2021年11月11日

虎姫高校で100周年記念式典

質実剛健の精神、未来へ

 虎姫高校の創立100周年記念式典が7日、同校体育館で行われ、全校生徒や卒業生ら約700人が参加した。

 同校は1920年(大正9)に県立虎姫中学校として創設され、48年に虎姫高校に改称された。卒業生は2万人余りにのぼる。昨年、100周年を迎えたが、新型コロナウイルスの感染拡大により式典は1年延期となっていた。

 式典では同窓会組織「姉水(しすい)会」会長で記念事業実行委員長の大塚敬一郎氏が同校の国際バカロレア校認定を受けて奨学財団を立ち上げたことを紹介してグローバル人材の輩出に期待を寄せ、「(同校の校訓・校風である)質実剛健、独立自尊、方円自在は皆さんの今後の指針となる。それらを心に、この虎高を誇りに飛び立っていただきたい」と生徒に呼びかけた。

 梅本剛雄校長は、旧制中学校の校舎建築の際に台風で校舎が崩壊したことや戦後廃校の危機があった歴史を振り返り、「諸先輩や地域の方々はこうした困難を熱い思いで乗り越えてきた。皆さんもこうした事実を知ることであらためて諸先輩の尽力に感謝し、本校の伝統を大切に感じて欲しい」と述べた。

 式典は生徒主導で行われ、学校の魅力を漫才や映像で伝える企画などで会場を盛り上げた。生徒会長の齋藤甚聖さん(2年)は「100年という歴史と伝統に学び、これからの虎高の新しい道を探しつつ進んでいくことが我々在校生の進むべき道。先輩方のたどられた歴史に学び、方円自在、独立自尊の精神を引き継ぎ、虎高の質実剛健の校訓を大切に日々充実した学校生活を送っていきたい」と謝辞を述べた。

姉水会奨学財団を設立 未来担う人材育成、寄付募る

 「姉水会」は創立100周年を記念し、生徒の学びを支援する公益財団法人「姉水会奨学財団」を設立。国際バカロレア(IB)のプログラムを履修する生徒の海外留学費用や、経済的に困窮する生徒の修学資金を支給する給付型奨学金事業を始めた。

 公益財団法人を設置して奨学金事業を行うのは県内の県立高校として極めて先進的。

 奨学金事業は個人や法人からの寄付金を積み立てて運営する。奨学金は2種類あり、IB生を対象とした国際バカロレア奨学金は海外留学費用や資格取得試験の受験料、教材費などを支給する。修学奨学金は経済的理由で勉学の継続が困難な生徒に対して支給する。いずれも25万円を上限とする。年間で最大500万円規模を給付する。

 現在、姉水会では奨学金事業の原資5000万円に加え、記念式典や記念誌発行、セミナーハウスとして利用している姉水会館の建て替えに伴う設備充実の費用を合わせた計6000万円の寄付を募っている。これまでに法人、個人から2700万円余りが集まった。なお、公益財団法人への寄付金は税額控除の対象となる。問い合わせは虎姫高校内創立百周年記念事業受付窓口℡(73)3055へ。

2021年11月10日

どうなる?お産 ㉔-㉕

㉔地域医療[5] 楠井隆・長浜赤十字病院長に聞く2

 病院の産婦人科で分娩休止が相次ぐのは、女性医師の増加も一因と知った。働き盛りで出産・育児にさしかかるため、同僚に過度の負担がかかるという。

 2008年まで、女性は全国の産婦人科医の約3割だったが、20年に5割弱まで増えた。その半数近くは妊娠、育児中という。

 24時間365日対応の長浜赤十字病院にも、多くの女性医師がいる。

 楠井隆院長は言った。

 「医師の働き方改革の背景に女性医師の増加がある。時間外勤務削減や有給休暇取得率向上など数値目標にすり替えられることが多いが、根源はワーク・ライフ・バランスの話だ」

 現在、長浜日赤の女性医師は全体の3割弱。医師同士で家庭を持つケースも増えている。

 院長は、院内の働き方改革の一環として、「男性医師も家事を分担して」と職員に話している。

 たとえば、医師の早退。今は「学会活動」など公的な用事以外では認められない雰囲気があるが、今後は「家事があるから」も容認される文化を定着させたい、という。

 ただ、それは病院だけではだめで、社会全体に広がる必要がある。

 例えば医師が、ある患者の夫に「奥さんの診療方針の説明をしたい」と伝えたとする。ところが夫は「仕事があるので、午後5時以降でないと行けない」と言う。そのニーズに応じるためには、医師が残業しなければならなくなる。

