指導者の間で広がったためです。

 長浜ユネスコ協会としてはどのような取り組みをされていますか?

 ◆書き損じはがきを募って現金化し、途上国の教育環境の向上を図る「世界寺子屋運動」は、SDGsの「質の高い教育をみんなに」(目標4)に通じます。教育を受けられないと、読み書きができない。そうすると安定した職に就けず、収入がなく貧困に陥ります。その貧困によってその子どもも教育を受けられないというスパイラルに陥ります。その連鎖を断ち切るのが「世界寺子屋運動」です。カンボジアに学校を整備し、教育を受けられなかった大人の女性にも教育機会を提供したりと、その成果は着実にあらわれています。

 世界寺子屋運動は「貧困をなくそう」(目標1)にもつながりますね。他にはどのような活動がSDGsに合致しますか?

 ◆終戦記念日に大通寺で「平和の鐘」を鳴らす事業は、「住み続けられるまちづくりを」(目標11)と「平和と公正をすべての人に」(目標16)に該当しますし、わたしのまちのたからもの絵画展は「質の高い教育をみんなに」(目標4)と「住み続けられるまちづくりを」(目標11)に、これまでに延べ2万2000人が受講した外国人市民向けの日本語教室は「質の高い教育をみんなに」(目標4)と、「働きがいも経済成長も」(目標8)に合致します。

自分ごと地域ごととして、明日から実践を

 長浜市内の学校でもSDGs実現に向けた取り組みがありますね。

 ◆小中学校や高校でSDGsの取り組みが広がっていることに注目しています。虎姫高校では古着や古本を保護者や生徒から集め、得られた資金で途上国の子どもたちのポリオワクチン接種や教育支援に活用する活動に取り組みました。高時小学校は地元のオオサンショウウオの保護活動を通じて源流の自然環境に関心を深めています。また、長浜西中学校は大花火大会後の会場でごみを拾うボランティア活動に毎年取り組んだ結果、年々、ごみの量を減らす成果を出しています。これらもSDGsの達成に向けた活動と捉えることができます。

 企業や学校、団体などがSDGsの活動に取り組んでいますが、一市民、一地域としてはどう向き合ったらよいのでしょうか?

 ◆決して難しいことはありません。例えば世界全体の食料援助は年間320万㌧です。しかし、日本の食品ロス(まだ食べられるのに捨てている食品)は646万㌧にのぼります。世界の食糧援助の倍の量です。日本では1人当たり毎日ごはん1杯分を捨てている計算となります。賞味期限や消費期限を正しく理解して、食品ロスを減らすことはSDGsの「つくる責任つかう責任」(目標12)に通じます。これなら、明日からでも、取り組めそうですよね。

 食品ロスの半数近くが家庭で発生しています。買い物や料理のスタイルを改めることで少しでもロスを減らしたいですね。

 ◆スーパーでの買い物でも、ハウス栽培の野菜よりも季節の野菜を買う、遠くの産地のものより地元産を買うことはエネルギーの削減にもつながります。つまり地産地消はSDGsの目標で言えば「海の豊かさを守ろう」(目標14)、「陸の豊かさも守ろう」(目標15)をはじめ、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」(目標7)、「産業と技術革新の基盤をつくろう」(目標9)、「気候変動に具体的な対策を」(目標13)にも貢献することになります。

 これならSDGsの実現に誰でも取り組めそうです。

 ◆ほかにも、すぐに実践できる取り組みはたくさんあります。こまめに電気を消す、水を出しっぱなしにしない、アイドリングストップを心掛ける、簡易包装の商品を選ぶなどです。服を買う時に、SDGsの達成に向けて取り組んでいる企業の商品を選ぶなど、消費行動でも協力できます。琵琶湖の湖魚を食べることも地産地消にもつながりますね。最も大切なことは、自分自身がSDGsという物差しを持ち、「自分ごと」「地域ごと」としてとらえて、できるところから実践してゆくことです。

掲載日: 2021年09月22日