2026年9月9日

100年先の「あったらいいな」

大垣共立銀行滋賀営業100年 3市の小中学生の提案募集

 滋賀県での営業開始100年を迎えた大垣共立銀行は、長浜、米原、彦根3市の小中学生を対象に「『こども社長』選手権」を企画した。「100年先まで愛される『あったらいいな』」をテーマに地域の未来を描くアイデアを募り、入賞グループの学校には総額100万円相当の図書やスポーツ用品、ICT機器、楽器などを贈る。

 同行は1896年創立で今年130周年の節目。さらに滋賀県では1926年4月に長浜支店を開設して営業を始め、今年で100周年を迎えた。

 選手権は、子どもたちが普段暮らしている街を「ビジネス」の視点から見つめ、「もっとこうなればいい」「こんなサービスがあれば」といった発想を形にする企画。地域の食や観光、伝統などの資源を世界に発信する仕組み、環境や福祉、暮らしの困りごとの解決、DXやテクノロジーを使った未来の街づくり、住民が笑顔で暮らせるサービスなど、自由な発想を求めている。

 学校単位で5人以内のグループをつくって応募する。個人での応募はできず、同じ学校から複数グループが参加することもできる。グループを一つの「会社」に見立てて会社名や社長、社員を決め、「このビジネスで一番大切にしたい想い」を記入する。別の「未来アイデアノート」には、サービスやアイデアの名前、具体的な内容、誰が喜ぶのか、実現に必要なもの、100年後へのメッセージをまとめる。図やイラストを添えてもよい。

 選手権を通じて、地域の課題やニーズに気づく「課題を見つける力」、発想を具体化する「アイデアを形にする力」、自分たちの考えを伝える「想いを伝える力」の三つを育む狙いがある。

 12月に書類による一次審査を行い、通過グループは来年1月下旬から2月上旬ごろ、公開プレゼンテーション形式の最終審査に臨む予定。独創性や発想、地域への思い、持続可能性、具体性、熱意などを評価する。

 グランプリのほか、頭取賞、長浜、米原、彦根の各市長賞、商工会議所や商工会の賞を設ける。受賞グループが所属する学校への寄贈は、グランプリ30万円、頭取賞20万円、3市長賞各10万円などで、総額100万円相当。

 応募は11月30日まで。詳細は専用のホームページ(https://okb.tayori.com/f/childpresident2026/)で確認できる。

 長浜支店長兼彦根支店長の多賀一将さんは「小中学生ならではの発想やアイデアに期待しています」と応募を呼び掛けている。

2026年9月9日

三宿めぐり「御宿場印」

柏原、醒井、番場 それぞれの歴史を一枚に

 米原市は、中山道の柏原宿、醒井宿、番場宿を巡ってもらおうと、3宿それぞれの「御宿場印」を作成した。19日から各宿場の資料館の入館者に無料で配布する。宿場ごとに異なる歴史や特色に触れてもらい、3地域をつなぐ周遊につなげる狙い。

 江戸時代の宿場は、旅人が泊まるだけの場所ではなく、公用の荷物や通信物を次の宿へ送り継ぐ交通の拠点だった。本陣や脇本陣、旅籠などの宿泊施設のほか、人足や馬を手配する問屋場が置かれ、街道を行き交う人や物を支えた。米原市域には中山道や北国街道などが通り、古くから東西、南北を結ぶ交通の要衝として発展した。

 今回対象となる3宿は、中山道の60番目から62番目まで連続して並ぶが、それぞれ異なる顔を持つ。

 柏原宿は60番目の宿場で、東西約1・5㌔に及んだ。江戸時代には344軒の家があったと伝わり、現在も常夜灯や軒の低い町家などに往時の面影が残る。伊吹山で採れるヨモギを使った「伊吹もぐさ」の産地としても知られ、街道沿いにはかつてもぐさ商が軒を連ねた。

 醒井宿は61番目。最大の特徴は「水」。霊仙山系からの湧水を源とする地蔵川が旧中山道沿いを流れ、名水「居醒の清水」は旅人の疲れを癒やしたと伝わる。宿場の輸送業務を担った「問屋場」の建物がほぼ完全な姿で残る全国的にも珍しい場所で、旧醒井郵便局局舎など歴史的建築も点在。清流に育つ梅花藻でも知られている。

 番場宿は62番目で、中山道の宿場の中でも最も短かったと伝わる。一方、米原湊が開かれ、中山道と琵琶湖を結ぶ道が整えられると、舟運で届いた物資を中山道へつなぐ物流拠点として重要な役割を担った。中山道だけでなく、琵琶湖や北陸方面への交通が交わる立地が、この宿の特徴だった。

 御宿場印は、各宿場を描いた「木曾街道六十九次」の浮世絵が添えられ、江戸期の宿場の様子も楽しめるデザインとなっている。柏原宿歴史館、醒井宿資料館(旧醒井郵便局局舎)、番場資料館(泉亮之記念館)でそれぞれ配布。12月13日までだが、なくなり次第終了する。柏原宿歴史館と醒井宿資料館は入館料が必要。

