近世城下町ふるさとまつり
秀吉・秀長が築いた城下町、小堀正次も活躍
イベントや対談を通じて「現存最古の近世城下町」である長浜市の価値を再考する「近世城下町ふるさとまつり」(同運営委員会主催)が8日、市街地一帯で開かれた。2026年放映のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」にちなみ、秀吉の弟・秀長ゆかりの奈良県大和郡山市から関係者を招いた対談では両市の深い縁が紹介され、大河ドラマを機にした交流への機運を高めていた。
曳山博物館伝承スタジオで行われたトークイベントでは冒頭、上田清・大和郡山市長があいさつ。地元で「秀長さん」「大和大納言さん」と呼んで秀長を誇りにしていることや、長浜市小堀町出身の茶人大名・小堀遠州の父・正次や、須賀谷町出身の武将・片桐且元らも秀長の下、郡山で活躍したことなどを紹介。また、江戸期に郡山を治めた柳沢藩では年貢の3分の1ほどを近江が支えていたとし、記録に残る地名として、今荘、法楽寺、佐野、宮部、唐国、小観音寺、香花寺、弓削、野寺、川道、大浜、下八木、川崎、勝、国友などを挙げ、「年貢を近江に助けていただいたご縁を大事にし、大河ドラマをきっかけに仲良くしたい」と語った。
大和郡山市の文化財保存活用係・十文字健氏、淡海歴史文化研究所所長・太田浩司氏による対談では、2022年に国史跡に指定された郡山城跡について、秀吉が築いた大坂城や聚楽第と同じ型で作った瓦が出土したことなどが紹介された。
秀長は1585年に郡山に入り、郡山城の大改修とともに城下町を整備した。城下町の整備にあたり活躍したのが長浜から移住した小堀正次で、「箱本(はこもと)制度」(地租が免除される代わりに治安維持、防火、訴訟の取り扱いなどを町ごとに交代で請け負う制度)や検地など、秀長の城下町づくりに深く関わったとされる。十文字氏は「掘り下げれば掘り下げるほど、長浜との意外なつながりがわかるのが面白い」と両市の縁の深さにあらためて驚いていた。
太田氏は秀吉・秀長それぞれが実施した町人の地租免除制度が幕末まで続き城下町の発展を支えた共通点に触れたほか、小堀正次が箱本制度を裏付ける文書を出すなど秀長の筆頭家老として活躍したことを強調し、「再来年は、(大河ドラマに正次を)出してもらわないと困る。出なかったらみんなで文句を言おう」と会場の笑いを誘っていた。
十文字氏は「大河ドラマは城下町などの歴史遺産を市内外に発信する良いチャンス。こうやって長浜とのつながりを再認識する機会ともなった」と語ると、太田氏は「あと2年ある。さらに交流したい」と呼びかけていた。
トークイベントの後には両市の若手経営者らによる「下剋上サクセスストーリー『豊臣兄弟!』の可能性」をテーマにした近世城下町サミットも行われ、大河ドラマに向けた両市の連携について意見を交わしていた。
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近世城下町ふるさとまつりでは武将パレードや演舞、声優の山口勝平さんを招いたアテレコライブ、楽市楽座をイメージした屋台の出店などがあり、終日、多くの観光客でにぎわっていた。