両生類 暑さをどう感知?

長浜バイオ大などのグループ、仕組みを解明

 暑さを嫌い、涼しい環境を好むサンショウウオなどの有尾両生類がどのようにして気温を感じ、生息環境を選択してきたのか—。長浜バイオ大学と生理学研究所(岡崎市)の研究グループが有尾両生類の感覚神経が持つ高温センサー「TRPV1」(温度受容体)の感受性を突き止めるとともに、たった2個の「アミノ酸残基」(タンパク質を構成しているアミノ酸の1単位)が「熱い」と感じる温度を変化させていることを明らかにした。

 研究は「ウーパールーパー」の名で親しまれているアホロートル、スペインなどに生息するイベリアトゲイモリ、長浜市にも分布するヤマトサンショウウオ、山地の渓流に棲むハコネサンショウウオの4種類について、それぞれのTRPV1の温度応答性を調査した。

 ラット(ネズミ)などの動物は43℃程で「熱い」と感じるが、涼しい環境を好む有尾両生類は30℃ほどで「熱い」と感知する。研究グループは有尾両生類のTRPV1が動物に比べ10℃近く低い温度で反応する性質を突き止めた。

 また、アミノ酸残基に温度に反応する部位があると推測して、有尾両生類とラットのアミノ酸残基を比較するなどして、重要な役割を持つ2個のアミノ酸残基を特定した。

ヒトの「痛み」治療につながる可能性も

 長浜バイオ大の斉藤修教授ら研究グループは「地球温暖化による動物への真の影響を理解、予測し、種の保全に有益な情報になる」と研究成果の意義を語っている。さらに、温度感知の仕組みは痛みの感知にも通じ、「TRPV1の活性化の仕組みや、その感受性の変化が起きる仕組みを明らかにすることは、ヒトの神経障害性などさまざまな『痛み』に関係した疾患の治療や新薬開発につながる突破口になる可能性がある」としている。

 研究成果は11日、電子版英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

掲載日: 2023年05月12日