2026年9月8日

「特殊詐欺、なぜ騙される?」 が一変

長浜の66歳女性が体験談、「誰でも被害者に」

 「特殊詐欺の記事を見て、なんでそんな話に騙されるんやろと思っていた。でも、自分が実際に電話を受けて分かった。本当に人の心をつかむ話し方だった」

 長浜市内の66歳女性が5日、日本郵便のカスタマーセンターや大阪府警を名乗る男らから約1時間半にわたって電話を受けた。金銭を要求される前に詐欺と気づき、被害には至らなかったが、相手は女性の名前や生年月日、住所を把握。「犯罪に巻き込まれている」と不安をあおりながら信用させようとしてきたという。

 電話があったのは同日午後1時半すぎ。「+1」で始まる番号から着信があり、女性の自動音声で「日本郵便のカスタマーセンターです」「荷物を送った方は0を押してください」と案内された。

 女性は8月30日、新千歳空港から自宅へ荷物を2個送ったばかりだった。荷物は9月1日に届いていたが、「日本郵便」「荷物」という言葉が直前の自分の行動と重なった。

 「ちょうど荷物を送ったところだったので、日本郵便からの電話だと思った」。案内に従い「0」を押した。

 電話は若い男に替わった。女性が「送った荷物はもう届いている」と答えると、男は女性の名前、生年月日、住所を示し、「あなたが出した荷物が止まっている」と告げた。

 女性が身に覚えがないと否定すると、「あなたが出していないことを証明できますか」と返された。さらに、ベトナム宛ての荷物から他人名義のキャッシュカード8枚や通帳2冊などが見つかったと説明されたという。

 「自分の名前を使われ、犯罪に巻き込まれたと思った。カードや通帳の持ち主も困っているんじゃないか、私のせいで誰かに迷惑がかかっているんじゃないかと心配した」

 男は「大阪府警本部へ行って被害届を出してください」と求めた。女性が仕事中ですぐには行けないと伝えると、「これは緊急案件です」「二次被害、三次被害が起きます」「今すぐ被害届を出すべきです」と畳みかけた。

 さらに「この電話から大阪府警本部につなぐことができる」と持ちかけられた。犯罪に巻き込まれたと思っていた女性には、警察につないでもらえるという話はむしろありがたく感じられ、「それならお願いします」と答えた。

 次に電話口に出た別の男は「大阪府警のカネコ」と名乗った。女性はそれまでの経緯を説明したが、次第に違和感を覚え「あなたが警察官だという証拠を見せてほしい」と求めた。

 すると男は「疑うことは大事です」と答え、「一度電話を切るので、その間に自分で大阪府警の電話番号を調べてください」と促した。

 女性はパソコンで大阪府警の番号を検索。その後、再びかかってきた電話の着信画面には「+28」に続き、自分で確認した大阪府警の電話番号とまったく同じ数字が並んでいた。

 「疑うことまで肯定され、自分で調べた番号と同じ数字まで表示された。そこまでされたら、本物だと思ってしまう人はいると思う」

決め手は「捜査専用LINE」、「疑う気持ちまで利用された」

 電話はさらに続いた。「大阪府警のカネコ」を名乗る男は「今、そこに誰かいますか」「誰か来る予定はありませんか」などと、女性の周囲の状況を繰り返し確認したという。

 さらに、本人確認を理由に顔写真などの情報が必要だと説明された。女性は「何か変やな」と違和感を覚えながらも、この時点ではまだ詐欺と断定できなかった。

 「LINEをしていますか」。そう尋ねた男は「捜査専用のLINEがあります」「そこで捜査状況を伝えます」などと説明し、LINEを使ったやり取りを求めてきたという。

 「そこで、これは詐欺やなと思った。最後の決め手だった」

 女性は男に「今から大阪府警本部へ行きます。カネコさんのところへ直接寄せてもらいます」と告げた。

 ところが、男は慌てる様子を見せず「来てくれるならそれで結構です。何時に着きますか」と応じたという。女性が「今から準備して午後5時ごろ」と答えると、「では午後5時に大阪府警本部で待っています」と告げ、電話を切った。

 男は最後まで警察官を装い続けた。

 女性は電話を切った後、すぐに長浜署へ相談した。今回、金銭要求はなかった。女性は「たぶん、その前の段階で止められたんやと思う」と振り返る。

 女性はこれまで、滋賀夕刊などで特殊詐欺の記事を見るたび、「なんでそんな話に騙されるんやろ」と思っていたという。

 しかし、自分が実際に電話を受け、その考えは大きく変わった。

 「相手は本当に上手だった。ああ言われたらこう返す、というのが全部できている感じ。こっちが疑ったら、その疑いまで利用して信用させてくる」

 約1時間半のやり取りを振り返れば、不自然だった点はいくつも思い当たる。

 だが、電話の最中は、一つ一つの疑問にもっともらしい説明が加えられ、次の話へと進んでいった。

 「後から思えば、あそこもおかしい、ここもおかしいと思う。でも、その場では一つずつ納得させられていった」

 特に印象に残っているのが、「疑うことは大事です」と言われたことだった。

 女性は「詐欺師なら、疑われたら困ると思っていた。それなのに『疑っていい』と言われた。そこまで考えて話しているのかと思うと怖い」と話す。

 女性が今回、最も強く感じたのは、相手が恐怖だけでなく、人の良心や責任感にも付け込んでくる怖さだった。

 「自分が犯罪に巻き込まれたと思っただけじゃなくて、キャッシュカードや通帳の持ち主が困っているんじゃないかと思った。私のせいで誰かに迷惑がかかっているんじゃないか、と本気で心配した」

