「姉川クラゲ」食文化復活へ

龍谷大など、米原市小泉で試験栽培

 姉川上流で採取され、戦中・戦後は地域の食卓を飾っていた藻類の一種「姉川クラゲ」の食文化発信と特産品化を目指し、龍谷大など8者で結成する普及推進協議会が米原市小泉で試験栽培を始めた。

 姉川クラゲは一般的に「イシクラゲ」と呼ばれ、陸上に繁殖する藻類。ワカメのような見た目で、庭の片隅や駐車場、学校のグラウンドなどさまざまな場所で見かける。姉川上流では石灰成分を含む湧水で自生環境が整っており、戦中・戦後は酢の物や天ぷら、みそ汁の具などとして地域住民に食されていたという。

 その研究に打ち込んでいるのは龍谷大学農学部の玉井鉄宗講師(56)=植物栄養学。玉井講師によると、イシクラゲは高温や低温、真空、宇宙線など過酷な環境でも死ぬことがないうえ、大気中の窒素を取り込んで自ら栄養を作り出せるなど、驚きの生命力を持つ。例えば、乾燥状態では無代謝で休眠し、水を与えることで休眠から回復し活動を再開する。遠い未来のテラフォーミング(惑星地球化)構想でも最初に惑星に送り込んで土壌改良する候補に想定されているという。

 その「超環境ストレス耐性」を持つイシクラゲは、抗ガン、抗ウイルス、抗酸化、紫外線吸収などの機能性成分を多数含むことも明らかになっており、製薬会社などもサプリメントや医薬品、化粧品の原料などとして注目している。

 2018年から姉川クラゲを研究している玉井講師は研究室での栽培に成功している。食文化復活と地域振興を目指し、地元の小泉区や県、市、製薬会社などに呼びかけ、8者で姉川クラゲ普及推進協議会を結成して本格的な試験栽培に乗り出した。

 姉川クラゲを活用した地域活性化を応援する県は、国の農山漁村振興交付金を活用して事業費を捻出。3年間で最大3000万円活用する。

 栽培は小泉の姉川沿いの休耕田にビニルハウス1棟を建てて実施。湧水と紫外線のみで栽培し、肥料は用いない。散水、点灯は自動制御し、手間がかかることはないという。

 23日には研究室の学生や地域住民が人工芝の上にイシクラゲの断片を並べる作業を行った。試験栽培は3年かけて行い、玉井講師は「実験室レベルではうまく栽培できたが、屋外は初めて。うまくいけば貴重な姉川クラゲを使って栽培したい」と話している。いぶきファーム代表で同協議会の谷口隆一会長(67)は「小泉は石灰岩の湧水が無尽蔵にある。石灰を好む姉川クラゲを育てる環境に適している。3年間の試験で絶対に成功させたい」と話している。

掲載日: 2023年10月24日