川道で「オコナイ」改革3年目、400人参加
五穀豊穣などを祈願する湖北地域の伝統行事「オコナイ」。少子高齢化などによる担い手不足で存続が危ぶまれる中、湖北随一の規模で知られる川道神社のオコナイでは自治会が主体となって改革を実施し、慣習で認めてこなかった女性参加を解禁するなど持続可能な行事へと変貌を遂げている。
川道のオコナイは7つの「庄司(しょうじ)」(オコナイ組)ごとに1俵のもち米から80㌔以上の大きな鏡餅をつくり、「屋台」と呼ばれる神輿状の台に載せて神社に奉納する。その規模から湖北最大のオコナイと呼ばれてきた。
庄司は東村、西村、中村、藤之木村、川原村、東庄司村、下村の7つあるが、それぞれの村で「當番」(当番)2軒がオコナイ行事の準備を担当する。かつて當番宅は集会所として使用されることから畳や襖、玄関、風呂を新調したり、料理を振る舞ったりと負担は小さくなかった。その負担から川道町に嫁ぐことを敬遠する女性もいたという。
近年は少子高齢化の深刻化と若者の転出で担い手が不足し、2021年に各庄司が実施した調査では、當番を担うことができない家が川道町全体の約6割に上った。
「従来通りのオコナイは、近い将来、不可能になることは避けようのない現実」。危機感を抱いた関係者は同年、自治会内にプロジェクトチームを設けて、持続可能なオコナイのため簡素化を協議するとともに、「SDGs」の視点から「誰1人取り残さない」として女性参画も模索した。
その結果、オコナイは自治会が主宰する▷鏡餅は7つから1つへと減らす▷従来の當番宿に代わる会場をコミュニティセンターとする▷開催は1日だけとする▷屋台の担ぎ手は男女を問わず希望者を募集する—などとする改革案をまとめた。オコナイの伝統の維持を求めて改革案に反対する声もあったものの、16歳以上の全町民を対象に実施したアンケート調査(回答率82・0%)では95%が改革案に賛同し、町民の圧倒的支持を取り付けて大変革することとなった。
改革3年目となった今年のオコナイは25日に行われ、住民約400人が参加した。会場のコミュニティセンターから川道神社までの道のりを「カンバン」と呼ばれる法被を着た老若男女が鏡餅を乗せた屋台と一緒に練り歩き、子どもたちは鉦を打ち鳴らして囃した。神社境内では女性も参加して屋台を担ぎ、拝殿に鏡餅を運び入れた。
オコナイ委員会の一員として子どもを交えた企画を考案した塚田美晴さん(46)や、カンバンを羽織って屋台を担いだ中川祐子さん(43)、香水麻未さん(38)は「歴史の重みを感じた」と語った。「オコナイは男性の行事で、女性は触れてはいけないと思っていたので、女性が参加することを聞かされた時は、えっと思った。中に入ってやってみると楽しい」と話し、「つながりができ、世代を超えた交流ができた」と笑顔を見せた。
沢田浩臣オコナイ委員長(66)は「今年のテーマ『みんなの川道オコナイ』通りに、子どもや女性の参加が多く、雨にもかかわらず境内はいっぱいで、過去にない広がりを見せた。女性に刺激されて男性も楽しそうでした」と満足気。「同じことをしていては伝承できない。伝統とは革新の連続です」と、オコナイ改革をけん引してきた前田光治さん(68)も女性や子どもが楽しそうに参加する様子に目を細めていた。