 後から考えれば、「そんなことまで自分が心配しなくてもよかった」と思う。しかし、電話中は相手の説明を信じ「誰かが困っているなら何とかしないと」と考えていた。

 「人に迷惑をかけたくない、困っている人を助けたいという気持ちにも付け込んでくるんやと思った」

 特殊詐欺は、金もうけや欲につけ込むものだけではない。相手を思いやる気持ちや責任感さえも、犯罪に利用される可能性があることを身をもって感じたという。

 「自分は大丈夫と思っていても、本当に分からない。私も普段から詐欺の記事を見ていたのに、実際に自分が標的になるとは思っていなかった」

 女性は「身近な人がこういう体験をしたと知ってもらうことで、自分にも起こるかもしれないと考えるきっかけになれば」と話している。

2026年9月7日

世界遺産へ「彦根城フェスティバル」

レイラックと応援マッチ、チケット進呈も

 彦根城の世界遺産登録の実現をめざし、彦根商工会議所青年部(YEG)は13日に彦根総合スポーツ公園(松原町)エントランス広場などで「彦根城みらいフェスティバル」を開催する。

 市民の機運醸成を図るため2023年から関連イベントを開催。4回目の今年はプロサッカーリーグ・J3のレイラック滋賀の公式戦に合わせて、昼の部と夜の部に分けて開く。

 午後1時半からの昼の部では、一人500円で楽しめる「お城遊びブース」を設置。彦根城の謎を解くと同日夜開催のレイラック滋賀の観戦チケットがもらえるクロスワード、近江牛カタログギフトなどがもらえるお城クイズ大会、キックボウリング、射的で遊べる。観戦チケットは先着400人分。

 ステージでは彦根鉄砲隊の演武、彦根古城太鼓・彦根東高吹奏楽部の演奏などがあり、午後4時50分からひこにゃんが登場する。飲食ブースも並ぶ。

 午後6時からは平和堂HATOスタジアムで「世界遺産登録応援マッチ」と題したレイラックの公式戦が開かれ、試合中に彦根城天守が特別にライトアップされる。

 YEGの一圓宙貴会長は「彦根を活性化したいとの思いでこれまで取り組んできた。彦根城の世界遺産登録に向けて、市民の皆さんと一緒に応援していきたい」と来場を呼びかけている。

(滋賀彦根新聞)

2026年9月7日

医療行為を模擬体験

湖北医師会、高校生24人がワークショップ

 医師の仕事や医療現場への理解を深めてもらおうと、湖北医師会は5日、長浜赤十字病院で医師体験ワークショップを開いた。県内の高校生24人が、手術支援ロボットや内視鏡、超音波検査装置などに触れ、医師の指導を受けながらさまざまな医療行為を模擬体験した。

 医療に関心のある高校生に医療の一部を模擬体験してもらい、将来、医師を目指すきっかけにするとともに、将来的な地域の医師確保につなげたいとの思いで企画した。定員24人に対し、41人から申し込みがあった。

 長浜赤十字病院、市立長浜病院、市立湖北病院の医師らが指導。会場にはさまざまな体験ブースが設けられ、模擬手術室で切開や縫合に挑戦したほか、手術支援ロボット「ダヴィンチ」や腹腔鏡、内視鏡の操作、人工血管の縫合、骨折時の固定、脊椎ドリルを使った模擬手術、心臓や腹部のエコー検査などを体験した。

 救急医や外科医を目指している川崎萌夏さん(守山高校3年)は、ダヴィンチの操作について「画面越しでも立体的に見え、機械も正確に動く。医療の発展を感じた」と話した。縫合では「どこをつかんで、どこを引っ張るかが難しかった」としながらも、「結べた時はうれしかった。医師になりたいという気持ちが強くなった」と目を輝かせた。

 北村妃菜さん(近江高校1年)は、脊椎ドリルを使って卵の殻を削る手術体験が印象に残ったといい、「細かい作業が好きなので、自分に合っていると感じた」と話した。将来の進路はまだ決めていないが、今回の体験を通じて「医療系を目指したいという気持ちが強くなった」と語った。

 坂地静さん(虎姫高校1年)は「最近、医師になりたいと思い始め、実際のお医者さんの姿を見たいと思って参加した」と話した。身近に医療従事者がいないことから、「現場で働く人のリアルな声を聞きたい」と、医師や看護師との意見交換にも関心を寄せていた。

 

 

 

2026年9月7日

「眺遠的大会」過去最多の出場者

彦根城下に370人80㍍先の的狙い競技

 彦根城を眺めながら80㍍先の的を射る「眺遠的大会」が6日、彦根城の大手前保存用地で行われ、全国各地から過去最多の370人が参加した。

 彦根市弓道連盟や彦根商工会議所などが彦根城築城410年祭中の2017年9月から開催。昨年は国スポ・障スポがあったため開かれなかったが、9回目の今年は東京や埼玉、長野、山口、新潟などから老若男女が来彦した。

 開会式では彦根商工会議所の沼尾護会頭が「井伊直弼の茶の湯の言葉に『一期一会』がある。彦根城の世界遺産とともに、一期一会の言葉も大切にしていきたい。彦根が一期一会の街であることも覚えてほしい」とあいさつ。最後に彦根市弓道連盟の中村傳一郎名誉会長の号令に合わせて、参加者全員が天守の方向へ一礼した。

