ササユリ 今年も咲き始める

山門水源の森でシカ食害対策実る

 希少植物が数多く群生している西浅井町山門の森林公園「山門水源の森」でササユリが咲き始めた。

 ササユリはかつてはどこの里山でも見られる一般的な植物だったが、シカの食害により各地で姿を消している。山門水源の森でもシカの食害で一時激減し、有志団体「山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会」の保護活動で徐々に数を増やしてきた。依然としてシカによる食害が続いているものの、西浅井中の生徒の種まき、地元の老人会による下草刈りなど地域上げての協力が実を結んでいる。

 まだ蕾のものも多いが、名前の由来となったササに似た葉を風に揺らしながら、淡いピンクや白の花を咲かせている。同会の村田良文副会長は「日ごろの活動の成果が実って今年も咲き、ホッとしています。凜とした上品さと優しい香りを楽しんでもらえれば」と話している。6月中旬にかけて次々と花を開く。今はコアジサイも咲きそろっている。

 森は約4万年の歴史がある山門湿原をはじめ、ブナ原生林や沢などがあり、希少植物が数多く群生。

 この時期は森林浴と多様な植物観察を楽しめる。1時間〜3時間半ほどで楽しめる散策3コースが設けられ、ササユリは「湿原往復コース」(約2・5㌔、約1時間)と「四季の森コース」(約3・5㌔、約3時間)で観察できる。

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 山門水源の森は1960年代までは炭の産地として地域住民の生活を支え、手入れが行き届いた里山だったが、近年は放置されていた。90年、一帯を開発するゴルフ場計画が具現化したことで、山門湿原の地質や植生、昆虫を調査していた研究グループが県や西浅井町に計画中止を要望。同時に湿原の多様な自然環境に注目が集まり、林野庁の「水源の森100選」に選ばれるなど、保全への機運が醸成されることとなった。ゴルフ場計画がバブル崩壊で中止となった後も保全が課題となり、2001年、県民有志で「山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会」が結成され、保全活動が今に続いている。

掲載日: 2022年06月03日