鞘塗りの技、一本のペンに

渡邊美術工藝が開発「matou」

 長浜曳山まつりの山車修復や仏壇の漆塗りなどを手掛ける渡邊美術工藝(三ツ矢元町)が、日本刀の鞘に受け継がれてきた伝統技法「鞘塗り」を生かしたボールペン「matou(まとう)」を開発した。19日からクラウドファンディングサイト「Makuake」で応援購入の募集を始めた。仏壇や漆器の需要が減る中、塗師の渡邊嘉久さん(62)が105年続く工房の技を日常の道具へと落とし込み、次代につなごうとしている。

 渡邊美術工藝は大正10年創業。濱仏壇をはじめ、曳山まつりの山車や文化財の漆塗り、修復などに携わり、長浜の漆文化を支えてきた。曳山の「平成の大修理」では6基の漆塗り修復を手掛けた。

 一方、生活様式の変化などから仏壇や漆器の需要は減り、漆職人が技術を発揮する機会も少なくなっている。渡邊さんは仕事と向き合う中で、「伝統は、守るだけでは未来へ残らない」と考えるようになった。

 そこで目を向けたのが、毎日の暮らしの中で使われるボールペンだった。

 「matou」は、日本刀の鞘を美しく仕上げる鞘塗りの技法を筆記具に応用したもの。国産ケヤキを木軸に使い、旋盤で1本ずつ形を整えた後、漆を塗り、乾燥させ、研ぐ工程を何度も繰り返す。完成までには約1〜2カ月を要する。

 仕上げは、木目を生かす「拭漆」、深みのある艶を出す「木地呂」、使ううちに下の色が現れる「根来」、細かな輝きを見せる「梨地」の4種類。漆は使い込むほど艶や透明感が増すといい、持ち主だけの一本へと育っていく。

 開発のきっかけになったのは、渡邊さんが手掛ける漆のたまご「naderu(なでる)」だった。卵形の木地に天然漆を重ね、手のひらで撫でながら漆特有の滑らかさや温もりを味わう「触れる瞑想道具」として考案。今年2月には東京の展示会に単独出展し、国内外から手触りや発想への反響が寄せられた。

 その経験から、漆は見るだけでなく、実際に触れ、日常の中で使うことで魅力が伝わるとの思いを強めた。より身近な道具として着目したのがボールペンだった。

 渡邊さんは「現代の暮らしの中で使われ、人に愛されてこそ、技術は次の世代へ受け継がれていく。1本のボールペンを通して、長浜の漆文化を発信したい」と話している。

 価格は7700円から。詳細は「Makuake」(https://www.makuake.com/project/sayanuri/)から。

 

 

掲載日: 2026年08月21日