43年の歩み伝える36点 長浜文芸会館
彫刻家で日展会員の吉居寛子さん(62)=新栄町=が長浜文芸会館で作品展を開いている。昨年、高校教諭を定年退職したのを機に、大学生以来43年間の創作の「歩み」を振り返る個展を初めて企画した。
高校で美術部に入っていた吉居さんは滋賀大生時代に先輩に誘われて彫刻のアトリエを訪れたのを機に「平面ではなく立体、風景ではなく人物を表現したくなった」と、彫刻に打ち込んできた。
学生時代に日本彫刻会展覧会(日彫展)で入選したのを皮切りに、高校美術教諭のかたわら、日展や日彫展で入賞を重ね、現在は両展の審査員を務めている。作品は市立長浜病院、長浜赤十字病院に寄贈されている。新しい長浜北高の校章も作成した。昨年、長浜北高を最後に定年退職し、現在は同校の美術講師を務めている。
作品は粘土で作った原型に石膏を塗り重ねて乾かして雌型を作り、そこに樹脂などを塗り込んで硬化させ、石膏を取り外す。最後はやすりなどで継ぎ目を滑らかにして完成となる。石膏の雌型はパーツごとに作るため、等身像になるとパーツは20を超えるという。
個展では石膏や樹脂などで作った等身像や胸像、頭像5点、レリーフなど36点を展示している。
大学生時代に制作した樹脂の等身像や、薄布をまとった裸婦の美しさを石膏の白さを生かして表現した「wish」シリーズ、東日本大震災の被災者への鎮魂の思いを込めた「レクイエム」、今年初めてチャレンジしたテラコッタ(素焼き)など、吉居さんの43年の歩みが伝わってくる作品が並んでいる。内保町に設置されている戦没者慰霊碑「まなざし—母子像」(2007年制作)の原型も展示している。
個展では彫刻の魅力を知ってもらおうと、一部の作品を除いて、手で触れることができる。来場者に肌ざわりや質感を直接、体験してもらいたい考えだ。また、3日、5日の午前11時からは粘土で頭像を作るようすを実演し、見学を歓迎している。
吉居さんは「長浜にいると、美術館で彫刻を見る機会は少ない。立体の人物像の雰囲気を味わってもらいたい」と話している。
午前10時から午後5時、7日まで(最終日は午後3時まで)。