樹木医の北村さん 大臣賞

古木の治療・管理、地域住民と一緒に

 米原市宇賀野の造園業「景樹園」社長の北村正隆さん(71)が緑化功労者として農林水産大臣賞に輝き、岩手県で開かれた全国植樹祭で感謝状が贈られた。長年、樹木医として県内の巨木、名木の治療・管理に取り組んでいることなどが評価された。北村さんは「たくさんの人のサポートがあったおかげ。これからは若い樹木医に知識や技術を伝えて育てたい」と話している。

 子どものころから植物に興味のあった北村さんは米原高を経て九州の大学で造園を学んだ。卒業後は奈良や大阪の企業で造園に携わり、1983年に独立・開業。1996年に樹木医の資格を取得した。

 浜湖月、姉川温泉をはじめ湖北地域を中心に庭園の設計・施工を担うほか、県レイカディア大学園芸科講師、シルバー人材センターの葉刈り講習会の講師なども務める。

 樹木医としてはこれまでに、東近江市の「信長馬繋ぎのマツ」(樹齢450年)、日野町の正法寺の藤(樹齢約300年)、マキノ高原の千本桜などの古木の診断や治療を行ってきた。古木は土、空気、水、日照といった条件が整って今に残っているといい、「木々によって生き様は異なる」と語る。

 印象に残っているのは、高時川の氾濫から堤防を守った御神木として地域の野神信仰の対象となっている高月町柏原のケヤキ。樹齢は推定500年で、こぶだらけの幹が特徴だ。高時川の氾濫から堤防を守るために枝を切った痕跡という。

 「木は動けないし、しゃべることもできない」。だからこそ丁寧に樹木を観察し、その声を聞いて、どのような治療が必要か診断する。

 北村さんが治療・管理にあたって心がけていることは、地域住民と一緒に維持管理を行うこと。「樹木を守ってゆくには樹木医の治療だけでなく、地域住民が愛着をもって管理することが大切。そのためには、みんなの関心を呼ぶための説明や啓蒙が大事」と語る。これまでも高月町の古木を巡るウォーキングイベントで講師を務めたり、マキノ高原の千本桜の治療で住民説明会を開いたりと、樹木と地域住民を結ぶきっかけをつくってきた。

 今後は、子どもたちにも樹木への関心を持ってもらうため学校への出前講座に取り組みたい考えで、「どんなきっかけでもいい。興味を持つことが、樹木を大切にすることにつながる」と話している。

 全国植樹祭は4日、岩手県陸前高田市で開かれ、4年ぶりに天皇皇后両陛下が出席。緑化功労者には北村さんを含む3人が選ばれ、両陛下ご臨席の下で、表彰された。

掲載日: 2023年06月13日