 病院としては、夫の職場が「病院で説明を聞きたい」という家庭のニーズを受け入れ、夫を早く帰らせてほしい。

 「仕事が『公』で、家庭は『私』。今の社会では公が常に優先される。しかし、それでは社会全体の効率化は図れない」

 「共働きが当たり前の世の中で、男性も家事をする文化を作り、家庭のニーズは後回し、という既成概念を打破する必要がある。多様なニーズが平等に評価されることが働き方改革の本質だ」

 私は大きな感銘を受けた。父親が「熱が出た子を迎えに行きたい」と帰ることが容認される職場なら、母親だけが家の都合を優先させなくて済む。

 夜も子の世話を安心して任せることが出来る家庭なら、女性も適正な当直勤務をこなせるだろう。

 「育児中の女性は職場に負担がかかる」と捉えるのではなく、家庭の家事分担を進め「誰にも優先させたい『私』のニーズがある」ことを容認する職場環境を、社会全体が整えることが必要だと思った。

(10月15日掲載)

 

㉕地域医療[6] 長浜日赤・中島正敬産婦人科部長に聞く1 急な転院、受け入れに限界

 今年1月、市立長浜病院が4月以降の分娩中止を発表した。妊婦への説明も同じタイミングだった。

 「どこで産んだらいいですか」

 近くの長浜赤十字病院(長浜日赤)に、泣きながら電話をかけてくる妊婦がいたという。

 産婦人科の中島正敬部長は、「休止後に予定日を迎える妊婦については、もっと早く他施設へ紹介してほしかった。一番困るのは妊産婦だ」と話した。

 実は中島部長は2年前の2019年春、滋賀医大の村上節教授から「21年4月には市立長浜に派遣している医師を引き上げる」との方針を伝えられていた。

 長浜日赤はすぐ準備を始めた。市立長浜からあふれる妊婦を受け入れるため、産科病床の増設▽緊急帝王切開に対応できる分娩室の新設▽診療体制3診制から4診制に増やす、などを進めたという。

 ところが、市立長浜からはなかなか連絡が来なかった。正式に伝えられたのは、1年半もたった20年11月だった。

 「他病院に『いつ止めるのか』とは聞きづらく、本当に止めるのか分からないでいた。うちにも受け入れには限界がある。急に言われても対応できない」

 中島部長はそう話した。

 妊婦は、おおむね妊娠1カ月以内に最初に産科を受診する。予定日が4月以降なら、前年の6、7月には産科を訪れる。中島部長は「20年6、7月ごろに発表してほしかった」と言う。

 4月以降、市立長浜で出産予定だった妊婦は約50人。長浜日赤だけでは受け入れきれず、彦根市の施設などと調整して受け入れた。

 どうして、こうなってしまったのか。

 滋賀医大は19年、市立長浜に医師引き上げの方針を伝えた。働き方改革や病院の再編統合が主な理由で、長浜日赤に周産期医療を任せるということだった。

 が、市立長浜は産科を諦めなかった。19年には産科病棟の改修に着手。「市民病院として、分娩施設を手放すわけにはいかない」との意地があったという。

 ぎりぎりまで滋賀医大に再検討を求める一方で、京大などに打診するなど手を尽くしたがかなわず、1月の発表にいたった。

 一市民として、市立長浜の努力はありがたいと思う。でも、転院を強いられた妊婦の不安を思うと胸が苦しい。

 24年に向け、病院の集約化が進むという。路頭に迷う妊婦が出ないよう、県や病院は責任を持って調整して欲しい。

(11月10日掲載)

堀江昌史

2021年11月9日

北国街道にリモートワークの拠点

町家を改修「BIWAKO  PICNIC  BASE」誕生

 元浜町の北国街道沿いに江戸中期の町家を改修したリモートワーク拠点「BIWAKO PICNIC BASE」が8日オープンした。第3セクター「長浜まちづくり」が整備したもので、リモートワークやワーケーションの拠点などとして利用でき、大学のサテライトオフィスも設けることで、多彩な人材の交流を生み出したい考え。

