バイオ大開発の餌で養殖、市場で出荷
長浜バイオ大学の研究室が開発した餌で育てた養殖ビワマスが24日、長浜地方卸売市場で出荷された。酒かすやおから、商品化できない養殖アユなどを混合、醗酵させて餌の栄養価を高めたことで脂乗りは十分。バイオ大は「ビワトロマス」のブランド名で流通させたい考えで、養殖に協力した「びわ鮎センター」の川瀬利弥社長(67)は「『ビワトロマス』として胸を張って出せる」と太鼓判を押している。
「琵琶湖の宝石」とも呼ばれるビワマスはマグロのトロに匹敵する脂が魅力の一つ。ただ、天然モノは漁獲量が安定しない上、脂乗りも季節や個体によって差がある。安定した出荷を目指して県内では10年程前から養殖が本格化しているが、餌代などのコストが課題となり、養殖業から撤退した業者もいる。
長浜バイオ大アニマルバイオサイエンス学科の河内浩行教授の食品分子機能学研究室は2011年ごろから低コスト、高栄養価の餌の開発に取り組んでいる。目標はブランド名「ビワトロマス」に見合う脂乗り。過去にはブラックバスのミンチを混ぜた餌を開発して話題を呼んだが、ブラックバスの安定した調達がネックとなっていた。
今回、びわ鮎センターの養殖池を4区画に分け、研究室が開発した3種類の餌と既存の餌1種類を与えた。研究室の学生が餌を手作りして毎日餌やりを行い、ビワマスの喰い付き、生育状態などを比較、分析してきた。7月には学内で食味試験を行った。
そこで採用したのは食品残渣の酒かすやおからに商品化できないアユ、ビワマスのアラを加えて醗酵させた餌。廃棄されるものを再利用したことで、餌代も従来の半額から3分の1程度に収まったという。
24日朝、バイオ大の学生らが市場に魚を買い付けに来た飲食店経営者らにビワマスの刺身を試食してもらった。日本料理店「塩梅」を経営する中嶋利直さんは「臭みがなく美味しい。身も分厚い。バイオ大の学生が餌を開発したというストーリー性もあり、お客さんに紹介しやすい」と話していた。
河内教授は「大学での食味試験でも反応が良かった。安い餌を開発したことで、養殖業から撤退した業者を呼び戻すことができれば」と期待している。
川瀬社長は「バイオ大は10年以上、餌の研究を続けているが、今回の醗酵させた餌はこれまでの研究の集大成と感じている。脂乗りが良く『ビワトロマス』とPRできることを進言した」と評価し、「我々養殖業者が直面しているのは餌の高騰。コストダウンが図れているのは大きな魅力。課題は餌を手作りする労力がどの程度のコストになるか」と話していた。
バイオ大のビワマスは1週間かけ計300匹を出荷する。