良源の旅立ち、巨大石アートで

出生地の三川町・玉泉寺にお目見え、住民有志が制作

 比叡山延暦寺の中興の祖、良源大師(912〜985年)の生誕地に建つ玉泉寺(三川町、大島慈恵住職)の境内に、大師の出家の場面を描いた石アート作品が完成し、26日、近くのとらひめ認定こども園の園児を招いて開眼式を行った。

 石アートは、虎姫地域づくり協議会が地域の活性化のために11年間続けた「田んぼアート」がメンバーの高齢化を理由に2022年で終了したことを受け、玉泉寺の提案でいつまでも残る作品として仕上げた。

 絵のデザインは大島住職の知人で作家の高橋繁行さんが担当。縦7㍍、横8㍍のコンクリートに下絵を描き、田んぼアートに関わってきた地域住民有志約30人が10日間かけて十数種類の石を並べて作り上げた。

 タイトルは「観音丸  旅立ちの朝」。12歳で出家する大師(幼名・観音丸)が、まだ月の残る早暁に母の月子姫に別れを告げる場面を描いた。我が子の無事を祈って手を合わせる月子姫と、固い決意を胸に母親を見上げる大師の表情が印象的。疫病を払う「角大師」も添えている。

 開眼式では同園の5歳児33人がアート作品の脇に設置された鐘を鳴らすなどして完成を祝い「すごく大きい」「石がきれいに並んでいる」などと喜んでいた。

 石アートの制作を主導した山内健次さん(75)は「田んぼアートが終わったが、玉泉寺のおかげでこうやって作品に残せてうれしい。石アートを通じて、地域の文化や史実を末永く伝承できればありがたいことです」と話していた。

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 大師は三川町に生まれ、12歳で比叡山延暦寺に上り仏門に入った。荒廃した堂塔の復興などに取り組み、比叡山中興の祖と称えられた。また、おみくじの創始者としても知られる。命日が元月三日(1月3日)だったことから、後に「元三大師」と呼ばれるようになり、角の生えた鬼となって疫病を退散させたという伝説にちなんで「角大師」の名も。コロナ禍ではその逸話から角大師を描いた護符が注目を集めた。

掲載日: 2024年11月26日