 町家は木造2階建て延べ350平方㍍。江戸期には紙問屋を営んだ商家で、その後は個人宅として使用されていた。天井には中庭に向けた庇を支える天秤梁が3本通り、歴史の深みを感じさせる。

 1階には北国街道に面し中庭も見通せるフリーラウンジをはじめ、長浜バイオ大のサテライトオフィス、土蔵をそのまま活用した静寂性のあるミーティングスタジオがあり、キッチンも備えている。2階はオフィスルームなどがある。

 オフィスルームの利用料金は月10日まで利用できるライト会員(2拠点生活者、リフレッシュ利用向け)が月額5000円、年間を通じて利用できる個人会員(リモートワーカー向け)が月額1万6000円、法人会員が月額3万2000円から。

 長浜まちづくりは「地域住民や企業関係者、来街者、学生などさまざまな人がピクニックを楽しむように出会い、アイデアを交換し、新しいことにチャレンジするきっかけになるハブ(結節点)を目指したい」と話している。誰もが自由に利用できるフリーラウンジは午前8時半から午後6時まで。原則無休。問い合わせは同所℡(65)3935へ。

地場産業16社が集結 13、14日伝売日本市

 日本各地の地場産業の商品を集めた「伝売日本市」が13、14日、BIWAKO PICNIC BASEで開かれる。「日本各地の地場産業を、日本の隅々まで伝えたい」をコンセプトに、全国16事業者が出展する。織物、工芸雑貨、菓子、焼き物、地酒など幅広いジャンルの逸品が並ぶ。午前10時から午後4時まで(14日は同3時まで)。

2021年11月5日

職場体験 北ビワコホテルグラツィエが受け入れ

仏料理でテーブルマナー講習も

 新型コロナウイルス感染拡大に伴って各地の中学校で職場体験が中止されていることを受け、北ビワコホテルグラツィエではホテル内での複数の職種体験を提案している。4日には西浅井中2年生23人がテーブルマナー講習を受けた後、パティシエやバーテンダーの仕事を体験した。

 職場体験は中学2年生のキャリア教育の一環で、3〜5日間、地域の事業所で仕事を体験し、働く意義などを学ぶもの。コロナ禍で昨年度からほとんどの中学校で中止となっている。

 北ビワコホテルグラツィエではコロナ禍で各地の小中学校の修学旅行や校外学習が中止・延期となっていることから、長浜市内の観光や歴史学習にホテルでのテーブルマナー講習や職業体験を組み合わせたプログラムを作り、県内の学校に提案したところ、中学校から「職場体験の場として利用したい」とのリクエストがあった。

 4日、同ホテルを訪れた西浅井中生はフランス料理のフルコースを食べながらナイフやフォーク、ナプキンの使い方などテーブルマナーを学んだ。この後、ベルボーイ、バーテンダー、パティシエの仕事のほか、花嫁のヘアセット、客室清掃などを体験した。

 バーテンダー体験ではカシスなど4種類のリキュールを使ってノンアルコールカクテル作りに挑戦。ホテルのスタッフからシェイカーの振り方などを教わって、自分好みのカクテルを作り上げていた。

 パティシエ体験ではショートケーキを作った。シェフの手ほどきで、回転台にスポンジを載せてパレットナイフで生クリームを塗り、フルーツを盛り付けていた。小畑結愛さん(13)は「フルーツをバランスよく盛り付けるのが難しかったけど、意外に綺麗にできた。分かりやすく優しく教えてもらえて良かった」と話していた。

 「コロナ禍で多くの方にホテルを支えていただいた。地域社会への貢献のためにも、恩返ししたい」と語る同ホテルの塩田秀樹支配人。「職場体験を行えずに学校が苦労していると聞いた。ホテルならではの提案ができ、子どもたちのキャリア教育の一助になったのであれば嬉しい。今後も要望があれば受け入れてゆきたい」と話している。

2021年11月4日

長浜に移住女性8人 雑誌創刊へ

理想と現実、日常の気付き綴る 来年3月「サバイブユートピア」出版

 長浜市内に移り住んだ女性8人が移住の理想と現実、日常生活で気付いたことなどを綴る雑誌の創刊を目指している。

 市が募集した地域おこし協力隊に応募したり、結婚を機に移り住んだりと、8人の移住のきっかけはいろいろ。今年7月に山路酒造(木之本町木之本)での奈良漬け体験に参加した際、意気投合し、移住に関する情報を発信するため、仲間に声をかけて雑誌の創刊を目指すことに。8人が伊香地域を拠点に活動していることから、グループを「イカハッチンプロダクション」と命名した。

