下坂氏館跡の入館者から、タラヨウに切手貼り
下坂中町の国指定史跡「下坂氏館跡」を見学に訪れた福井県内の女性から、敷地内に生えるタラヨウの葉に切手を貼ったお礼のはがきが届いた。タラヨウは別名「ハガキノキ」と呼ばれるように、その葉に文字を書けることが知られているが、「本当のはがきのように届くとは」と、館跡を世話する住民を驚かせている。
届いた葉っぱのはがきは縦15㌢、横7㌢で、「先日はありがとうございました!!たのしかったです」と記されていた。
来館者を案内している「下坂氏館跡を守る会」の梅本修会長(70)によると4月下旬に女性が友人と一緒に見学に訪れた際、主屋の北側にひと際高く伸びるタラヨウに案内し、葉に字が書けることを紹介。何枚かをお土産に持って帰ってもらったという。10日ほど経ってその葉にお礼を書いたはがきが届いた。
「来館者にはタラヨウの葉に文字を書けることや郵便で届くことを説明しているが、実際に送ったことはなく確信はなかった。本当に届いて驚き、実際に送ってみようと思った女性には大変ありがたい気持ちです」と梅本会長。
守る会の副会長の梅本悟さん(68)は「スマートフォンで何でも届く世の中になっているのに、葉っぱで届くのもアナログで面白い」と笑顔を見せる。
タラヨウは高さ20㍍にもなる常緑高木。その葉の表面に傷を付けると黒く変色することから、爪楊枝や竹串などで文字を書ける。長浜郵便局によるとタラヨウの葉に切手を貼れば定形外郵便で送ることができるが、定形外でも最小サイズが定められているため注意が必要という。
なお、女性は「X」で、葉っぱを郵便ポストに投函して無事に届いたことをレポートし、26万件の「いいね」がつく反響を呼んでいる。また、守る会のガイドについて「歴史に詳しいのはもちろん、植物から朝ドラまで実に豊かな引き出しをお持ち」と紹介していた。
下坂氏館跡は戦国大名・浅井氏の家臣で中世の地侍の館跡。主屋や門、菩提寺の不断光院の本堂、庫裡など11棟の建物がある。地元住民でつくる守る会が土日・祝日に公開しており、地域と連携した文化財活用の事例としても注目されている。入館料は高校生以上350円、小中学生150円(長浜・米原は無料)。
梅本会長は「タラヨウの葉は希望者にはプレゼントするので、大人も子どもも来館してほしい。その際には屋敷の魅力も伝えたい」と話している。