 開会式後にはひこにゃんが弓道着姿で登場し、介添人2人と一緒に矢を放つと、参加者や見学客から歓声が沸き起こっていた。

 その後、出場者は会場に用意された3人ずつが射られる射場2カ所に順番に立ち、通常の60㍍を20㍍超える先の霞(かすみ)的を狙って競技。1チーム3人による団体の部と、男子・女子・外国人の個人の部に分かれ、一人4回ずつ射って的に当たる回数を競った。入賞者には彦根の名産品などが贈られた。

 愛知県から初めて参加した鈴木珠水さん(27)は「世界遺産をめざす彦根城を眺めながら弓道ができるということで、すごく楽しみにしていた。かわいいひこにゃんにも会えてよかった」と話していた。

 

 

2026年9月7日

真夏の熱気、浅井に舞う

「あっぱれ祭り」 よさこい、夜空には大花火

 関西最大級のよさこいイベント「第25回長浜あざいあっぱれ祭り」(同実行委主催)が5日、浅井文化スポーツ公園で開かれ、全国から集まったよさこいチームが華やかな演舞を繰り広げた。

 午前9時から始まったストリート演舞では、色鮮やかな衣装をまとった踊り手たちが、額に汗をにじませながら、鳴子を手に躍動感あふれる舞を披露。沿道の観客から拍手が送られた。

 祭りは「地域の祭りをもっとあっぱれに」と地元の若者が立ち上がり、2000年に始まった。今年で25回目を迎え、各チームが趣向を凝らした音楽や衣装、息の合った踊りでそれぞれの持ち味を披露した。

 北海道大学の「縁」も友情出演し、浅井中学校の生徒との合同演舞などで会場を盛り上げた。長浜市「声の観光大使」の声優・山口勝平さんも登場し、「ひでよしくん」などとのアテレコライブを披露した。

 夕方からメインステージで行われたファイナルは、日中とはまた違った熱気に包まれた。ファイナル進出チームが力のこもった掛け声と迫力ある踊りを次々と披露し、ステージと観客席が一体となって盛り上がった。

 会場にはご当地グルメなどを味わえるブースも並び、多くの人でにぎわった。祭りの締めくくりには打ち上げ花火が上がり、大輪の花が浅井の夜空を彩った。

 

 

 

2026年9月4日

景況感改善、なお重いコスト

長浜企業調査  観光需要に明るさも

 長浜商工会議所がまとめた4〜6月期の企業景況調査で、全体の業況DIは前期の4・5から9・8へ上昇し、4期連続で改善した。北近江豊臣博覧会などによる観光需要や、AI・半導体関連の動きを追い風に売上、採算ともに持ち直した一方、原材料費や燃料費、物流費の上昇、人手不足が経営を圧迫。回答企業の自由記述からは、数字だけでは見えない厳しい実情が浮かぶ。

 調査は7月1日時点で、会員企業220社を対象に実施し、卸売、小売、サービス、建設、製造の計133社が回答した。好転した企業の割合から悪化した企業の割合を差し引く業況DIは9・8となり、2期連続でプラス圏を維持。売上高DIは前期比6・0ポイント増の15・8、採算DIは同3・8ポイント増の2・3となり、採算は20期ぶりにプラスへ転じた。

 業種別の業況DIは、卸売業0・0、小売業15・8、サービス業11・1、建設業15・0、製造業5・9。製造業を除く4業種で前期を上回った。

 明るい材料となったのが、観光客や受注の増加。小売業からは「NHK大河ドラマの放送を契機に来街者が増加しており、平日でも多くの観光客が見られる」、サービス業からも「大河ドラマの影響で観光客増加」との声が寄せられた。製造業では「少し半導体事業が動き始めた」「インバウンドをはじめとする観光関連など、従来の商流とは異なる業種からの仕事が少しずつ増えてきている」との回答もあった。

 一方、国際情勢が経営に「大きな悪影響がある」と答えたのは41社、「やや悪影響がある」は65社で、この設問に回答した126社の84%を占めた。影響を受けている106社のうち、原材料・仕入れ価格の上昇を挙げた企業は88社、燃料費・光熱費の上昇は59社、輸送・物流コストの増加は39社、調達難・納期遅延は38社に上った。

 卸売業では「中東情勢の問題からオイル類の入荷が滞り、現在も不安定なまま」、建設業では「販売価格が上がり売上が上昇したように見えるが、収支は厳しい」との声があった。製造業からは「購入品価格が倍増」「受注残で今のところなんとかつないでいるが、新規の話がなかなかない」「ガムテープ、ナイロン袋、プチプチなど材料が思ったように入荷しない」と、切迫した状況が報告された。

 販売価格DIは53・1、仕入れ価格DIは70・9で、両者の差はマイナス17・8。前期から10・6ポイント改善したものの、仕入れ価格の上昇に価格転嫁が追いつかない状態が続く。サービス業からも「燃料費が高騰しているが価格転嫁が難しい」「顧客の値段への認識が厳しくなった」との声が寄せられた。

 人材確保では「応募者数が少ない」が42社で最多。「必要な技能・経験を持つ人材がいない」が26社、「人件費負担が大きい」が22社だった。従業員DIもマイナス24・8と、不足感が根強い。

