いも観音さん、一堂に

クラファンで脚光、高月の資料館で展示

 インターネットのクラウドファンディング(資金調達、クラファン)で目標額の約3倍の支援を集めた安念寺観音堂(木之本町黒田)の修復プロジェクト。観音堂に安置されている通称「いも観音さん」全10躯が高月観音の里歴史民俗資料館で展示されることになった。堂外の全躯公開は初。

 言い伝えによると、ホトケ様を安置する天台宗の安念寺は神亀3年(726)開基。大化の改新で知られる藤原鎌足に縁がある人物が興したとされ、藤原一族はこの地にとどまり、藤田姓を名乗り、約1300年間、この寺を守ってきた。

 信長の焼き討ち(1571)と賤ヶ岳合戦の放火(1583)により、2度、焼失したが、村人たちが御堂から木造菩薩形立像(高さ約150㌢)を搬出。境内に隠す場所が無かったため、田畑に埋めて、守り抜いた、とされる。

 戦禍を乗り越えたホトケ様は手足を失い、顔も判別できないほどの姿となったが、村人達は土中に埋められていたホトケ様を掘り出し、近くの余呉川で泥土を洗い清め、仮堂に安置。イモ洗いのように洗い清めたことから村人は「いも観音」と呼ぶようになり、、皮膚病を治す「身代わり観音」として信仰している。

 また、昭和初期には「夏、子ども達が余呉川に浮かべ、洗いながら、水遊びをしていた」「農繁期、畦に運び子どもの守り(遊び相手)をしてもらっていた」など地域と親密な関係を持っていた、という逸話も残る。

 同館は「観音堂の安置時とは赴きがまったく異なるお姿。普段、見られない背面の写真なども展示しているので、必見の価値がある」と話している。

 クラファンは200万円を目標に、昨年8月13日から10月31日まで行われ、342人から556万9220円(278%)の支援金が寄せられた。いも観音さんは観音堂の改修に合わせ、同館に預けられたことから、公開。午前9時から午後5時、7月5日まで。火曜休館。入館料は一般300円。

掲載日: 2021年05月13日