故郷の古民家 価値を後世に

谷口さん、米原市大久保で3軒をリノベーション

 伊吹山の麓、米原市大久保の集落に古民家を改修した宿泊施設など3軒がオープンした。「価値がない」として古民家が解体されている現状を憂えた同所出身で東京在住の谷口諒さん(32)が、コロナ禍を機に注目されているマイクロツーリズムやワーケーションの受け皿にしようとリノベーション。「古民家の価値を後世に伝えるとともに、田舎を元気にしたい」と故郷を見つめている。

 宿泊施設は広々とした土間が魅力の「けいた」、集落の高台にあり山麓の景色を満喫できる「大門坂荘」の2軒。いずれも築約120年、平屋建て約120平方㍍。古民家の構造、残された家具、道具をなるべく生かした内装となっている。いずれも一棟貸しで、けいたは最大8人、大門坂荘は9人で利用できる。また、築約90年の「うたきち」はカフェやギャラリーなどとして活用する方針で、正式オープンはまだ先になるという。

 谷口さんが故郷の古民家に注目したのは新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動制限がきっかけ。自然散策などを近場で楽しむマイクロツーリズムの需用の高まりを感じたが、その受け皿となる宿泊施設が田舎に少ないことに着目した。

 「何もない田舎を早く出たかった」と高校卒業後に故郷を離れたものの、今は「山や川があり、冬は雪もある。素敵なところです」と故郷の魅力を実感している。ただ、空き家が増え続け解体される現状に「価値のあるものが捨てられるのは悲しい。きれいにして後世に伝えたい」と、同所でそば店「久次郎」を営む父・隆一さん(66)に空き家となっている集落内の古民家を探してもらい、改修した。

 「古民家のリノベーションのニーズは多いが、やり方が分からなくて踏み切れない人がいる。ここに宿泊し、自分たちにも古民家を改修できるのでは、と思ってもらえれば」。宿泊を通して古民家をリノベーションする仲間が増え、田舎に残る伝統的家屋が後世に継承されることを願っている。

 なお、宿泊施設は民泊サイト「Airbnb(https://www.airbnb.jp/)」で紹介している。

掲載日: 2022年12月12日