2021年6月8日

手にした聖火トーチ、地元で巡回展

白血病から復帰の平川さん

 「私にとって聖火トーチは元気になった証。復帰の象徴」—白血病となり400日以上の入院生活を乗り越え、東京オリンピックの聖火ランナーに参加した高月町布施の平川健太さん(40)が手にした聖火トーチが町内の公共施設で巡回展示されている。

 平川さんは5年前、発熱の症状が治まらず、受診したところ、白血病と診断された。守山の病院に入院した平川さんは家族と離れたまま、闘病生活を送った。

 幼い子ども2人の子育てをしながら、車で片道2時間かかる病院まで妻のさきさん(40)は、ほぼ毎日通い、励ましてくれ、友人たちの応援も心の支えになった。また、長い抗がん治療も実らず、再発し、骨髄移植を受けることになり、弟の真也さん(37)に協力してもらった。

 「元気になれたのは家族や友人、みんなのおかげ。オリンピックで思い出を残したい」と聖火ランナーに応募。企業枠で当選し、5月28日、彦根城の堀周辺約200㍍を走った。

 ずっしり重たいトーチ。緊張の中、みんなへの感謝の気持ちを聖火に込めながら、完走できた。記憶の中では一瞬の出来事だったが、「この思いを地元の人にも伝えたい」と近くの七郷小や高月体育館などでトーチやユニフォームを展示することに。

 展示会場のひとつ、たかつき認定こども園では8日、平川さんが園を訪問。園児たちが聖火リレーの説明を受けながら、トーチにふれた。園児たちは「重たい」「つるつるしている」などと歓声を上げ、全員で「見せてくれて、ありがとう」とお礼を述べると、平川さんは「大きくなったら、オリンピックに出て下さい」とエールを送っていた。

2021年6月3日

将来の夢へ 期間限定の洋菓子店

木之本の高藤さん えきまちテラスにチャレンジ出店

 えきまちテラス長浜1階のチャレンジスペースに2日、洋菓子専門店「アンリトム」がオープンした。30日までの期間限定の出店で、出店者の高藤桃花さん(23)=木之本町黒田=は「お菓子に込めた思いやこだわりを伝えられれば」と話している。

 高藤さんは長浜高校を卒業後、パティシエを目指して京都市内の製菓専門学校で2年間学び、その後はホテルやカフェに勤務。昨年、フランスの菓子店で働きながら学ぶ「ワーキングホリデー」を計画していたが、コロナ禍で断念。このため、10月に木之本町廣瀬の民家を改修して工房を開設し、洋菓子を主にネット予約で注文を受け付け、直売してきた。

 12月のクリスマス前にえきまちテラスで開かれたマルシェに出店したところ、商品が完売。「ネット販売では味わえない、お客さんと接する喜びや幸福感が忘れられない」と実店舗販売への思いを募らせていた。

 洋菓子を楽しめるカフェ経営を目指している高藤さん。将来の参考にしたいと、えきまちテラス長浜が募集していたチャレンジスペースへの出店に手を挙げ、6月2日のオープンに至った。

 焼き菓子はフィナンシェやブラウニーなど7種類、生菓子はティラミスやクッキーシューなど5種類程度を扱っている。イートイン限定メニューとして、季節のフルーツを使ったオーストラリアの伝統デザート「パブロバ」を提供している。

 店舗名の「アンリトム」はフランス語で「ひとつのリズム」という意味。高藤さんは「アンリトムのお菓子が、食べた人の人生の一つのリズムを作るきっかけになれば」との思いを込めている。

 営業時間は午前11時から午後5時まで。火曜定休。

2021年5月21日

余呉の古茶 再生プロジェクト

魅力を発進!ホットプレートで釜炒り

 かつて茶処だった余呉の茶園を再生し、その魅力を発信しようと地元の地域づくり協議会が中心となり、復活プロジェクトを進めている。

 茶はツバキ科の木から採取される茶葉。茶の木は根を張るため、地滑り防止の効果があり、土地の境界線を見極めるため、昔、田畑や庭先にはよく茶の木が植えられていた。

 ヤブキタ、サヤミドリなど100種以上あり、中国から入ったものがほとんど。約9割が品種改良によって生まれているが、市内には在来種の茶畑が点在していた。戦後の復興策として茶の生産が始まり、各地に出荷されたが、従事者の高齢化、製茶工場の移転などで採算が合わなくなり、衰退していった。

