「稼げる農業」目指し、2.5㌶で実証栽培
「稼げる農業」の実現を目指し、長浜市の呼びかけで加工用トマトの栽培に取り組んでいる市内の農家で収穫作業が最盛期を迎えている。専用機械導入で作業の省力化を図ったうえ販路先企業と全量買い取りの契約を結び、市は「転作作物として農業経営の安定した柱のひとつになる」と期待を込めている。
市内では米作りが盛んに行われているが、米の消費落ち込みに伴う米価下落が農業経営の課題となっている。このため、市は「稼げる農業」を目指して転作作物の実証栽培を農家の協力で進め、小谷城スマートインターチェンジ周辺での農業関連産業の振興も視野に入れている。
そこで目を付けたのが加工用トマトの栽培。市が販路先の企業とのマッチングを支援した結果、カゴメ、ヤンマーマルシェの2社との連携が実現した。カゴメからは栽培方法や技術の提供、ヤンマーマルシェからは栽培支援を受けている。また、事前に買い取り価格を決定し、収穫の全量をカゴメが買い取る契約栽培となっている。
昨年は生産者1軒が0.3㌶で栽培し、今年は6軒が計2.5㌶で取り組んでいる。
栽培はカゴメが開発した苗を用いた。トマトはハウスで支柱を立て栽培するのが一般的だが、同社が開発した加工用トマトは露地で、支柱無しで栽培でき、転作作物に最適という。さらに、実証栽培にあたり、加工用トマト専用の機械の無償貸与を受けている。
収穫の最盛期を迎え、7月下旬から作業が始まった。26日には湖国農産(脇坂良平代表)の湖北町八日市の畑で、生産者が真っ赤に実った小型のトマトを機械で次々と収穫していた。トマトはジュースなどに加工される。
生産者は機械による省力化と収量に手応えを感じており、市農林政策課の尾崎栄治課長は「農業経営が不安視される中、加工用トマトの栽培は、販路先と買取価格が確定していることから、水田転作の作物として農業経営の安定した柱のひとつになる」と話し、今後、産地化を目指すことで長浜産のブランド力と取引価格を高め、生産者の所得向上につなげたい考え。