 メンバーはいずれも20〜30代の女性で、松浦すみれさん(ルポ&イラストレーター)、渡邉ゆかりさん(職人文化を発信する「仕立屋と職人」代表取締役)、MUTSUMIさん(ヨガ講師)、堀江昌史さん(出版社能美舎・丘峰喫茶店経営)、對馬佳菜子さん(観音ガール)、浅井千穂さん(写真家)、荒井恵梨子さん(カフェ「コマイテイ」店主)、船崎桜さん(地域おこし協力隊・ライター)。東京、埼玉、栃木、兵庫、大阪、京都など出身地はさまざまだ。

 創刊を計画している雑誌のタイトルは「サバイブユートピア」。移住にあたって自然豊かな湖北地域を「理想郷」(ユートピア)と思い描いて移り住み、現実とのギャップを感じながらもこの地で生き抜こう(サバイブ)との思いを込めている。湖北の暮らしを彩るイラスト、滋賀の漬物文化、仏像への思い、女性の体のケア、高齢化が進む小さな集落の日常など、8人それぞれの視点と表現方法で綴る。堀江さんは「生まれ育ったことのない場所で住み続けることは苦労もある。苦労している点、楽しめる点など私たちの生き様をリアルに伝え、移住希望者に読んでもらいたい内容にしたい」と話している。来年3月に1000冊を出版し、全国の書店で販売する。

 なお、イカハッチンプロダクションでは出版費用25万円を募るためスポンサーを募集中。企業は1口1万円〜、個人は1口5000円〜。雑誌にスポンサーの名前を掲載する(希望者のみ)。なお、6日に木之本町木之本の江北図書館前駐車場で開かれる古本市「いろはにほん箱」でも協力金を募る。問い合わせはイカハッチンプロダクション(ikahacchin.production@gmail.com)へ。

2021年11月2日

創立150周年 長浜小で記念式典

県内最古「歴史に誇りと自信を」

 創立150周年を迎えた長浜小学校(杉本義明校長、児童838人)で10月30日、記念式典が開かれた。記念事業では地元で400年以上受け継がれてきた長浜曳山まつりの子ども歌舞伎が披露され、児童、教員、保護者、地域住民が協力して150年の節目を祝う舞台をつくり上げた。

 同校は1871年(明治4)の創立で、県内で最初に開校した小学校。明治政府が学制を発布する前に、地元の実業家・浅見又蔵氏らが教育の必要性を説いていち早く創設し、これまでに2万人を超える卒業生を輩出している。

 体育館で行われた式典は新型コロナウイルス感染対策のため、6年生と来賓が出席し、1〜5年生は教室でライブ配信映像を通して参加した。

 杉本校長は「明治、大正、昭和、平成、令和と時代の変遷と共に歩んできた本校の教育は、激動する社会の流れに適応しながら幾多の苦難を乗り越えてきた」と語り、「この素晴らしい歴史のある長浜小学校で学べることに誇りと自信を持って下さい。校訓『開知』という言葉に込められた、地域の方々の願いに応え、社会に貢献できる人に成長して欲しい」と児童に呼びかけていた。

 この後、6年生153人全員が参加して子ども歌舞伎「ながしょう座」を上演。体育館の特設舞台で3つの演目を披露した。また、グラウンドでは全児童が参加して風船飛ばしがあり、それぞれが自身の将来の夢や、拾った人へのメッセージを記したカードを取り付け、一斉に青空に放っていた。夜にはグラウンドで花火の打ち上げがあり、この日の記念事業のフィナーレを飾った。

2021年10月26日

長浜のお庭文化を後世に

市民有志が書籍化へCFで資金募る

 長浜市内に残る個人宅の庭や名勝庭園などを調査しているグループ「ながはまのお庭プロジェクト」(山崎弘子代表)はこれまで発行した小冊子5冊を再編集し新たにインタビューなどを盛り込んだ書籍を販売することになり、クラウドファンディング(CF)で制作費用180万円を募っている。