 長浜産の茶の活用をミッションとしている地域おこし協力隊の中山恵梨子さんは調べるうち、余呉では昔、自家用として自宅の周囲に植えていたことや出荷用に製茶工場があったことがわかり、菅並では数十年前、寺社で使われていたとされる古茶の茶園が現存していたことも判明した。

 情報を受け、地域づくり協議会では妙理の里近くの斜面で、雑草に覆われながらも残っていた茶園を再生。地元の人向けに「茶摘み」と自宅でもできる「釜炒り製茶」の体験会を開いた。

 参加した16人は中山さんのアドバイスを受けながら、新茶を摘み、ホットプレートで簡単にできる製茶を体験。口の中にほんのり残る独特の風味を楽しんだ。

 協議会は「地域に製茶のあり方を再認識してもらい、次世代に伝承できれば」と述べ、中山さんも「華やかな香り立つ余呉の茶を生かし、菅並に足を運んでもらえるような仕組みができれば」と話している。

 協議会では今後、茶園を活用するため、関係機関と協議しながら、作業道の整備などを進める考え。

2021年5月14日

自立に向け、奮闘する若者達に支援を

不登校経験者が運営「ココカフェ心風流」

 「不登校経験者が自立に向け、奮闘している店を応援して」—コロナ禍で苦境に立たされている余呉町菅並の飲食店「ココカフェ心風流(シンプル)」が13日から、クラウドファンディング(クラファン)による資金調達を始めた。

 同店は不登校の寄宿自立支援施設「ウォームアップスクールここから」(同町上丹生)を運営するNPOが「卒業生が社会に出る前のステップになるような場を」と古民家をセルフリノベーションし、昨年4月、オープンさせた。

 同施設の卒業生ら6人のスタッフは土日、地元の鹿肉を使ったジビエ料理やハンバーグなどのランチメニュー、コーヒーやスイーツを提供。丁寧な接客と自慢の料理が評判を呼び、順調に滑り出したかに思えた。

 ところが、開店直後、コロナにより、2カ月間、休業を余儀なくされた。再開するも今度は大雪に見舞われ、客足も遠のくように。また、運営母体の施設もコロナ禍で寄宿生活ができず、二重の打撃に。

 スタッフの若者たちにはアルバイト代を支給する予定だったが、思うような収益を上げられず、満足に払えていない。ひたむきに頑張っている若者達。理事長の唐子恵子さんは「せめて、こづかい程度でも」とクラファンで支援を求めることに。

 目標額は100万円。返礼品はドリンク、デザート、ランチ提供券など。期間は6月15日まで。集まった資金はスタッフの給料や除雪機の購入、運営費などに充当する。唐子さんは「自立に向け、歩み始めている若者達のために力を貸してほしい」と呼びかけている。

 クラファンは「キャンプファイヤー」サイト参照(https://bit.ly/3yExycJ)。問い合わせはシンプル℡080(2434)3458。

2021年4月28日

どうなる?お産 ⑤-⑥

⑤施行が迫る働き方改革 県内の医師数は足りるのか?

 2024年に施行が迫る医師の働き方改革。地域医療はどう変わるのか。「地域医療構想」を考える県医療政策課で話を聞いた。

 県は「二次医療圏」を、保健所の管轄地域ごとに7ブロック(大津、湖南、甲賀、東近江、湖東、湖北、湖西)に設定している。最も充実するのは大津、湖南のブロックだ。ここに県内の病院57施設、一般診療所1089施設のうち、約5割が集中する(18年10月)。県内の医師は3386人で、うち医療機関の勤務医は3214人。県民10万人当たり239・8人(全国32位)で、全国平均(258・8人)より少ない。大津ブロック以外は、全国平均を下回っている。