 7〜9月期の業況DIは5・4と、プラス圏を保つものの今期から4・4ポイント低下する見通し。設備投資を計画する企業も前期から1・5ポイント減の27・1%にとどまり、景況感の改善とは裏腹に、先行きへの慎重な姿勢が表れている。

2026年9月4日

長浜市議会一般質問 病院再編、人口減少など問う

5会派14個人が発言、10日から

 長浜市議会9月定例月議会は10日から、会派代表質問と個人一般質問を行う。5会派、14人が発言を届け出た。代表質問は10日、個人一般質問は11、14日に行われる。

 7月の市議選後、初の一般質問となる。初当選した冨士野秀峰、福永晋、大菅悠美、藤本隆章、坂井久泰の5議員はいずれも本会議で初めての質問に臨む。冨士野議員は防災や公共交通、福永議員は教師不足や教員の負担軽減、大菅議員は子育て支援、藤本議員は湖北病院の建て替え、坂井議員は人口減少対策などを取り上げる。新人議員がそれぞれの視点から、どのような論戦を展開するか注目される。

 懸案の市立長浜病院と湖北病院の再建・再編については、経営一体化の手法、湖北病院の建て直し、市民への説明、病院職員への影響などについて複数の議員が市の考えをただす。

 このほか、米原市と共同で進めている産業用地開発の進捗状況、学校体育館へのエアコン設置、物価高騰対策など幅広い市政課題が取り上げられる。

 発言議員と質問のテーマは次のとおり。

◇10日◇

 【新しい風(中川勇議員)】国勢調査で県内一の人口減少数となった長浜市▽縮減社会における自治会の在り方▽全国学力テストの結果と教育方針、AIドリル活用の状況▽一部事務組合に対する構成市負担金の今後の動向。

 【恵風会(伊藤喜久雄議員)】長浜病院の再建・再編▽複合災害と地域防災計画▽長浜農業高校と南長浜地域のまちづくり▽神田スマートインターチェンジと関連事業▽産業用地開発事業。

 【創生会(加納義之議員)】市総合計画▽宿泊税導入▽湖北病院の建て直し▽小谷城戦国体験ミュージアム▽産業用地の確保と企業誘致▽選挙における投票率。

 【共産党市議団(高山亨議員)】決算と物価高騰支援の継続▽小中学校・義務教育学校体育館のエアコン設置▽学校園の適正規模・適正配置▽高齢者福祉施設▽KBS京都ラジオの北部地域での放送中止▽病院再編。

 【公明党(鋒山紀子議員)】防災の産業化による地域防災力の強化▽ユースクリニックを取り入れた若者支援▽子どもを守るまちづくり。

◇11日◇

 【岩川信子議員】小中学校・義務教育学校体育館のエアコン設置▽猿による被害▽非営利施設の指定管理制度や施設の在り方▽障害者の投票権を保障する取り組み。

 【冨士野秀峰議員】防災▽公共交通▽教育通学用ヘルメット▽ながはま割。

 【村山さおり議員】病院再建再編推進本部▽介護現場の実情▽学校運営。

 【藤井登議員】教職員の不祥事防止と実効性ある再発防止策▽「がん対策推進条例」の制定▽病院再建・再編と今後の在り方。

 【矢守昭男議員】災害に対する備え▽防災ハザードマップ▽高齢者福祉施設▽道路や河川の地元管理▽基金の運用と管理▽市民からの意見▽公共施設等総合管理計画▽多様な農業者への営農継続支援▽子育て・健康応援アプリ「ながスマ」▽まちづくりセンターの指定管理。

 【福永晋議員】長浜市における「教師不足」▽教師の負担を軽減する具体的な取り組み▽長期休業期間中の子どもの学び・体験の充実。

 【大菅悠美議員】希望が持てる子育て支援▽小学生の放課後の預かりと居場所▽地域資源を生かした子どもの運動・体験機会▽地域公共交通の確保に向けた自動運転技術。

◇14日◇

 【大橋延行議員】損害賠償請求訴訟▽農業施設の整備、維持管理▽地域計画。

 【藤本隆章議員】湖北病院・湖北やすらぎの里の建て替え▽長浜市病院再建再編推進本部での説明▽びわ図書館・浅井図書館の空調故障▽湖北中学校の長寿命化改修工事。

 【松本長治議員】災害時の避難体制▽「ながはま割」デジタルクーポン事業。

 【坂井久泰議員】人口減少対策▽虎姫地域の安心・安全な地域づくり。

 【田中真浩議員】柳ヶ瀬断層を有する長浜市の防災▽所有者不在土地で景観を損なう粗大放置物への対処。

 【竹本直隆議員】尾上漁港における施設管理者の責任▽学びの多様化学校▽長浜市・米原市共同の産業用地。

 【北川陽大議員】湖北医療圏の評価▽琵琶湖三市同時花火大会の未開催問題から考える今後の対策▽2027年以降の観光施策▽長浜市内の歴史遺産、施設を生かした将来ビジョン▽鉄道スクエアの活用。

2026年9月4日

彦根城の世界遺産 暫定から34年 「ようやくスタート」

国内推薦決定へ、2年後登録めざす

 文化庁の文化審議会は3日、都内で会議を開き、世界文化遺産登録に向けて彦根城を国内推薦候補にすることを決定。今後は国による正式な推薦書の提出を経て、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・イコモスによる現地調査などが行われ、順調に進めば2028年夏ごろの登録が見込まれる。