 長浜市は茶人で造園家の小堀遠州(1579〜1647年)の出身地。遠州の手掛けた庭は市内にはないものの、遠州の作庭文化を受け継いだ辻宗範、勝元宗益(鈍穴)、布施宇吉(植吉)らが活躍した。長浜商人は豊かな経済力を背景に庭師を呼び寄せて競って庭を造らせ、今もその多くが当時の姿を変えず受け継がれている。

 2009年に京都大学の学生らが市街地で庭の調査を始めたのをきっかけに個人宅に古い庭が多く残ることが明らかになり、さらに調査を進めるため、大学教授や庭師、市民活動家、市職員ら有志でプロジェクトを結成。中心市街地に残る個人宅の庭の調査を進め、市町合併後は市全域を見て回り、約10年かけて約1000カ所を調べた。このうち、江戸、明治、大正時代に造られた庭を小冊子「ながはまのお庭」にまとめあげ、これまで5巻を発行した。また、庭を巡るツアーや講演会の開催などを通して、長浜に残る庭文化の発信、保存に取り組んできた。

 新しく書籍化を計画しているのは小冊子を再編集したもので、約100カ所の庭を紹介したうえで、所有者へのインタビュー、庭師による座談会のようすも収録する。タイトルは「市中の山居〜ながはまのお庭〜」(仮題)で、B5判98ページ。

 古い庭は今も隠れるように大切に受け継がれてきたものの、現代の住宅に似合わないとして取り壊されて駐車場になるなど少しずつ失われつつあり、同プロジェクトは「今、声を上げないと失われてしまう」と危機感を抱く。山崎代表は「埋もれていた長浜のお庭文化を調査・発見する機会をいただいた。住宅事情が変わり庭の存続が危ぶまれるが、世界に誇れる日本の庭文化が守られるきっかけとなれば」と話している。

 なお、CFでは寄付金額に応じて書籍や絵はがき、米、地酒などの返礼品を贈る。詳細はキャンプファイヤー(https://bit.ly/3mojy2m)へ。

2021年10月22日

ガラス作家97人 こだわり光る

黒壁主催  慶雲館で公募酒器展

 長浜市街地の黒壁スクエアや北国街道、慶雲館などで23日から11月7日まで黒壁主催の「ナガハマグラスフェス2021」が開かれる。

 市街地に点在する歴史的建造物や古民家、文化施設を会場として、全国の多彩なガラス文化を発信する催し。全国のガラス作家から酒器を募る「北近江サケグラス公募展」(慶雲館)、小中学生のデザイン画を実物グラスにした「みんなのグラスデザイン画コンペティション」(元浜町、旧長浜アートセンター)、ガラス工芸の巨匠の作品を並べる「伊藤けんじガラス工芸展」(慶雲館新館)などがある。

 慶雲館では22日午前、北近江サケグラス公募展の準備が完了し、北海道から沖縄までの作家97人の作品が並んだ。吹きガラス、切子、サンドブラスト、ベネチア伝統のレースガラスなど、作家それぞれが得意の技法を駆使して制作している。桜の花などを緻密に表現した作品「一陽来復〜冬から春へ」や、「愉しく呑みたいね」とのメッセージを添えたユニークな作品「イカ徳利とタコ盃」など、作品のタイトルからも作家のこだわりや思いが伝わる。なお、公募展では入館者やインターネットでの人気投票で入賞作品を決める。黒壁の広報担当・佐藤泉さんは「慶雲館の歴史あるたたずまいの中で、全国の作り手による、おうち時間を楽しくしてくれるガラスの酒器をご鑑賞ください」と来場を呼びかけている。

 慶雲館の入館料は大人300円、小中学生150円。午前9時半から午後4時半まで。

 

 

2021年10月20日

車いすバスケ清水選手 パラ報告

「悔しくて、楽しい大会」

 東京パラリンピックの車いすバスケットボール競技に出場した長浜市出身の清水千浪選手が19日、藤井勇治市長を表敬訪問し、大会結果を報告した。

 清水選手は浅井中、虎姫高出身。愛媛大学時代にサッカーを始め、なでしこリーグでも活躍していた。引退後、病気で下肢に障害が残り、2015年から車いすバスケに打ち込んでいる。今夏、日本代表としてパラリンピックに初出場。全6試合に出て計8ポイントを得点している。日本代表は予選を2勝2敗で突破し、準々決勝、5位決定戦で敗れ、出場10カ国中6位となった。

