駆除鹿の命、無駄なく余すことなく

永井さん、ペット用ジャーキーと革製品を開発

 駆除されたシカを地域資源として有効活用しようと、木之本町木之本の永井友恵さん(54)がペット用ジャーキーと革製品の開発、販売に挑戦。「シカの命を無駄にせず、余すことなく使いたい」と持続可能な事業化を目指している。

 農作物の獣害や森林荒廃の一因であるシカは駆除の対象となっている。ただ、駆除後に「ジビエ」などとして利用されているシカは一部に限られ、多くが廃棄されているのが実情。

 永井さんはシカを活用した商品開発で需要を増やせれば、駆除されたシカの廃棄が減り命を無駄にすることがないと、肉と皮の活用を模索した。

 シカ肉に注目したきっかけは家族として迎え入れている4頭の保護犬の存在がある。保護犬は飼い主に捨てられたり、虐待を受けたりした経験から心と身体に問題を抱えていることが多いという。永井さんが市販のシカ肉ジャーキーを与えたところ食いつきが良かったことから、知り合いの猟師から直接シカ肉を購入して食べさせるように。「今ではどの犬も見違えるように、元気に、愛らしく生まれ変わった」と話す。

 「高たんぱくで、鉄分、ビタミン、ミネラルを多く含み、脂肪は牛赤身肉の5分の1とも言われている。野山を駆け回り、その恵みを食べ生きてきたシカの肉は生命の力を秘めた天然の無添加食材」と絶賛する永井さん。「もっと多くの人に身近に感じられる商品として届けしたい」と、16年勤めた会社を辞め、今年2月シカ肉や革製品を開発、製造、販売する個人事業「MyGo」を立ち上げた。

 犬、猫などのペット用ジャーキーは福井県小浜市の猟師・大場明さんから買い付けたシカ肉に相性の良いベリーを合わせて作った。「愛犬の喜ぶ顔と健康を通して、シカ肉の良さを感じていただければ」と話す。

 革製品はバッグ、サコッシュ、コースターがあり、小浜市の革工芸作家・木崎亨さんに加工を依頼して製作したもの。軽くてしなやかで耐久性があるのが特徴という。

 永井さんは「狩猟は単に命を奪うだけでなく、自然との関係を深め、命の循環を感じる貴重な経験。ジャーキーや革製品からシカを身近に感じてもらえれば」と話している。

 なお、現在、獣害駆除されたシカの購入費や皮の加工費、フード乾燥機の導入費用などを募るクラウドファンディング(CF)を実施している。詳細はCFサイト「キャンプファイヤー」(https://tinyurl.com/yk36c3dn)から。

掲載日: 2023年10月12日