 彦根城は1992年(平成4年)、すでに世界文化遺産に登録されている姫路城などとともに、国内の暫定リストに記載された。

 彦根市では2007年ごろから登録に向けた動きが始まり、19年3月には推薦書案の骨子を文化庁に提出。県と市は翌年、登録推進に関する協定を結び、20年3月に最初の推薦書案を出した。23年9月にはユネスコが同年から始めた事前評価制度を活用し、翌年10月に示された評価結果では、彦根城が江戸時代の「大名統治システム」を示す遺産として顕著な普遍的価値を持つ可能性が示された一方で、ほかの城との比較分析を広げることや、大名統治システムの説明をより精緻にすることなどの課題が示された。

玄宮園と藩校跡を外す 「大名統治システム」の説明から

 これを受け、県と市は25年7月に修正した推薦書案を提出したが、翌月の文化審議会では国内推薦が見送られた。その理由として、文化審議会からは「江戸時代の城郭を比較する場合に城郭を抽出する時の客観性や妥当性について指摘される可能性がある」「大名統治システムを説明する際の『大名』が何かについて説明の充実を」などの意見があったという。

 これらの指摘に対し、県と市は歴史的側面の比較検討や大名統治システムの説明などについて、国内約300の城郭と比較して「説明を充実させた」推薦書案を作成し、今年5月25日に文化庁へ提出した。今回の推薦書案では彦根城の天守・櫓・門、堀・石垣・土塁、御殿、重臣屋敷、玄宮園、藩校跡の中堀より内側の構成遺産のうち、ほかの城郭と比較しながら証明する必要があるため、玄宮園と藩校跡を外した上で大名統治システムについて説明した。

 この日の文化審議会では、「推薦書提出までに海外の専門家に、より分かりやすい表現となるよう修正していくことが求められる」と指摘しながらも「諸外国に類を見ない江戸時代の大名統治システムが物証でき、構成資産も十分な保護措置を受けている」などとして、今年度の推薦が適当と結論づけた。

 国内推薦候補の決定を受け、田島一成市長は記者会見で「彦根城が持つ普遍的価値を世界に伝える重要な一歩を踏み出すことができた。2028年の世界遺産登録を実現するという強い意志を持って、取組を加速させる」と決意を新たにした。

 今後、国は9月中に英訳版にした推薦書の暫定版をユネスコへ提出し、来年2月1日までに正式版を提出する予定。そして27年度中にイコモスによる現地調査があり、28年度に世界遺産委員会で登録の可否が審議され、順調に進めば、同年夏頃に世界文化遺産登録が決定する運び。

 

「市民のさらなる機運醸成を」 市民団体会長や会頭ら喜びと期待

 彦根城が世界遺産の暫定リストに載ってから34年目の国内推薦候補の決定に、各団体から歓喜と期待の声があがっている。

 2018年5月に市民団体として立ち上がった「彦根城世界遺産登録意見交換・応援1000人委員会」の宮川富子会長(永樂屋社長)「ようやくスタートラインに立った気持ち。登録実現に向けての2年間と、世界遺産後のまちづくりが大事になると思うので、色んな団体や市民の皆さんと一緒になってまちづくりを進めたい」。

 彦根ボランティアガイド協会の小野隆会長「長年の夢に向けて前進したことにお祝い申し上げます。協会として彦根城のすばらしさをさらに自信を持ってお客さまに説明したい」。

 彦根ユネスコ協会の薩摩四郎会長「最近になって市民の盛り上がりも出てきたと思う。本登録をめざして、さらに盛り上げたい」。

 彦根城運営管理センターの宮川敏明所長「長年の悲願だったので本当によかった。海外からのインバウンドの持続性も期待できる」。

 彦根商工会議所の沼尾護会頭「事前評価制度を活用して世界遺産を目指す最初の国内推薦候補。世界遺産でつながるまちづくり委員会や彦根商工会議所青年部を交えながら機運醸成に取り組みたい」。

 彦根観光協会の木村昌弘会長「この歴史的な好機を確実にとらえ、観光や物産を通じたおもてなしに努め、地域一体となった機運のさらなる醸成を図りたい」。

 彦根城世界遺産登録推進議員連盟会長を務める上野賢一郎厚生労働大臣「平和な時代だった『徳川時代』を築き上げた『大名統治システム』の象徴として世界から注目され、その価値を未来に継承できるよう地元と力を合わせたい」。

 周辺自治体からも期待の声が上がった。隣接する米原市の角田航也市長「外国人観光客の誘致が喫緊の課題である中、今回の推薦が世界から注目を集める大きな起爆剤となることを期待している」。

 長浜市の浅見宣義市長「彦根市にとって大きな一歩であるとともに、滋賀県全体にとっても未来への大きな希望。長浜市としてもこの素晴らしいニュースを心から歓迎する。これまで以上に連携を深め、滋賀を訪れる多くの国内外の皆様を温かくお迎えしたい」。