 表敬訪問で清水選手は「とてつもなく悔しくて、楽しい大会でした」と笑顔で振り返った。目標としていたメダルには届かなかったものの、車いすバスケ女子日本代表としては13年ぶりのパラリンピック出場で、「6位ということは、満足いく結果だったと思う」と語った。コロナ禍での開催について「無事に開催されたことに感謝したい」とした。

 清水選手はユニフォームや競技に使用する車いすを紹介し、素早く回転できるように車輪の角度が「ハ」の字になっていることを説明していた。

 2024年のパリ大会でのメダル獲得が今後の目標といい、「チームの課題は経験値が足りないこと。上位のチームは応用力があるが日本にはない。男子と試合して経験を深めたい」とした。自身もシュート力の向上に励むとした。

 また、2025年に滋賀で開かれる国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会に向け、湖北地域で車いすバスケの大会を開いて競技を広めたいとした。

 藤井市長は「清水選手の活躍でパラリンピックを身近に感じた。次のステージを目指して活躍してください」と声をかけていた。

2021年10月12日

新しい江北図書館目指して

県内最古の私立図書館 理事一新  有志集い次世代へ継承

 開館から114年にわたって地域住民によって運営されてきた県内の最古の私立図書館「江北(こほく)図書館」(木之本町木之本)。資金難や建物の老朽化、利用者の減少など課題が山積する中、図書館を運営する公益財団法人江北図書館はこのほど理事を一新し、新しく策定した「基本方針」に基づき図書館再生に動き出した。

 同図書館は旧余呉村出身の弁護士・杉野文彌氏(1865〜1937年)が「郷土の青少年に読書に親しむ機会を」と1902年(明治35)、私財を投じて杉野文庫として設立したのが前身。これを継承して07年に財団法人が設立され、翌年に江北図書館が開館した。75年からは旧伊香郡農会の建物を図書館としている。

 開館から100年以上を経過する中、各地に公立図書館が次々と誕生し、利用者が減少。支援を受けていた伊香郡町村会が市町合併を機に解散して以降は資金難にも見舞われ「今後の運営は資金的に見通しが立たないのが現状」としている。また、築84年の2階建ての建物は雨漏りするなど老朽化が深刻な状態となっている。

 そんな苦境にあえぐ地域の私立図書館を再生しようと地域住民有志が集い、今年6月に理事を一新した。地域活動に熱心に取り組む30代、40代の若手を含め9人体制で発足した理事は、これまでより平均年齢が約20歳若返ったという。

 理事長には岩根卓弘氏(47)=キクヤ社長=が就任し、副理事長として平井和子さん(読み聞かせグループ木のポン代表)、太田浩司氏(長浜市学芸専門監)が支える。館長には久保寺容子(ひろこ)さん(あいたくて書房店主)が就き、これまで40年にわたって理事長を務めてきた冨田光彦(てるひこ)氏(滋賀大名誉教授)は名誉館長に。

 新たに策定した基本方針は、杉野氏が抱いた青少年育成と地域文化向上の思いを大切にし、地域に貢献する図書館を目指す、としている。具体的には▽子どもの本を厳選した開架▽館内での読み聞かせ会やワークショップの開催▽歴史資料の調査・研究▽レトロな建物の維持と活用▽前庭を活用したイベントの開催▽地域の情報収集と発信の拠点づくり▽「図書館だより」の発刊—などを掲げている

 岩根理事長は「長い歴史を持つ江北図書館がこれから先も地域に貢献し地域住民から必要とされるよう、次世代にしっかりと受け継いでいく」と決意を語り、「図書館のイメージを一新するため小さな事業を積み重ねていきたい」としている。

 久保寺館長は「建物も蔵書も古いが、それが魅力でもある。これを発信して多くの方に足を運んで興味を持ってもらい、江北図書館が大好きと言ってもらえる人を増やしたい」と話している。

