市民・観光客の憩いの場に 31日オープン
120年以上の歴史を持つ県内最古の私設図書館「江北図書館」(木之本町木之本)の南隣にカフェや閲覧室を設けた新館「Lib⁺(リブプラス)」が完成し、31日オープンする。
江北図書館は1902年に設立された「杉野文庫」を前身とし、75年に現在の建物である旧伊香郡農会庁舎に移転した。建物は前面中央に千鳥破風、2階部分に4連の半円アーチの窓と5つのバットレス(主壁を補強する控え壁)を備えた近代建築物で国の登録有形文化財にもなっている。
建物の老朽化が著しい上、トイレはくみ取り式しかないため、図書館を運営する公益財団法人江北図書館がクラウドファンディングなどで集めた寄付金2194万円を活用して、建物の応急修繕、水洗トイレを備えた新館の整備に取り組んできた。
新館は木造平屋43平方㍍で、多目的フリースペース、厨房、トイレからなる。屋外にはベンチを設けた。地元の「つるやパン」が管理し、コーヒーやパンを提供するカフェも運営する。図書館の利用者や学生、地域住民、観光客の憩いの場として自由に活用してもらいたい考えで、「Lib⁺」は今までの図書館にいろんなものをプラスして新たに創造していくという思いを込めている。
応急修繕は図書館本館の外壁のひび割れ補修、腐食した柱の取り替えなどを実施した。
「多くの人の協力で新館整備と修繕が完了し、『感謝』のひと言です」と語るのは財団法人の岩根卓弘理事長(49)。「120年間守ってきた図書館は唯一無二の貴重な存在。今後も守り続けることによって地域愛の醸成につながる。子どもはもちろん、中高生、地域の老若男女に気軽に立ち寄っていただきコミュニケーションが生まれる場になれば」と話す。
開館は午前10時から午後4時まで。火・水曜休み。
応急修繕と新館のオープンは江北図書館の保存に向けたスタートで、目標は築86年の建物の大規模修繕と将来にわたる持続可能な運営。まとまった収益源を持たない財団法人が幅広い呼びかけで浄財を集め、国や自治体の補助金に頼らずに新館建設や応急修繕ができたことに関係者は手応えをつかんでいる。
今後、財団法人では理事9人に各分野の専門家や地域住民らを加えた19人で図書館保存活用方法検討委員会を発足させ、持続可能な図書館の姿を探る。また、大規模修繕に向けた寄付も計画的に受け付ける。早ければ2026年から設計に着手したい考えで、新館整備と運営はそのための足がかりとなることが期待されている。
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新館「Lib⁺」のオープンを記念したイベント「うれし!めでたし!本ざんまい」が31日開かれる。
新館は地元の「つるやパン」のカフェを併設した多目的スペースで、午前10時10分から完成セレモニーがある。イベントは約20店舗が集まる一箱古本市「いろはにほん箱」、絵本「パンやのポポさん」読み聞かせ(午前11時、午後2時)、「すいーとほーんズ」によるホルンコンサート(正午)など。午前10時から午後4時まで。