2026年9月4日

彦根市美術展 入賞者決まる

滋賀彦根新聞社賞は馬渕さんの洋画

 第73回彦根市美術展覧会の審査が8月30日に行われ、市展賞や特選などの入賞者が決まった。同展を後援する滋賀彦根新聞社の「滋賀彦根新聞社賞」(特選)には、大薮町の馬渕万智子さんの洋画「水の音」が選ばれた。展示は6日からひこね市文化プラザで始まる。

 日本画、洋画、彫刻、工芸、書、写真、イラストの7部門に、前年より30点多い計299点の出品があり、市展賞7点、特選23点、佳作25点などが選ばれた。展示作品は283点。

 展覧会は13日まで、ひこね市文化プラザ・メッセホール棟で開催する。午前9時半から午後5時まで。7日は休館し、最終日は午後3時まで。入場無料。

 市展賞と特選に輝いたのは次の皆さん。

 〖日本画〗▽市展賞=長﨑典子(日夏町)▽特選=伊藤恵朗(地蔵町)、志摩まゆみ(南川瀬町)。

 〖洋画〗▽市展賞=太田靖之(米原市)▽特選=盛岡淳子(日夏町)、西村利彦(開出今町)、馬渕万智子(大薮町)、小野淳(米原市)、青山ひより(竹ヶ鼻町)。

 〖彫刻〗▽市展賞=谷口斉(小泉町)▽特選=中村勉(野田山町)。

 〖工芸〗▽市展賞=伊藤安世(柳川町)▽特選=山田鈴枝(竹ヶ鼻町)、國門登美恵(西今町)。

 〖書〗▽市展賞=岡野あき(錦町)▽特選=福井佳城(日夏町)、北村恵子(西沼波町)、馬場乃ノ実(高宮町)、林由佳里(山之脇町)、元持和子(豊郷町)。

 〖写真〗▽市展賞=山口銀治(東近江市)▽特選=北村榮一(中薮町)、伊吹章(大薮町)、青木宏樹(愛荘町)、河﨑彰(上岡部町)、武田繁康(正法寺町)、保永重治(西今町)。

 〖イラスト〗▽市展賞=田中真理(米原市)▽特選=KIKOH(野田山町)、高橋縁(長曽根町)。

 

滋賀彦根新聞社賞 馬渕万智子さんの洋画

 

 

市展賞 長﨑典子さんの日本画

 

市展賞 太田靖之さんの洋画

 

市展賞 谷口斉さんの彫刻

 

市展賞 伊藤安世さんの工芸

 

市展賞 岡野あきさんの書

 

市展賞 山口銀治さんの写真

 

市展賞 田中真理さんのイラスト

2026年9月4日

「やってみたい」を地域で応援

未来のブカツ、17講座 9月から順次

 学校部活動の地域展開が進む中、子どもたちの学びや体験を地域全体で支える「第2回KOHOKU未来のブカツプロジェクト」が9月から始まる。スポーツや文化、社会活動など多彩な17講座を用意し、子どもたちが興味に応じて自由に選んで参加できる。地域の企業や団体が講座を担い、学校の枠を超えて新たな学びに触れられる取り組みとして注目される。

 プロジェクトは一般社団法人湖北市民会議が主催。子どもや若者が文化、スポーツを続けやすい環境を整えるとともに、地域の企業や各種団体が地域教育に参画する土壌づくりを目指している。

 講座はフラッグフットボール、スケートボード、バドミントン、陸上、しゃぎり、カメラ、軽音バンド、科学実験、ダンス・歌など幅広い。さらに、ブドウの収穫体験、演劇、料理、浴衣の着付け、本格的なeスポーツ、余呉湖での釣りを通じた環境学習、防災工作、オリジナルTシャツ作りなども加わる。

 受付は4日から。申し込みは原則として各講座開催日の3日前までで、定員がある講座は先着順。講座ごとに対象学年や日程、参加費などが異なる。詳細はhttps://kohoku-shiminkaigi.jp/news/event/2026-bukatsu.html#000044から。

 問い合わせは湖北市民会議事務局☎090(7064)4549へ。

 

 

 

2026年9月4日

【湖北史記 其の72 】加田七殿と常陸麻生藩

 長浜市加田町には、戦国時代7人の殿様がいたという伝承があり、地元では「ななとのさん」と呼んでいる。七殿の名前は諸書によって異なるが、通常は加田孫左衛門・同九郎左衛門・同権左衛門・同甚兵衛・同右近右衛門・同新八・同重右衛門とされる。戦国時代には、七殿の屋敷が村内に点在していたと見られ、その屋敷の名残を示す土塁や堀跡も最近まで残っていた。今は、菩提寺である時宗(じしゅう)の興善寺(こうぜんじ)が、わずかに加田氏の足跡を示す。

 七殿は戦国大名浅井氏の家臣だったと見られるが、織田信長によって同氏が滅亡し、秀吉が長浜城に入り、世の中が豊臣政権から徳川政権に移ると、7人とも加田村を離れ、近世大名の家臣として、全国の城下町で生活する武士の道を選んだ。浅井氏の家臣たちの中には、下坂氏や垣見氏のように、地元に残り郷士(ごうし)として、地域の有力者になる道を辿(たど)る場合もあった。