 なお、江北図書館の開館時間は火〜土曜が午前10時から午後4時まで、第2、4、5日曜が午前10時から午後2時まで。第1、3日曜と祝日は休館。

2021年10月5日

どうなる?お産 ㉒-㉓

㉒地域医療[3] 医師の働き方改革 期待もある

 2024年に始まる医師の働き方改革。病院が減ってしまわないのか、分娩費が値上がりしないのか…、気がかりは多い。

 ただ、「医師側としては、期待もある」と、滋賀医科大医学部付属病院の村上節教授は言う。

 まずは女性医師が働きやすくなる。産婦人科医は女性が多い。県内の病院勤務医の約48%は女性で、うち7割弱が20〜30歳代だ。

 一般的に、医師は24歳で医学部を卒業後、研修医として2年かけて診療科全体を回る。その後、専攻医として約3年間、専攻した科で研修を積む。

 さらに、産婦人科のキャリアでは、基本となる領域以外にも、それに基づく「サブスペシャルティー領域」(周産期、婦人科腫瘍、生殖医療、内視鏡技術など)を習得するのに約3年かかる。その時点で30歳代半ば。中堅として働き盛りだが、女性医師はとうに出産適齢期を迎えている。子どもを望むなら現場を離れざるを得ない。

 その結果、科の構成が50、40代の次は若い研修医という事態が頻発し、上級医師に過重負担がかかる構図が生まれがちだという。

 村上教授は「集約化で1施設当たりの医師が増えれば、産休・育休から復帰した女性医師に日中を任せ、上級医師は日中休むなど、柔軟な体制が組めるかもしれない」と話す。

 さらに、産婦人科医師の志望者数の増加が期待できる。産婦人科は、当直回数や勤務時間、訴訟リスクが他科を上回る「3K」と呼ばれてきた。過去25年、医師総数は増えているのに、産婦人科医は微減となっている。

 実際、滋賀医大でも、4年生の時には産婦人科に興味を持っていても、翌年からの臨床実習と卒業後2年間の初期研修で各科を回ると、他科を選ぶ者は少なくない。

 「忙しさを目の当たりにするから。だが医学生や初期研修医にゆとりのある働き方を見せることができれば、志望者は増える」と村上教授は信じている。

 なぜなら、「医療界でこんなに幸せなことが起こるのは産婦人科だけ」だからという。

 教授は元々、精神科医志望だった。しかし、入学した東北大の臨床実習で病棟を回る内に、他科が「残念です」ばかりなのに、産婦人科だけが「おめでとう」と言えることに感動し、産婦人科医になったそうだ。

 「今は過渡期。みんな将来がわからないでいる。何年もかかる事業だが、未来は悪くないはずだ」

 一市民として、働き方改革が地域医療にもたらす課題は注視したい。一方で、医師の労働環境の整備が期待通りに進むよう、理解も深めていきたい。

(9月27日掲載)

㉓地域医療[4] 楠井隆・長浜赤十字病院長に聞く1

 市立長浜病院が分娩を中止した背景に、病院の集約化を急ぐ国策があった。

 厚労省は2020年、病院再編を重点支援する全国5区域の一つに、湖北区域(長浜、米原両市)の4病院(長浜赤十字=日赤、市立長浜、市立湖北、セフィロト)を選んだ。

 再編統合の核となる長浜日赤と市立長浜は、救命救急や緊急性の高い「高度急性期・急性期」の病院だ。どんな再編統合が地域医療のためなのか。長浜日赤の楠井隆院長に話を聞いた。

 「2病院の機能を再配分し、急性期も回復期も地域で完結して支える一つの病院となることが望ましい」

 そう話す楠井院長は、理由を次のように説明した。

 「医師不足と将来の人口減を考えると、似た病院が二つあっても効率が悪い。一方で、長浜に回復期の患者の受け入れ先が少なく、県南の施設に転院をお願いしている状況がある」

 院長がモデルとみるのは、兵庫県立病院だった尼崎病院(約500床)と塚口病院(約400床)の統合だ。15年に「県立尼崎総合医療センター」(約730床)に再編された。

 尼崎病院は地域の中核病院として、がん手術など高度専門医療を提供する一方で、周産期医療は実施していなかった。

 塚口病院は、地域周産期母子医療センターの指定を受け、周産期医療と小児(救急)医療を担っていた。しかし脳神経外科医、心臓血管外科医が不在で、合併症妊婦(脳血管障害、急性心疾患など)への対応ができなかった。また両病院とも老朽化や敷地不足に直面していた。

 確かに長浜の2病院と状況は似ている。市立長浜(約600床)は厚労省から「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受け、長浜日赤(約500床)は「地域周産期母子医療センター」の指定を受ける。

