勝町 福井俊文さん(80)
ヤンマーで培った品質管理技術を活用して「おもちゃ病院長浜」の一員として修理ボランティアに励む。「おもちゃが直ったときの、子どもの笑顔が一番の励みになります」と話す。
おもちゃ病院は毎月第4土曜、虎姫時遊館に開院し、市民が持ち込むおもちゃを無料で修理している。メンバーは60〜80代の18人。最年長の福井さんは複雑な電子回路があるおもちゃも持ち前の技術で直してしまう。
もともと工作が好きだった福井さんは、仕事に一区切りがついた60代から地元の児童文化センター「サンサンランド」で「たのしく作ろう」と題した工作教室の講師を務め、子どもたちに牛乳パックを使った工作などを教えていた。また、身体が不自由な障害者や高齢者の悩みを解消する便利な道具「自助具」を手作りするボランティアグループ「湖北虹工房」の一員としても活動。グループはメンバーの死去などにより解散し、それを受けて、新たに加入したのがおもちゃ病院のグループだった。
湖北虹工房で作っていた自助具は今でも製作依頼が舞い込むことから、おもちゃ病院に「リハビリ科」を新設して自助具の制作にも励んでいる。
なぜ、福井さんはこうもボランティア活動に熱心なのか。その原点を紐解くには長崎県で送った大学生活の経験にさかのぼる。長崎造船短大(当時)で3年間学び、いよいよ卒業試験というときに1週間余り風邪をこじらせ寝込んだ。「故郷から遠く離れて不安な中、下宿先のおばさんに付きっきりで看病をしてもらった。その時の恩を長崎県に返したいと、大学卒業後に長崎県の離島にある小学校に図書を送る活動を始めた」と振り返る。毎月2〜3冊の雑誌や児童書を贈り、その活動は寄贈先の学校が廃校になるまで20年以上続けた。児童たちとは手紙などを通して交流も生まれた。
遠く離れた地で温かい心に触れたのをきっかけに、今も続けている奉仕活動。福井さんは「活動が私の心の支えとなり、子どもたちの笑顔が私を元気づけている。こうした活動ができるのも妻の支えがあるからこそ」と語る。
「さらに修理技術を高め、できるだけたくさんのおもちゃを修理できるようにしたい」と意欲旺盛な福井さん。「自助具の制作を次の世代にバトンタッチするためにも、リハビリ科を担う後継者もつくりたい。大事な仕事です」と話している。