県内最古の私立図書館 理事一新 有志集い次世代へ継承
開館から114年にわたって地域住民によって運営されてきた県内の最古の私立図書館「江北(こほく)図書館」(木之本町木之本)。資金難や建物の老朽化、利用者の減少など課題が山積する中、図書館を運営する公益財団法人江北図書館はこのほど理事を一新し、新しく策定した「基本方針」に基づき図書館再生に動き出した。
同図書館は旧余呉村出身の弁護士・杉野文彌氏(1865〜1937年)が「郷土の青少年に読書に親しむ機会を」と1902年(明治35)、私財を投じて杉野文庫として設立したのが前身。これを継承して07年に財団法人が設立され、翌年に江北図書館が開館した。75年からは旧伊香郡農会の建物を図書館としている。
開館から100年以上を経過する中、各地に公立図書館が次々と誕生し、利用者が減少。支援を受けていた伊香郡町村会が市町合併を機に解散して以降は資金難にも見舞われ「今後の運営は資金的に見通しが立たないのが現状」としている。また、築84年の2階建ての建物は雨漏りするなど老朽化が深刻な状態となっている。
そんな苦境にあえぐ地域の私立図書館を再生しようと地域住民有志が集い、今年6月に理事を一新した。地域活動に熱心に取り組む30代、40代の若手を含め9人体制で発足した理事は、これまでより平均年齢が約20歳若返ったという。
理事長には岩根卓弘氏(47)=キクヤ社長=が就任し、副理事長として平井和子さん(読み聞かせグループ木のポン代表)、太田浩司氏(長浜市学芸専門監)が支える。館長には久保寺容子(ひろこ)さん(あいたくて書房店主)が就き、これまで40年にわたって理事長を務めてきた冨田光彦(てるひこ)氏(滋賀大名誉教授)は名誉館長に。
新たに策定した基本方針は、杉野氏が抱いた青少年育成と地域文化向上の思いを大切にし、地域に貢献する図書館を目指す、としている。具体的には▽子どもの本を厳選した開架▽館内での読み聞かせ会やワークショップの開催▽歴史資料の調査・研究▽レトロな建物の維持と活用▽前庭を活用したイベントの開催▽地域の情報収集と発信の拠点づくり▽「図書館だより」の発刊—などを掲げている
岩根理事長は「長い歴史を持つ江北図書館がこれから先も地域に貢献し地域住民から必要とされるよう、次世代にしっかりと受け継いでいく」と決意を語り、「図書館のイメージを一新するため小さな事業を積み重ねていきたい」としている。
久保寺館長は「建物も蔵書も古いが、それが魅力でもある。これを発信して多くの方に足を運んで興味を持ってもらい、江北図書館が大好きと言ってもらえる人を増やしたい」と話している。
なお、江北図書館の開館時間は火〜土曜が午前10時から午後4時まで、第2、4、5日曜が午前10時から午後2時まで。第1、3日曜と祝日は休館。