地元に根ざしたチームづくりを
旧虎姫町月ヶ瀬出身で、第102回全国高校サッカー選手権大会で準優勝に輝いた近江高校の前田高孝(たかのり)監督(38)が25日、長浜市役所で浅見宣義市長と対談。湖北のサッカー少年が目指したいと思えるようなチームづくりへの意欲を示し、長浜市へは人工芝グラウンドなどサッカー環境の整備を求めていた。
国立競技場で行われた決勝戦で着用した黒いベンチコート姿で対談に臨んだ前田監督は全国大会について「選手が1試合ごとにものすごく成長した」と選手の頑張りを振り返り、「国立の決勝であれば観客5万5000人。その中で自信を持ってプレーできるかどうかは、日ごろから試合を意識した練習にある」と語った。
近江高は京都サンガFC、ガンバ大阪ユース、セレッソ大阪U18などの強豪が集まる「関西プリンスリーグ」の1部と2部にAチーム、Bチームがそれぞれ参加。1年を通して強豪チームと試合を重ね、選手の成長を促している。また、Aチーム、Bチームの選手を入れ替え、その「切磋琢磨」がチームの成長につながっているとした。
前田監督が近江高に就任したのは2015年。部員の数が足りないため最初の1年は部員募集に動き、2016年から本格始動した。
どのような思いで近江高の監督に就任したのか。「私が中学3年の時、こちらで強い高校がなく、草津東高へ1時間半かけて行った。やはり、こちらの地域で子ども達が目指せるようなサッカーの強いチームをつくりたいとの思いがあった」と話した。
前田監督によると、湖北出身のプロサッカー選手は自身のほか、柏レイソルなどで活躍した橋本和選手、近江高卒で琉球FCの山内舟征選手の計3人しかいない。「南の方は何十人とプロがいる」と比較し、県北部のサッカーの隆盛を目指している。
浅見市長から「長浜では昨年、湖北キッカーズが初めて県で優勝した」と報告されると、「県大会で湖北のチームが優勝したのは嬉しいニュース」と語った。
前田監督は「中学生は南のクラブチームに行く。そこから県外の高校を目指す。そこが課題」とし、子たちが目指したくなる魅力あるチームづくりに意欲を示した。
浅見市長から湖北地域の子どもたちへの指導を提案されると「できることがあれば」と応じた上、「人工芝のサッカーグラウンドなどがあれば」とサッカー環境の整備を提案していた。
また、浅見市長から日本一への意欲を問われた前田監督は、「日本一を目指すことだけが目的ではない」と語り、選手の人間的な成長も大切にしているとした。
「(青森山田のような)全国区になるには大きな組織が必要になる。大きくすると試合に出られない子も出てくる」と語り、「こじんまりとした感じで地道にやっていきたい」とし、「田舎のうまい蕎麦屋」のような地元に根ざしたチームづくりを目指す決意を示した。
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前田監督は草津東高校でフォワードとして活躍し、卒業後は清水エスパルスに入団するも、ひざのけがで2年目のシーズン終了後に戦力外通告を受けた。
シンガポールやドイツなど海外でのプレーを経て、23歳で帰国し、後に関西学院大学へ進学した。在学中は、西宮サッカースクールジュニアユースで育成した中学生たちが市立西宮高校に進学し、全国大会で8強入り。前田監督のコーチング術が脚光を浴びるようになった。
その後、関学サッカー部のヘッドコーチに招かれ、関西選手権優勝、全国大学サッカー選手権準優勝の成績を残した。そして「地元にサッカーの強豪を作りたい」との夢を果たすため、2015年4月に近江高へ赴任。当時、「滋賀で育ててもらった恩返し。近江高が強くなることで、県全体のレベルアップを目指したい」と語っていた。