スペイン学生、金継ぎ修業

「不完全な美」に魅了され、塗師・杉中さん指導

 欠けた器を漆で接着して金で装飾する日本の伝統技術「金継ぎ」を学ぶため、スペインの市立バルセロナ大学で文化財修復を専攻するマリーナ・デュアルテさん(22)が3日来日し、16日までの2週間、仏壇仏具店「宗永堂」(国友町)の店主で塗師の杉中伸安さん(59)のもとで修業に励んでいる。

 金継ぎは、壊れた物を直して大切にする精神性とそのデザイン性が評価され、海外では「KINTSUGI」として注目を集めている。

 マリーナさんも大学で建築物やフレスコ画、陶磁器などの文化財修復を学ぶうちに金継ぎに魅了され、漆を輸入して手探りでチャレンジしてきた。本格的に学んで論文を制作するため訪日を決意し、海外向けの金継ぎ紹介サイト「The kintsugi Labo Japan」を介して宗永堂に行き着いた。

 宗永堂の工房では杉中さんの指導で金継ぎの技法や道具作りを一から教わり、金継ぎ紹介サイトを運営している磯野研さん・三知恵さん夫婦(栗東市)が通訳を買って出ている。

 6日には割れた皿の修復に挑戦した。断面に竹べらで麦漆を丁寧に塗り、優しく力を入れて接合。接合面に段差ができていないか、杉中さんが確認していた。マリーナさんは独学で金継ぎに挑戦していたこともあり、竹べらの使い方も手慣れ、杉中さんは「とても上手」と感心していた。

 杉中さんは「限られた期間だが、できる限りのノウハウを伝えたい。スペインにある材料で金継ぎに必要な道具も作れるように指導したい」と話している。長浜滞在中は社寺仏閣や博物館なども案内し、漆文化への造詣を深めてもらいたい考えだ。

 「壊れた物をただ修復するだけでなく、新しい価値を生み出す日本の文化と精神性、傷があっても美として愛でる『不完全な美』に魅了される」とマリーナさん。「本格的な金継ぎを学び、教えられたことを生かしてスペインで一番の金継ぎアーティストになりたい」と話している。

掲載日: 2023年07月07日