 七殿の内、江戸時代の行方がよく分かるのは加田権左衛門である。同氏は坂田郡朝妻城(米原市朝妻筑摩)の城主であった新庄氏に仕え、その当主・直頼が藩主となった常陸国(ひたちのくに)麻生藩士となったことが知られている。新庄直頼は関ヶ原合戦では西軍につくものの、慶長9年(1604)に個人的に親しかった徳川家康から赦免を受けた。そして、常陸国5郡と下野国(しもつけのくに)3郡で3万石余を与えられ、常陸国麻生(茨城県行方市(なめがたし)麻生)に陣屋を置く。

 麻生は、霞ヶ浦の東岸で、朝妻と琵琶湖の景観を彷彿(ほうふつ)させる場所である。5代直矩(なおのり)の時に嗣子がなく一度改易(かいえき)されるが、前藩主直時が6代目を継ぎ1万石の藩として再興を許され、子孫は幕末まで15代続いた。麻生藩の家臣について、落首があり「新庄の守りに勝ったる畠(はた) 神田 三好(舳(みよし))なくては舵(かじ)は取れまい」と詠まれたという。畠氏・神田(加田)氏・三好氏が藩政を左右する重臣だったことを示す。

 茨城県立歴史館に、麻生藩士164人の名簿である分限帳(ぶげんちょう)が残るが、寛文3年(1663)の状況を示すと言われる。最上位には新庄家親類が並ぶが、それに続く重臣として、神田(加田)権左衛門が200石、三好弥次衛門が200石、畠四郎左衛門が230石と落首にあった3家が見える。この内、三好氏は摂津国の出身だが、神田氏は坂田郡加田村出身、畠氏も同郷の坂田郡荘厳寺(しょうごんじ)村(彦根市荘厳寺町)出身であった。

 この分限帳には、赤尾作左衛門、飯村又兵衛、岩脇(いおぎ)左次衛門、小堀半四郎など、苗字から北近江出身と分かる者も多い。近江から遠く離れた霞ヶ浦畔の麻生陣屋では、きっと先祖の地である湖北の話題に、花が咲いていただろう。

 

麻生藩陣屋跡の行方市立麻生小学校(茨城県行方市)

 

淡海歴史文化研究所 所長 太田浩司

(滋賀夕刊 2025年2月4日掲載)

 

2026年9月4日

【湖北史記 其の71】布勢町にあった冨施寺

 長浜市布勢町に冨施寺(ふせでら)という大寺院があった。その本堂は、現在の新幹線トンネルの出口当たりだと言われている。正式には、布勢山息長寺成功徳院(おきながでらじょうこうとく)と称した。資料により「冨施」・「布勢」などと表記は区々(まちまち)だが、同じ寺を指す。

 伊吹山寺の僧・三修(さんじゅ)の高弟であった名超(みょうちょう)の開基で、薬師如来が本尊とされる。この地が息長氏の一族・布勢王(布勢公(ふせのきみ))の所領で、その王家の菩提寺として建立されたともいう。大和国大安寺の末寺で、『東大寺三綱紀(さんごうき)』には、養和(ようわ)元年(1181)9月、近江国布施寺と名超寺が炎上したという記事が見えるので、平安後期に存在したのは確実だ。

 西黒田地域には、後鳥羽上皇が鎌倉前期に二度にわたって潜幸(せんこう)した伝承があることは、本史記12で紹介したが、この冨施寺にも訪れたという伝説がある。また、米原市長沢にある福田寺(ふくでんじ)は、住職覚乗が本願寺覚如に帰依して、暦応(れきおう)年間(1338~42)に冨施寺を移転したと伝える。福田寺は山号を布施山というので、その前身寺院が冨施寺あった可能性は確かに濃厚だ。ただ、後述するように戦国時代にも冨施寺は確認されるので、単純な移転ではなく、両寺が併存していた時代もあったようだ。

 戦国時代の元亀年間(1570~73)に、織田信長の兵火にあい灰燼(かいじん)に帰し、湖北の多くの寺と同様に再建されなかった。

 布勢町に残る「奥沢家文書」は、永正10年(1513)から慶長9年(1604)までの土地売券(ばいけん)・譲状(ゆずりじょう)など16通からなるが、冨施寺関係の寺庵名が、売主・買主などとして登場する。冨施寺寂蓮坊(永正10年)、冨施寺十三日権現講(永正17年)、冨施寺行盛阿闍梨(あじゃり)実盛(天文24年)、冨施寺百万坊(文禄2年)とあり、同寺の戦国時代までの実在を確認できる。同文書には安楽寺という寺院も記載されるが、冨施寺の南の谷にあった別寺院である。

 現在残る冨施寺関係の遺跡としては、布勢町の北野神社の東にある布勢経塚がある。約2㍍四方の柵内に、五輪塔や宝筐印塔(ほうきょういんとう)・層塔の部材が、多数集められ祀られている。伝教大師や菅原道真が冨施寺へ下向した際に奉納した経典を、信長の兵火から守るため、この地へ埋蔵したと言われる。

 一方、北野神社の参道石段に使われている石材の内2本には、幅も深さも約6㌢の溝跡があり、冨施寺大門の敷石と伝える。彦根城を建築した際、寺跡の礎石や石垣は持ち去られたと伝えるので、この階段石は冨施寺の実在を示す、数少ない遺物と言えよう。

 

冨施寺大門の敷石が使われた石段(北野神社、布勢町)

 

淡海歴史文化研究所 所長 太田浩司

(滋賀夕刊 2025年1月21日掲載)