異種金属の接合技術を追究

大橋鉄工 「摩擦圧接」で脱下請け目指す

 ステンレスとアルミ、耐熱鋼とチタンなど、従来の溶接技術では難しい異種金属や非鉄金属の接合に、産業用機械部品メーカー「大橋鉄工」(三ツ矢町)が特殊な技術を用いて挑戦している。

 一般的に金属を接合する場合は「機械的結合」(ボルト締めなど)、「材質的結合」(溶接など)、「化学的結合」(接着など)の3種類の方法に大別でき、同社が取り組むのは材質的結合。ただ、従来の溶接技術では異種金属や非鉄金属を強固に接合するのは困難で、そこで同社が目に付けたのが「摩擦圧接」と呼ばれる技術。金属を高速回転させることで発生する摩擦熱と強圧力を利用して金属同士を一体化させる。

 例えば鉄金属のニッケルと、非鉄金属のアルミを接合する場合は片方の金属を分速2500回の高速回転で約1・5秒間回して、接合面を摩擦熱で660度まで上昇させたうえ、そこに1平方㌢当たり70㌔という強圧力を加える。こうすることで、双方の金属を瞬時に接合できる。

 同社は2008年から摩擦圧接の研究に取り組んでいる。回転数、温度、圧力は接合する金属によって異なることから、試行を繰り返しては、強度の評価を龍谷大理工学部・森正和研究室に依頼している。

 同社は産業用エンジン部品や自動車部品の下請けメーカーとして70年余りの歴史を持つが、なぜ、ここにきて摩擦圧接を追究するのか。大橋正明社長(67)は「下請けだけでは、我々小さな製造業は生き残れない。独自性のある商品や技術が必要」と語る。

 異種金属を強固に接合するこの技術では、負荷のかかる部分には耐久性のある高価な金属を、それ以外の部分には安価で軽量な金属を用いることが可能となり、部品の耐久性、低コスト化、軽量化を図れることが大きなメリットという。例えばニッケルとアルミを接合すれば、軽量さと硬さを両立させた部品を実現できる。

 ただ、異種金属を接合するこの技術は広く知られていないため、マーケットの広がりは未知数。大橋社長は「今後は展示会などで技術を広め、顧客を開拓したい」と話し、摩擦圧接を研究する製造部の赤尾文彰さん(38)は「まだ実現していない金属同士の接合もあり、その技術を確立させたい」と話している。

掲載日: 2021年07月26日