伝統の技で四天王を再現

米原市の仏師・中川さん親子が製作中

 米原市西山の仏師・中川大幹さん(69)・大煌さん(34)親子が伝統的な技法で巨大な「四天王」像の彫刻に挑んでいる。

 中川さんは23歳の時、京都の大仏師・松久朋琳氏に弟子入りし、独立後は神戸市、海泉寺の十一面観音を皮切りに、京都壬生寺の圓覚十萬上人座像や光覚寺(長浜市榎木町)の阿弥陀如来像、東広島の龍玄精舎の仁王像など150体を製作。息子の大煌さんは美術大学で彫刻を学んだ後、大幹さんに弟子入りした。

 今回、神奈川県平塚市の長楽寺から楼門の建立にあたり、中に収める四天王の製作依頼があった。四天王は「持国天」「増長天」「広目天」「多聞天」の四神からなり、帝釈天の配下で仏教世界を護る。依頼の像はいずれも身の丈6尺(1・8㍍)、台座も含めると3㍍の大きさ。

 製作は図面の作成から始まり、「立体設計図」ともいえる原寸の3分の1の粘土像を作った上、これをベースに木製ひな形(原形)を作る。

 実像はひな形を3倍に拡大。木曽ヒノキの天然木5寸(15㌢)の角材を圧着した「寄せ木」に大胆かつ繊細にノミを入れてゆく。部位の比率、飾りの約束事を忠実に守りながら、血管の1本1本まで再現。仕上げには一切、サンドペーパーを使っていない。ノミの跡が浮かんでおり、艶やかな木肌を醸す。

 中川さんは「私たちは彫刻家でも芸術家でもないから、鎌倉時代の伝統技法を受け継ぎながら、依頼主の意向をくみ、忠実に再現している」と話している。

 現在、多聞天と持国天を彫っており、3年後には4体すべてが完成する予定。製作はグリーンパーク山東内の伊吹の見える美術館。見学可能。問い合わせは中川さん℡(55)2187へ。

掲載日: 2020年12月18日