中川家住宅能舞台 国登録文化財に

地福寺町の住宅に併設  地域芸能の拠点

 地福寺町の個人宅にある昭和初期の能舞台が国の登録有形文化財に新たに登録されることが決まった。

 登録が決まったのは中川家住宅能舞台と土蔵。能舞台は東京の観世流で修業した中川清氏(1900〜84年)が1931年(昭和6)、自宅に併設した。木造平屋建て切妻造り。舞台の大きさは3間四方で、後部には地元の日本画家が松の絵を描いた鏡板がある。舞台の南と西は見所(観客席)となっている。舞台の床下には陶器製のが6カ所に据えられ、演者の足拍子の音が響きやすい構造。土蔵は明治期の建築で、能の道具の収蔵蔵として使用されてきた。

 能舞台を拠点に清氏と2代目の雅章氏(1930〜2016年)が能楽文化の継承と普及に努めた。また、湖北地域を代表する近代画人の加納凌雲、国友敬三もここで能楽に親しんだ。京都工芸繊維大学の日向進名誉教授(建築史学)は「地域芸能を支えた能舞台と収蔵蔵として、他に類例がなく、建築史上はもとより、地域芸能史上でも貴重な文化財」とコメント。

 近年、能舞台で能楽が演じられることはなく、最近になってクラシックコンサートの会場などとして利用されている。雅章さんの娘で、能舞台を管理する野上寛子さんは「登録を機に活用の機会が増えれば、舞台を造った祖父母にも、維持してきた両親にも喜んでもらえる」と話している。

掲載日: 2020年07月18日