佐藤さん地域おこし協力隊へ託す
余呉町中河内の佐藤登志彦さん(84)が長年していた炭焼きを地域おこし協力隊のメンバーが引き継ぐことになった。新体制による炭焼きの開始に合わせ、伊香高校の生徒たちが社会学習の一環で作業を体験している。
昔、宿場町だった中河内では製炭が主幹産業で、「炭は硬くて火持ちがよい」と評判で敦賀や農協などに出荷していた。しかし、燃料革命により需要が減り、生産する人も減少。佐藤さんは20歳ごろから、炭作りをしていたが、35歳には廃業していた。
町内で炭焼きを復活する動きがあり、佐藤さんは10年程前、田んぼを重機で掘り起こし、奥行き2・7㍍、幅1・9㍍のドーム型の1口窯を作った。コナラなど約4㌧を入れ、火入れ。窯の中を700℃以上にし、空気の量を調整しながら、5日から1週間ほど燃やし続けると400㌔程度の炭ができあがるという。
しかし、炭焼きは重労働で危険。高齢の佐藤さんは昨年、引退を決め、後継者として同町上丹生で炭焼きをしている隊の子林葉さん(38)と堀田涼介さん(27)に中河内の炭窯を託した。
伊香高生が体験 地域の課題解決へ
伊香高では地域を見つめ直し、地域課題を解決できるような生徒を養成するモデル事業に取り組んでいる。
2日間の炭焼き体験には理系、地域文化コースの2、3年の延べ50人が参加。7月30日には佐藤さんや地元の若者らで作る「中河内の未来を考える会」のメンバーのアドバイスを受けながら、窯から約300㍍離れた山で伐採された広葉樹の枝を切って揃え、トラックに積載。汗だくになりながら、窯の近くまでの搬送を手伝った。佐藤さんは「若い人たちが手伝ってくれ、心強い。後継者ができ、これで安心。一人前になるよう指導してゆきたい」と話していた。
4日に火入れする予定で、仕上がった炭は会や伊香高が販路を模索しながら、有効利用などを検討。地域のために活用してゆく。
3年の浅田琉衣さんは「作業はしんどいが、したことがないことをするのが楽しい。昔の人たちはコンビニがなくても、自分達で何でも頑張り、生活をしていた」と話し、子林さんは「(生徒たちは)皆、集中して夢中になっており、希望が持てる。炭焼きは無理のない範囲で長く続けられるようにし、生業になれるような仕組みを作りたい」と語っていた。