表彰状を手にする原耕一さん(前列中央)、坪井翔さん(左)、高橋直政さん(右)
湖北地域消防本部は7日の「消防の日」に合わせ今年度の消防表彰式を行い、人命救助活動に貢献した男性に感謝状、消防機器を開発した消防職員2人に表彰状を贈った。
原さん、人命救助に貢献 小谷山で遭難の高齢女性を発見
感謝状を贈呈したのは、昨年12月に小谷山で発生した山岳遭難事故で一時行方不明になった高齢女性(88)を山中で発見するなど救助活動に大きく貢献した静岡県袋井市の原耕一さん(61)。
山岳遭難は12月6日に発生。小谷山の小谷城跡に息子と一緒に訪れた愛知県内の女性が山中で行方不明になり、午後4時半ごろに警察に通報があった。女性は翌朝に無事保護された。
原さんはこの日、観光で小谷山を訪れ、午後4時半ごろ山頂付近で女性と出会っていた。「元気ですね」と声かけて一緒に山頂まで歩いた後、「一緒に下山しよう」と声をかけたが、女性が「この先で待ち合わせしている」と話したことから、別れて1人で下山。麓の駐車場に到着した時、女性が遭難していることを知った。
「あの時、一緒に連れて下山していれば」—。責任を感じた原さんは翌7日の早朝、再び小谷山に登った。最後に女性と出会った場所から、遭難場所を特定できるのではという期待もあったという。山頂から女性が向かったと思われる方向へ谷筋を20分ほど下ったところで岩に腰掛ける女性を発見。警察に通報するとともに、予備のダウンジャケットを着せて菓子や水を提供し足をマッサージするなどして、捜索隊が到着するまで女性に寄り添った。
原さんは「女性は軽装だったが、元気そうだったので安心した」と振り返り、「先日、息子さんから元気にやっていると手紙が届きました。遭難して病院に搬送された日も温泉に入ったそうです。元気でよかった」と話している。
この日、湖北地域消防本部で清水正幸消防長から感謝状を受け取った原さんは「このような感謝状は一生に一度あるかないか、非常にありがたい。旅行と合わせて長浜に来た。1週間程、滋賀県内をめぐりたい」と話していた。
圧迫止血器具を考案 米原消防署の高橋さん、坪井さん
消防機器「マルチ圧迫止血器具」の開発で表彰を受けたのは米原消防署消防士長の高橋直政さん(40)と坪井翔さん(36)。全国消防協会主催の「消防機器の改良及び開発並びに消防に関する論文」で東近畿支部代表として推薦され全国大会で審査された。入賞はならなかったものの、2人は「この経験を止血処置の住民啓発に生かしたい」と話している。
2人が考案したのは、シューズなどに使用されている、紐を結ぶ代わりにダイヤルでフィッティングを行う「BOAシステム」と、ゴムボールを組み合わせた止血器具。出血している部位にガーゼを当て装着し、ダイヤルを回すことでゴムボールが加圧されて変形し面で傷口を圧迫することが可能になる。特殊な技術や知識が無い市民でも扱えるのが特徴。
2人は救急隊員として現場に到着した際、傷病者の傷口がうまく止血できていないケースに何度も直面。「止血に不慣れだったり、出血量の多さに驚いたりと、一般の方にとって止血は不安がある。その不安を少しでも和らげる器具があれば」と開発に乗り出し、約半年かけて試作を繰り返した。
完成した止血器具は滋賀県審査、東近畿支部の審査を通過して全国消防協会主催の全国審査へと推薦された。
2人は「製品化されて一般に浸透すれば傷病者の苦痛軽減につながる」とした上で、「表彰を励みに、これからも一般住民に分かりやすい応急処置、止血処置を啓発していきたい」と話している。