 両病院とも建設から築20年以上の本館の老朽化、高度医療機器のメンテナンスが問題となっている。長浜日赤は、現状の敷地では改修・増築に対応できない。

 楠井院長は、病院再編への期待は多いという。

 まず、医師が1病院に集まれば診療機能の充実が図れる。そこに患者が集まれば、症例数が増え治療の多様性に厚みができる。

 指導医は研修医や専攻医に多様な指導ができ、若手が習得できる手技が増える。技術的な向上が見込めるとなれば、医師にとってはそこで働く大きな誘因となる。技術レベル向上が医師確保を促す、という好循環を目指したいという。

 楠井院長は「一つになれば、大学病院に負けない高度な機能を持てる。話を前に進めるため、行政の支援が必要だ」と力を込めた。

 

(10月5日掲載)

堀江昌史

2021年10月4日

「旅する蝶」アサギマダラ

西浅井のペンションに大挙、産卵も

 西浅井町大浦のログハウスペンション「ラダー」に、「旅する蝶」アサギマダラが大挙。乱舞する光景が見られ、話題となっている。

 アサギマダラは、浅葱(あさぎ)色の大きな羽が特徴。秋に温暖な地を求め、信州方面から九州などへと、日本列島を縦断するように南下し、その距離は1000㌔を超えることも。人気アニメ「鬼滅の刃」にも登場し、キャラクターのモチーフになった、とファンの間で話題となっており、近年、脚光を浴びている。

 ラダーには開設当初の22年前から数匹が飛来していた。昨年、オーナーの田中伸征さん(52)は蝶が飛び交う「バタフライガーデン」を作ろうと、アサギマダラが蜜を吸うため集まるフジバカマを10株ほど植えたところ、多い日で10匹程度が集まるように。

 今年、フジバカマの数を3倍増やし、産卵場所として好むキジョラン(鬼女蘭)を植えたところ、9月上旬から次々と飛来するようになり、10月3日には過去最多の60羽が集結。初の産卵も確認できた。

 アサギマダラは各地を移動しながら、昼間、フジバカマやヒヨドリバナ、アザミなどキク科の植物に集まり、夜は涼しい山中で過ごす。天候や気温に敏感で環境バロメーターを示すとされ、近年、地球温暖化の影響で北上傾向にあるという。

 この蝶の生態は明らかにされていない部分が多く、各地で固体識別番号を羽に入れるマーキング調査も行われている。田中さんは「ラダーの目前には琵琶湖があり、周りを山に囲まれているから、棲みやすいのでは。来年はもっと増えるだろう」と推測している。見ごろは今週いっぱい。

2021年9月30日

自然農シェア畑を開設

宮崎さん「ゆるく野菜作りいかが?」

 「ゆるく農業してみませんか?」—公園町の宮崎好美さん(50)は米原市長沢に無償貸し出しの「自然農シェア畑」を開設。農業を楽しみたい女性らを募集している。

 宮崎さんが農業に興味を持ったのは6年前。湖北町の山本山の南斜面で、趣味でミカンやハッサクなどの栽培をしていた父の雨森由平さん(享年76)の急逝により、柑橘畑の世話をするようになった。

 雨森さんは実家の西浅井町岩熊から通い、柑橘類を大切に育てていた。宮崎さんは父の思いを受け継ぎ、農薬や化学肥料を使わない自然農法を実践。作物本来の味を知ってもらうと、親子向けの柑橘狩り体験を開いた。その後、夫が同僚から借りた高月町東物部の畑で豆類を栽培し、農業や味噌作りのノウハウを積み重ねた。

 「友達と一緒に楽しく野菜を作りたい」と、1年前、友人の紹介で長沢の畑を無償で借り受けた。このあたりは農業従事者の高齢化により、遊休農地が点在しており、第1区画(約50平方㍍)を預かることになった。

 知人の女性に「農業しない?」と呼びかけたところ、5人が集まり、区割りした畑でキュウリやトマト、ピーマンなどを作るように。参加者は子育てやパートの合間、自由に出向き、好き勝手に作物を栽培。作り方がわからない時は宮崎さんがアドバイスしている。

 地域住民の協力で今は第2区画(25平方㍍)もでき、栽培女性も増えている。「作る喜び、収穫する楽しさを味わってもらえたら」と話す宮崎さん。今後は収穫した農作物を加工するなどし、ムーブメントを広げたい、としている。

 現在、無償で畑を貸してくれる人、野菜作りをしたい女性、畑と人をつなぐ仲間を募集している。問い合わせは宮崎さん℡090(4305)4337へ。