 一方、国の「医師偏在指標」で、滋賀は医師「多数」県とされ、ブロック別でも「少数」はない。比較的若い医師が多いためだ。

 しかし、県の担当者は「滋賀医科大の臨床系教員、大学院生501人が含まれる。24年に全国で1万人不足するとされ、県内でも医師は不十分」と言う。

 県内の産婦人科医に注目すると、15〜49歳の女性10万人あたりの医師数は39・3人で、全国平均の44・6人を下回る。

 県は、周産期(妊娠22週〜出生後7日未満)医療については、すでに医療資源の集約を進め、7ブロックをさらに4ブロック(大津湖西、湖南甲賀、東近江、湖東湖北)とする体制をとっている。

 それでも、産婦人科医の偏在指標では全国32位の「少数」県。東近江、湖東湖北ブロックは全国的にも特に「少数」地域とされる。

 産婦人科医には女性が多く、病院勤務医の47・9%を占める。その66・7%が20、30歳代だ。産休・育休、復帰後の時短勤務の統一した仕組みは未整備で、医療機関ごとに診療体制を維持するために、同僚が過重労働を強いられることも問題になっているという。

 日本産科婦人科学会によれば、女性医師の占める割合は08年まで全体の約3割だったが、20年で5割弱にまで増加した。その半数近くは妊娠、育児中という。学会は「彼女たちが働きやすい職場づくりが、産婦人科医療を維持する重要な要素」と宣言している。

 加えて、県内でのの約6割を占める診療所の医師は、半数以上が60歳超と高齢化。分娩を扱う診療所は27(12年)→17(現在)、病院は14(12年)→10(現在)と減る一方だ。

 分娩を休止した施設に行く予定だった妊婦が駆け込む先の医療体制が心配になってきた。

(4月21日掲載)

⑥地域の医療体制は守れるのか 現場で働く医師の環境も心配

 県内で分娩を扱う施設は、2012年に比べ診療所27→17、病院14→10に減っている。診療所の医師の高齢化や、医師不足による医療資源の集約化が原因という。分娩を休止した施設に行く予定だった妊婦が駆け込む先の医療体制は大丈夫なんだろうか。

 例えば、湖東湖北ブロック(彦根・多賀・甲良・豊郷・愛荘・長浜・米原)。

 県の関係者によると、19年、ブロック内では計2425件の分娩があった。

 このうち、3月までにお産ができなくなった施設(彦根市立病院、佐藤クリニック=長浜市、市立長浜病院)での分娩は658件。今後、これを残る4施設(彦根市の神野レディスクリニック、同アリス、長浜市の長浜赤十字病院と橋場レディスクリニック)で受け入れることになる。

 19年、この4施設での分娩は1767件。県の調査に対し、21年は2180件の受け入れが可能と答えている。

 2019年と同じペースで、女性が妊娠すれば、お産ができなくなった施設からあふれる妊婦658人のうち、245人の受け入れ先がない、という計算になる。

 県の医療関係者は「今年はコロナ禍で妊婦が少ないのでなんとか大丈夫だろう」。しかし、綱渡りの状況は今後も続く。

 現場で働く医師の環境も心配だ。働き方改革を勉強して、現場の医師はこれまでもギリギリで働いてきてくれてきたことが十分にわかった。それなのに、彼らにさらに過重な負担が寄せられるのではないか。

 例えば、長浜赤十字病院の産科・婦人科の医師は6人(21年3月末)。医師の構成は、男性2人(1994年卒、96年卒)、女性4人(2016年卒2人、17年卒2人)。女性4人は初期臨床研修を終え、専門的研修プログラムを実践中だ。

 元公立病院事務部長の幸地東さんは「若く経験が少ない医師が4人なので、上級の医師の負担は大きいだろう。夜間当直がこの体制では、現場はかなりきつい。あと2〜4人は確保したいところだ」という。

 長浜病院から引き上げた産婦人科医を、長浜赤十字病院に回してもらえないのか。長浜保健所の担当者は「長浜病院は滋賀医科大医局からの派遣。赤十字は京都大から。派遣元が異なり、調整がなかなかうまくはいかない。県は京大に増員を依頼しているところ」と教えてくれた。

 医局同士の連携も簡単ではないらしい。保健所の担当者は「産婦人科医の不足は全国的な問題。滋賀医科大でも、医師が余っているわけではない。引き上げたら、他に補填したい場所があるのだろう」。         

堀江昌史

 

(4月28日掲載)